2007年のアメリカ映画「ジェイン・オースティン 秘められた恋」は、『高慢と偏見』で知られる英国の女流作家ジェイン・オースティンに訪れた生涯ただ一度の恋をあつかった文芸映画。
1795年、英国のハンプシャー。
娘を地位と財産のある男に嫁がせることにご執心の両親の期待に反し、許嫁だが男気のないウィスリーにもそっけないオースティン家の次女ジェインは、文才に優れていた。ある日、姉の結婚披露パーティーでみごとな朗読をしたところを、法律家の卵でアイルランド人青年トム・ルフロイになじられてしまいます。
男に交じって野球に興じたりと闊達なジェインに次第にこころ惹かれていくトム。彼は男性経験のないジェインの描く小説は稚拙だと挑発するのです。いっぽう勇敢なトムにジェインもまんざらではないのですが、問題は彼が叔父に生活費の工面を頼っているいまだ無一文の身の上であり、明日にもロンドンに帰るかもしれないこと。
田舎牧師の父と、野良仕事に精を出す母。困窮を極める一方の家庭をかえりみればジェインは愛のない結婚に踏み出すしかないのか。判事である叔父を敵に回せば、自分の将来も、故郷に残してきた大家族の行く末も断たれたも同然。なのにふたりは勢い余って、ついに駆け落ちに走ってしまう…。
にしてもこの映画、舞踏会のダンスだとか森の中でのやりとりなど、「高慢と偏見」を観ているとそれとなく既視感を覚えるシーンが多々ありますよね。ジェインは生涯独身を貫くので、この恋は悲しい結末に終わることが予想されます。
ただ、三角関係の一端であったウィスリーが実は理解のある男性だったこと明かされたうえ、作家として成功した後半生が描かれるなど意表を衝く、幸福感で包まれるラストです。
階級社会の逼塞感があるとはいえ、恋にも嗜みがあった時代。
露骨なジョークがなくとも知的なウィットでその気にさせる文芸ラブストーリーならではの妙があります。回りくどい台詞回しよりも、派手な展開と視覚効果を望む方にはあまりお勧めできませんが。
紳士の時代と思われたこの国でも素手で殴り合う拳闘がこの時代からすでにあったなど、当時の風習がよくわかります。
主演は「プラダを着た悪魔」のアン・ハサウェイと、ジェームズ・マカヴォイ。
監督はジュリアン・ジャロルド。
(2011年5月31日)
ジェイン・オースティン 秘められた恋 - goo 映画
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1795年、英国のハンプシャー。
娘を地位と財産のある男に嫁がせることにご執心の両親の期待に反し、許嫁だが男気のないウィスリーにもそっけないオースティン家の次女ジェインは、文才に優れていた。ある日、姉の結婚披露パーティーでみごとな朗読をしたところを、法律家の卵でアイルランド人青年トム・ルフロイになじられてしまいます。
男に交じって野球に興じたりと闊達なジェインに次第にこころ惹かれていくトム。彼は男性経験のないジェインの描く小説は稚拙だと挑発するのです。いっぽう勇敢なトムにジェインもまんざらではないのですが、問題は彼が叔父に生活費の工面を頼っているいまだ無一文の身の上であり、明日にもロンドンに帰るかもしれないこと。
田舎牧師の父と、野良仕事に精を出す母。困窮を極める一方の家庭をかえりみればジェインは愛のない結婚に踏み出すしかないのか。判事である叔父を敵に回せば、自分の将来も、故郷に残してきた大家族の行く末も断たれたも同然。なのにふたりは勢い余って、ついに駆け落ちに走ってしまう…。
にしてもこの映画、舞踏会のダンスだとか森の中でのやりとりなど、「高慢と偏見」を観ているとそれとなく既視感を覚えるシーンが多々ありますよね。ジェインは生涯独身を貫くので、この恋は悲しい結末に終わることが予想されます。
ただ、三角関係の一端であったウィスリーが実は理解のある男性だったこと明かされたうえ、作家として成功した後半生が描かれるなど意表を衝く、幸福感で包まれるラストです。
階級社会の逼塞感があるとはいえ、恋にも嗜みがあった時代。
露骨なジョークがなくとも知的なウィットでその気にさせる文芸ラブストーリーならではの妙があります。回りくどい台詞回しよりも、派手な展開と視覚効果を望む方にはあまりお勧めできませんが。
紳士の時代と思われたこの国でも素手で殴り合う拳闘がこの時代からすでにあったなど、当時の風習がよくわかります。
主演は「プラダを着た悪魔」のアン・ハサウェイと、ジェームズ・マカヴォイ。
監督はジュリアン・ジャロルド。
(2011年5月31日)
ジェイン・オースティン 秘められた恋 - goo 映画
私もこの作品が大好きで、最初から最後までティッシュで眼を押さえ鼻をかみっぱなしでした(汚くてすみません)。
趣味でヒストリカルロマンス本(特にビクトリア朝)をよく読むのですが、当時の紳士はボクシングジムに通ったり、貧弱な体型を補正するため肩パッド入りの上着を着ているという描写がよく出てきます。
ヴィクトリア朝の十九世紀というのを、ターナーやラファエル前派の絵画、もしくはウィリアム・モリスの著作とか、ウェルズのSFとか、ぐらいでしか知ったことがないので、あまり生々しい風俗生態を知らなかったのですが、殿方にそんな苦労があったとは(笑)。当時もいまも、男女ともに外見を良く見せようという生物学的本能は変わらなかったわけですね、ふーむ(感心)。
オースティンの同時代を意識しなかったのですが、ヴィクトリア朝よりも一世紀前、フランス革命などと重なるのですね。現在のように情報が発達してはいなかったのか、世界史に残る大きな出来事よりも、田舎での結婚の方が死活問題というのはおもしろいですね。オースティンの「高慢と偏見」は原作ではなく、映画で観たのですが、時代と国問わず、パートナー選び=生存戦略は共通のテーマなんですね。
ラブコメ三枚目女優だと思っていたアン・ハサウェイの美しさを、いまさながら再確認させられた、なかなか良作の映画でした。