ふぶきの部屋

皇室問題を中心に、政治から宝塚まで。
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1996年 雪組エリザベート(一路真輝)

2016-09-19 07:00:00 | 宝塚コラム

 まずは初演の雪組から。

 前評判

誰もが知ってる事ですが、小池先生がウイーンミュージカルを見て感動し

それを宝塚版にするべく、ウイーン側のスタッフと色々交渉し、上演が可能と

なりました。

女性が主役のミュージカルを宝塚版にする場合、男役が主役になる事、

それにあたって解釈も変わる事、無論、演出も。

その交渉は大変だったと聞いています。

ブロードウエイミュージカルと比較すればわかりますが、

改変を許さないブロードウエイミュージカルは、上演できる作品は限られ、

ゆえにビデオ化も時間がかかるわけで。

なのに「エリザベート」はオリジナル曲「愛と死のロンド」が増え、演出も

宝塚版に替え、さらにビデオもすんなり発売・・・と、それもこれも小池修一郎

あってのこと。

とはいえ、個人的にはウイーン側の利害関係もあったと感じています。

あの当時、まだまだウイーンミュージカルはメジャーではなかったし、

アメリカで上演されない事からみても、ワールドワイドに見て、大衆性がないと

思われていたんじゃないでしょうか?

それを日本がアジアに先駆けて上演する事で、ヨーロッパ以外の国々にも

売れると踏んだのではないかと思います。

結果は大成功

ミヒャエル・クンツェもシルベスター・リーバイも今や世界的に有名人。

 

でも、一路ファンは「何で最後が死神なのよ」とお怒りだったとか。

そうか・・・そういう見方もあるねと私なども思いましたけどね

普通、最後は天使だよねーー

 稽古場で

一路さんがあらゆる所でお話になってますが、オペレッタ形式という

宝塚では経験した事のないミュージカルの上演に雪組は緊張を強いられ

精神的なプレッシャーがすごかったと言います。

一路さんが喉を壊した時の為に、組子全員で役替わりをやってみせたとか。

このミュージカルは「歌」が勝負。

誰一人歌えないというのは困るんですよね

後に、一路真輝さんがコンサートでおっしゃってましたが、

退団後、ウイーンでのガラコンサートに招かれた事があるそうです。

その時は白城あやかと一緒で、オーストリアだけじゃなく、各国の

キャストが出て来たそうですが、一路さんがあのメイクで登場したら

みんな驚いて「マッキー!」って言われたとか、白城さんのドレスが

そのキャストよりも豪華だった事などがエピソードとしてあります。

 DVDキャスト

トート・・・一路真輝

エリザベート・・・花總まり

フランツ・ヨーゼフ・・・高嶺ふぶき

ルキーニ・・・轟悠

ルドルフ・・・香寿たつき

小ルドルフ・・・安蘭けい

ゾフィ・・・朱未智留

エルマー・・・和央ようか

です。

この作品でもっとも得をしたのは花總まり轟悠ではないかと思います。

この時、研5くらいだった花總まり。

それまでは星奈優里とダブルトップ扱いでしたし、下級生だったから

添え物っぽかったですよね。

それが、いきなりタイトルロールで、しかも最もゴージャスなドレスを着て

圧倒的な美しさで観客を魅了。

いわゆる「原作から抜け出たような」エリザベート像。

エリザベートの原型とでもいいましょうか。

関心が自分にしか向いていなくて、子供っぽくて冷たくて意固地で傷つきやすい。

それはまさに花總まりそのものだったと思います。

 

轟悠は「ただ一人本物の男性がそこにいる」と言われた程のルキーニっぽさ。

幕開き「俺はもうとっくに死んだんだ。さっさと天国へでも地獄へでもやってくれ」の

セリフが場内に響きわたると、一気に空気が変わるんですね。

DVDでもそれはわかります。

上目遣いにぎらっとするルキーニがストーリーテラーを務める事により、場が引き締まり

名作になったと言えるでしょう。

轟は決して歌が上手なわけではありません

ただ声の質がしっかり男役であるという所。演技力もあるとは言えないのですが

ルキーニというキャラクターがかなり似合っていたという事はあるでしょう。

 

一路真輝のトートは白い肌にデーモン閣下みたいな頬、紫のシャドウ。

銀のかつらの分け目の所にマイクを仕込んで、観客からはマイクが見えない様に

なっていました。

小柄な為、上半身にさらっと飾りを入れ、丈は短めジャケット。

手を大きくみせる為の手袋をしていました。

彼女は全シーン、無表情を貫く事で「死」を表現。

一路さんで見逃せないのは「最後のダンス」シーン。

♪ あなたは彼を選んだ ♪ の「え」の微妙ななまめかしい発音。

そして♪ 最後のダンスは俺のもの お前は俺と踊る定め ♪のあとの

ものすごいスキャットでしょうか。

♪ エリザベート 泣かないで ♪のシーンは、拒否されると、ちょっと怒ったような

表情になります。

1幕最後は、銀橋ではなく、鏡の中から出てきます。

2幕。小ルドルフに♪ ママには聞こえない ♪と歌うシーンは階段に登って

背丈を高く見せる。

フィナーレはなぜか天使の羽根でした

 

私が一番好きなのはエリザベートが

♪ フランツ助けてあなたが頼りよ お母様がいじめるの ここは牢獄よ ♪と

泣き付くシーンで、高嶺フランツのいかにも皇族らしい対応がツボなんです。

様々なフランツがいましたが

 僕は君の味方だ でも母の意見は君の為になるはずだ 

という歌の後に「わかったかい?」とおでこにキスをする。

このシーンを納得させる人はいません。

ここは、優しすぎてはいけないシーンなんです。

ここで観客が全員、エリザベートに同情しないといけない。

そういう意味では高嶺フランツは理想的でした。

また、1幕最後、「皇后はどこに」というセリフの高貴さといったら。

無論、どーんと真ん中から出てくるエリザベートの美しさは神

おまけに衣装がすごい。

この作品の特徴は、花總まりの衣装がとにかく豪華って事でしょうか。

朝、ゾフィに起こされた時の寝間着まで凝ってる。

 

 2幕目。

漸くルドルフ登場ですが、香寿たつきのルドルフがもっとも実年齢に

近いのではないかと言われています。

また歌唱力も一路と拮抗していましたから、コーラスのすばらしさは見もの。

死ぬシーンの踊りはちょい短め。

小ルドルフの安蘭けいは全作品の中でもっとも可愛らしく歌唱力がありました。

ラスト、ルキーニにナイフを渡す所で一路はナイフを胸元からとって渡しました。

昇天シーンもあくまで無表情。

エリザベートを征服したぞーーって感じです

 

石井徹也氏によれば、1幕の花總まりは完璧。少女時代も可愛いし違和感なし。

でも2幕目になると大人っぽさが出ない。

ルドルフを拒否する所と、死んで悲しむシーンは子供がおもちゃを取られたときの

ようだと評しています。

だから「夜のボート」ではベールを深くかぶって素顔が見えない様になっています。

また、一路真輝のトートに関しては、「人間界にべったり」している。

まるで影のようなトートという事ですね

私は最初、そう思わなかったんですが何度も見ていくうちにわかりました。

一路真輝のトートはわりと人間っぽいんじゃないかなと。

そしてフランツ・ヨーゼフは公私の区別がきちんとできていて

ルキーニは遊び人で皮肉屋

ルドルフは国の行く末を憂う青年

というようなイメージでしょうか。

 脇で光る存在

星奈優里・・・・全作通して美しくてダンスが上手で妖艶なマデレーネ

古代みず希・・・若くてかっこいいマックス公爵

貴城けい・・・♪ 皇太子の名はルドルフ ♪明るい笑顔が可愛い

彩吹真央・・・めちゃくちゃ濃いメイクで両足を縦に広げて・・・すごい。

 フィナーレ

雪組版のフィナーレは個人的にちょっと不満があります。

まず、ロケットがばらばらな印象。

それから一路真輝のさよなら公演を意識しすぎて、メイクはトートで恰好が普通と

いう一路のアンバランス。

デュエットダンスは花總と星奈に囲まれて終わるみたいな?

羽根も死神だった人が真っ白な天使の羽根ってどーよ・・・・と思いました。

男役の群舞の衣装は素晴らしく、この時の高嶺ふぶきはかっこよかった。

ぜひDVDでご確認を。

 

 東京でみた時

3階席の一番後ろで見た限りですら、花總まりの美しさは別格でした。

香寿たつきが組替えになったので、和央ようかがルドルフに昇格。

これがまた何ともBLチックなルドルフで、トートにキスされる所なんて

ぞくぞくしてしまいました。

和央ようかって弱みを見せる役の方が似合うんだなあと。

私も守ってあげたくなりましたし。

見終わった後にぼーっとしてしまい、私はエリザベートになりきって

いました。

それまで、面と向かって「どちらかを選んで。お母様か私か」という女性はなかなか

いなかったんじゃありませんか?

(思っていてもそれは口にしたらおしまいみたいな)

結婚してまだ数年、姑との折り合いが悪かったけど誰も助けてくれなかった。

その状況とエリザベートの状況が見事にリンクして、すっかりフランツ・ヨーゼフが

悪者に(笑)

高嶺フランツが見事だったので、余計に憎らしさが募りましたね。

いっその事、トートに連れ去られた方が楽かもって何度も考えた記憶があります。

「死は逃げ場ではない」と言われてもね

 

ブルーレイDVDは映像が綺麗です。

特に「赤」が濃く出るようで、エリザベートが披露宴で着ていた

赤いドレスの色が美しく映えるんじゃないかな。

また、1幕最後の銀糸が入ったドレスの豪華さをより一層感じられるのでは

ないでしょうか。

 

 

 

コメント (7)
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