この癖はよくわかってる。
言いたくないことを言う覚悟をきめる時の癖だ。
「お前、自分の事になると、鈍すぎるんだよ。慎吾はお前に惚れてるんだよ」
「・・・・・・・・」
私の口からまったく、言葉がでてこない。
奴が私に惚れてる?
まあ、言うに事欠いて、よくも・・・・・ん?
編集長、やけに真顔すぎた・・・。
「それな、慎吾のプロポーズだったんだよ。お前、見事に肩すかしをくらわせて、鼻もひっかけない、眼中にもない、って、態度とったんだろ?
それでか・・。それで、慎吾は休暇とったんだな・・」
え?は?いやいや、休暇は別件だけど・・。
しかし・・。
プロポーズ?
笑いがこみ上げてくるのをこらえたのは、編集長をこけにしてしまうと思ったからだけど、
男同士ってのは、そういう風に思うのか、
はたまた、すでに外見である、お互いの性別をあてはめてしまって、ありがちな男と女の顛末という推論をしたがるものなのか、
結局、判らずじまいなんだなと思ったところに、パスタがやってきた。
「俺もな、慎吾の好みがお前なのかと、どうも、腑におちないところがあってな。俺がそう思うくらいだから、お前自身、もっと、ぴんとこないんだろうけどさ、ちっと、慎吾のことをまじめに考えてみてやらないか?」
目が点になる以前に、ここでも、慎吾のいうところが、プロポーズだと思えない理由がならびたてられてしまった。
「確かに・・私、女として、魅力ないの、わかっていますし、慎吾にも、何度かはっきり、言われてますから、まあ、その、どう考えても、プロポーズだとは、思えないんですよね」
明太子パスタをフォークにからめはじめながら、編集長はぽつりとつぶやいた。
「慎吾のこと、男と思ってないからだろ?」
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