博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『殴り合う貴族たち』

2010年12月12日 | 日本史書籍
繁田信一『殴り合う貴族たち 平安朝裏源氏物語』(柏書房、2005年)

著者の名前がどこかで見たことあるなと思ったら、以前読んだ『天皇たちの孤独』を書いた人でした。

今回のテーマは平安貴族と暴力。平安貴族と言えば雅・華やか・文化的といったイメージで語られることが多く、暴力とは縁遠い存在と思われがちです。しかし本書では、宮中で一対一の取っ組み合いをする貴族、気に入らない者を一方的にリンチしたり、知り合いの強姦に手を貸したりする貴公子たち、自分にナメた態度を取る受領どもを暴力で思い知らせる皇族、借金を返さない相手に実力行使をする大貴族、はたまた宮中の女性たちも殴り合ったり、夫を奪った女を襲撃したりといった具合に豊富な実例を挙げ、平安貴族たちがかなりの程度暴力に親しんでいた、言い換えればDQNであったことを実証していきます。

こういう現実で知ってしまうと、平安貴族をもう「花よ蝶よ」のイメージでは見られなくなり、かわりに「殴り込み」とか「しのぎ」「鉄砲玉」といったフレーズが浮かんできます(^^;) こういうDQNな王朝貴族の末裔が地方に土着すると、DQNな武士になっていくのかと妙に納得した次第…… (中世の武士がいかにDQNな存在であったのかは、さしあたってこのブログでも紹介した本郷和人『武士から王へ』などを参照してください。)

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (たぬきママ)
2010-12-12 16:59:54
珍しく私の既読の書物でございます。確か雑誌サライの紹介コーナーで眼にして読みました。

―――こいつら(この表現でよいぐらい)の無法振りに、唖然呆然とした記憶があります。
道長の子息とか、もうやりたい放題で。
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Unknown (さとうしん)
2010-12-12 19:28:03
>たぬきママさま
読んだことないのですが、『サライ』ってこういう本を紹介するような雑誌なんですか……

>道長の子息とか、もうやりたい放題で。

確かに能信なんかの所業にははドン引きです…… でも以外と道長の長男頼通が常識人で、笑ってしまいました(^^;)
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Unknown (たぬきママ)
2010-12-13 17:35:06
サライは以前母が入院した時、ヌード写真とゴシップ記事の載ってない雑誌がよいと言うので買い出しました(彼女は活字嫌いです)。
私よりは少々年配のお金に余裕のある方向けの雑誌ですね。でも、多方面に渡る特集があるので、興味ある時だけ、購入してます。
ちなみに最新号の「神社大全」のサライブックレビューでは、『希望のつくり方』玄田有史 岩波新書、『希望難民ご一行様』古市憲寿 光文社新書、『京都の御所と離宮1 京都御所』三好和義 朝日新聞出版 等、各種紹介してあります。

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Unknown (さとうしん)
2010-12-13 22:18:29
>たぬきママさま
何となく年寄り向けの健康雑誌みたいなイメージを持ってましたけど、思ったより面白そうな雑誌ですねえ。
返信する

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