シリーズ「開発の初めから順番に書いていってみる」の続きです。
前回、プロジェクトを立ち上げるところを書きました。今回は、その一番初めの立ち上げの
立ち上げ(スコープ)
プロジェクト憲章(実際には契約書など)をつくって
の、プロジェクト憲章っていうか、契約書についてです。
*なお、本当はプロジェクト憲章は、契約書のことでは「ありません」が、それを説明するには契約書の話をしないといけないので、契約書の話を先にします。この話の後のほうで、話をひっくり返します。
*ただしPMBOKの2000年版には、プロジェクト憲章は、「契約書など」っていう話になってます(ごめん、いま手元に本がないので、何ページかは指摘できない)
■契約書について
契約書には、秘密保持契約(NDA)と、ふつうの契約書があります。
秘密保持契約は、まさに、秘密を保持するために結ぶものなので、これよりもずーとまえの、RFPをもらう時点で、結ぶもんなら、結んでいるはずです。
機密保持契約の例としては。。まあ、月間パテントの2006年3月号、
秘密保持契約書サンプル版の紹介
http://www.jpaa.or.jp/publication/patent/patent-lib/200603/index.html
でもみてくださいませ。。
ここで言っているのは、秘密保持契約の話では当然なく、普通の契約書のことです。
(ちなみに、アメリカでは偉い人がすぐにサインしてくれるという契約書の話は、NDAの話のことが多いです)。
で、普通の契約書なのですが、そもそも、契約というのは、民法によって、基本的な契約の雛形があり、この雛形を変形してやる契約(典型契約といいます。請負や委任、雇用など)と、そこに定義されてない新しい契約(非典型契約といいます。リース契約)がありますが、普通、開発の場合は、請負だと思うので、請負契約で考えます。
■契約書に書く内容
っていうことで、開発のとき、請負契約をやる場合に結ぶ契約書の話をするっていうことで、話の中身が決まったところで、じゃあ、その契約書をどのようにかくか?ということですが、これは、古くは、1993年の「ソフトウェアの適正な取引を目指して」っていう提案(本にもなってる)の内容の1つ*としてかかれるほど、昔から話題になっていて、その後、何回か、いろんなところで話し合われています。
*ソフトウェアの適正な取引を目指して」は、大きく2部構成になっていて、1つはソフトの取引というか契約書の話。もうひとつが情報処理試験の話。1種、2種、特種、オンラインから、一挙にいろんなものが増えたけど、あの背景にあるのが、この提案。その後情報処理試験は、さらにITSSの出現で変わっている。
で、むかーしむかしに、「ソフトウェア開発モデル契約解説書」というのが出たんだけど、これは、絶版になってるみたいなので、いま、簡単にネットで手に入るのは。。。これかな?
JISAソフトウェア開発委託契約書(平成14年5月版)
http://www.jisa.or.jp/legal/contract_model2002.html
ところがこれ。。(以下斜体は上記サイトより引用)
本モデル契約書及びその関連文書のセミナーの資料としての使用について
本モデル契約書及びその関連文書(「報告書概要」、「提言」等、当該モデル契約書の作成に関し、当協会により作成されたもの。)を当協会の許可なくセミナー(説明会)の資料として配布及び使用することは禁止いたします。
あちゃ、じゃあ、説明できないジャン。
セミナーとブログは違うか。。おなじか。。(^^;)
よくわかんないけど、説明しないほうが安全そうだよね。。
ま、みんなも上記のサイトに行けば、書き方分かるし。。
終了・・・
っていうと、話が先に進まないので、ちょっと別な角度から説明します。
■情報処理試験に出てきた契約書の中身
契約書の中身に関しては、情報処理試験平成14年度のPMの午後1、問2の例文中に
こんなことを書くというのがあり(1個だけ抜けていて、それを答えさせる問題)
そこに書かれているのが、これ
(1)プロジェクト概要と要件
(2)作業指示の方法と使用する言語
(3)納入物、納入場所、納入条件、検収条件
(4)Y社の実施すべきアクティビティとタスクとマイルストーン
(5)プロジェクトの実施要領、月報などによる報告要領
(6)準拠すべき基準や手法、使用するツール、開発方法
(7)希望する契約形態
(8)知的所有権、著作権
で、(8)を答えさせる問題になっている。
■一般的な契約書の構成
ま、これを、本当に書くかどうかは、上記のJISAの見本と照らし合わせてもらって、個人的に考えてもらうこととして、問題は、契約書は大きく3つのパートに分かれるということです。
1つは、お金が明示してある部分、ここに契約の当事者が入っているはずである
2つめは、契約の内容で、大体、雛形と似たり寄ったりのことが書いてある部分
3つめは、発注仕様書または、プロジェクトの具体的内容について書かれている契約書の別紙(ふつう2の紙に対して、別紙で飛ばす)
となっている。JISAの内容については説明できないけど、対応関係は多分分かると思うので、まあ、興味がある人は対応させてみてください。
なお、これは請負の場合で、準委任契約の場合は3がない場合もある(プロジェクトの内容が良くわかんないので委任にしてる場合もあるので)
■それぞれのパートの特徴
1のパート、ここに金額が書かれる。金額が書かれているのところに収入印紙を貼ることになっているので、ここに収入印紙が貼られ、割印される。
金額とかが違うだけで、形式は大体どこでも一緒。
2のパートはほとんど雛形の内容であり、会社などによって決まっているし、それこそJISAの雛形を使ってもいいかもしれない(注意:雛形とはいえ、JISAのもそうだが、空欄の部分があるので、そこは埋める)。
3のパートは、開発ごとに違うし、そもそも、開発をある程度しないとかけないことも多い。発注側でなく、請負側で発注仕様を書き、発注側に承認してもらうケースもあるし、開発が進んだ後、日付をさかのぼって書く場合もある(なんて、書いちゃっていいのかなあ ^^;)。
■契約書とプロジェクト憲章との関係
っていうことで、PMBOKでは、プロジェクト憲章として契約書など。。という書き方になっていたと思うけど、プロジェクト憲章の、「プロジェクトをプロジェクトたらしめている、公式な書類」ではあるのだけど、その中身をみても、とくにプロジェクト発足時には、1と2のパートしかないわけで、それはどのプロジェクトでも同じなわけで(^^;)。。
一方プロジェクト憲章というのは、成果物+開発背景(ニーズ)になる。
ところが、開発背景(ニーズ)は、1、2のパートにかかれることはない。3のパートにも普通はかかれない(成果物は、納品物として、どこかに書かれる)。ニーズが書かれてしまうと、契約履行の判断基準があいまいになるからだ。
なので、プロジェクト憲章と契約書は、本来別のものなんだけど、PMBOKの本の中では、そう書かれている。(2000年版のをみているから、そう書いてあるのかなあ。。今のは、改正されてるかも?)
■では、プロジェクト憲章とはなにか
じゃあ、プロジェクト憲章とは、本当は何をさすのか?っていうと、こんなかんじ
一語一会 プロジェクト憲章はありますか?
http://allabout.co.jp/career/swengineer/closeup/CU20030912W/index.htm
プロジェクト憲章とは
http://allabout.co.jp/career/swengineer/closeup/CU20040928E/index.htm
例はこんなかんじ
浦河共同プロジェクト憲章
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/resource/daisy/urakawa.html
でも、これを書いても、実は、プロジェクト憲章としては、1つの問題がある。
この書類は、「ユーザーに対し」、公式に認められているわけではない。
そこで、このプロジェクト憲章と契約書(とくに3のパートの部分とプロジェクト憲章に書かれている成果物)との間に矛盾がある場合、契約書が優先されてしまうので、権威があるのは、契約書ということになる。
ってかんがえると、この書類+契約書っていうことになるのかなあ。。
まあ、そんなこんなで、契約書の話はして、まあ、作ったということにしましょう。
(1、2のパートについて。3は、もっとさき、あるいは要件定義は準委託契約にして、3を作らないかもね)。
で、プロジェクト憲章もOKってことにして(いいんかこれで ^^;)
ってことで、次回のこのシリーズはスコープとWBS。