第四部 Generalist in 古都編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、Harvard、Michiganを経て現在古都で奮闘中

Academic Hospitalistは先駆を切らねばならない-日本の大学でGeneralがこれから爆発するために-

2019-12-24 17:27:05 | Research

みなさま こんにちわ。

インフル発熱や子供が心配なお母さん、アルコールの人などなど楽しい寝れない救急外来当直明けからの〜内科初診外来+僕の独特な不定愁訴再診外来をへて48時間勤務がようやく終わり大学に帰ってきました。

たまにはブログを書かねばと頑張ってます。(今日はもう本当に体が起きれなくて、なんとかうーっと言いながらおきたのが9時3分、寝ぼけまなこと寝癖で外来開始が9時6分と患者さんを少し待たせましたがフルパワーで楽しく乗り切りました。複数の専門科で原因不明の腹痛とされていたACNESの患者さんが一発で笑顔になるのを見るとこういう診断困難例・不定愁訴外来はやはり大好きです。

さて、僕がEditor in Chiefをさせていただいている、間違いなく日本で一番エッジ切っている(利益を無視した)総合医のための雑誌ジェネラリストコンソーシアム(マニアな雑誌で結構売れてます)のOpinionに掲載いただいた内容を転載します。

特に病院で働く総合診療医が他科の医師と同じ貨幣価値・シェア可能な概念を持ちながら大学で臨床と教育と研究分野で一緒に手を取って活躍し、学問としてこのホスピタルメディシンを発展させていくために、自分の大学教員としての経験からどうしても必要だ(もう、好きとか嫌いとか、合う合わないではないと思われます)と思うことを掲載しておきました。

ちなみにこれは、”The New Era of Academic Hospitalist in Japan”という題名で昨日とある英文誌にアクセプトされましたので日本語での概ね同様のメッセージの論文になります。

よく大学にいると勘違いされますが、ホスピタリストの研究は、実験である必要はありません(むしろ親和性が低いです、実験実験行っているのは日本だけかもしれません、ちょっと時代に取り残されてしまいます)。2013年の横断研究です、Pubmed検索で該当したホスピタリストが発表した研究論文のテーマの分類を見てください。ただ日本では救急や外来も見たりしますので少しだけ異なりますが、大学で「先生、得意でしょう?これやってよ」と、お願いされるものが全てはいってます。

*Research and Publication Trends in Hospital Medicine. Journal of Hospital Medicine Vol 9 | No 3 | March 2014

これを見ると、

病院総合診療医の研究とは医療安全、医療の質の改善、臨床研究、臨床教育研究、etcの分野で多くが占められているのがわかります。やはり僕の周囲でものすごく頑張っていてリスペクトしている先生方の研究もこちらにシフトしていたように感じます。だから2011年にジョンホプキンスに行った時にびっくりした診断エラーが流行るべくして流行りましたし、今後はQuality improvementが必ずくると思います。もちろんEvidence based education (EBE)は変わらず現場での研究テーマになることを考えると僕らのテーマは本当に多様多彩で日々勉強が楽しいです。

これらのことは横断的に診療を行い、病院全体を俯瞰できる資質を持ったホスピタリストこそが得意とするフィールドです。日本の大学病院で病院総合診療医が活躍するためには、まさにここの領域で臨床・教育・研究の3本柱で活躍できるアカデミックホスピタリストをガスガスと育成していくことである。といったように、3年前に愛すべき出雲にフラッときて確信しました。

 

-------------------下記が本文です--------------------

我が国においては、病院で活躍する病院総合診療医(ホスピタリスト)の定義や位置付けは非常に曖昧であり、未だに新専門医制度の上で大きく揺らいでいる。しかしこれは日本においてのみ特別な状況ではなく、今や米国最大の医師の集団との代表格にまで成長したホスピタリストの歴史に至っても同様の薔薇の道であった1,2

2016年に20年間のホスピタリストの奇跡-0人が5万人へ-という題名の論文がNEJMを飾った。これは、同年の米国の循環器内科専門医が2万2千人であることを考慮しても、米国ではすでにホスピタリストは一つの専門職として認められ活躍していることが伺える。また米国の病院ランキングに掲載されるような高次機能病院のうち約75%の病院が横断的に入院患者を診療するホスピタリストを採用しシステムとして導入しているとされる。何故、米国ではホスピタリストが躍進することができたか?一つのKeywordとして筆者はAcademic hospitalistの活躍をあげる。

ホスピタリストの活躍する場所はこれまで病院内の診療科のピットフォールを埋めるべく、また俯瞰的な病院を観察できる特性から多岐にわたってきた。具体的には一般病棟の様なコモンディジィーズの入院診療をメインとして、ホスピタリストはQuality improvement、や医療安全、卒前卒後の臨床教育、病院経営、感染対策までも、病院という組織を横断的に、視野や視座や視点を調整しながら貢献してきたことが大きい。しかし、ホスピタリストの評価を決定づけることができたのは、Quality improvement、医療安全、そして医療費の抑制という医療の全体像の問題について、数的評価を疫学統計学的に検証し利点が得られたからに他ならないのである。

これは、筆者の考えでは、全米のホスピタリストの約15%以上を占めているとも言われる大学病院などの教育・研究機関で活躍するAcademic hospitalistの活躍が極めて大きい4。ホスピタリストのチームが病棟で研修医や医学生を指導する方が、非ホスピタリストが指導した場合に比べて教育効果が高いことや、またホスピタリストが病棟診療を行っている方が医療安全的にも安全であり、また何より病院の経営にとって効率的であることが極めて多くの文献により示唆されればされるほど、その経営面・安全面・教育面で優れるシステムに見習う病院が増え、極めて早いスピードで浸透していったという1-4

これらの研究成果を提示し続けてきたのが、教育・研究機関で活躍するAcademic hospitalistであった。我が国では、大学での研究と一言発すれば、すぐに実験基礎医学と結びつける風潮があるが、ホスピタリストがその特性を生かして躍進させて研究分野は前述した領域なのである。具体例として、図1に2014年に発表された論文”Research and Publication Trends in Hospital Medicine”からホスピタリストが発表した原著科学論文(PubMed内)のグラフを示す5

2013年までのデータではアカデミックホスピタリストによる原著論文数は増加しており、その研究対象はこれまでの我が国が好むところの実験医学ではなく臨床研究、ヘルスサービス研究、医療の質と改善、医学教育の4つのテーマが特に着目されていることがわかる。ホスピタリストの研究とは、実験医学である必要はなく、また狭義の臨床研究である必要すらないと言える。まさに、病院の中の全ての事象が研究対象としてなりうることはホスピタリストの優位性の一つなのである。また我が国においては医師主導でこれらの研究テーマが国際誌で発表されておらずこれからの日本の先駆を切る良い研究テーマとなっていくだろう。

野戦病院で働いていた自分が、大学病院で勤務するようになって漸く理解したことがある。我が国において、ホスピタリストという比較的新しい医師の働き方が他分野の医師からの定評を得るためには、ジェネラリストが持つ優れた特性を決して見失わずに、他分野の医師と“同じ言語”で、そして“同じ通貨価値”で議論ができる人材、いわゆる臨床、教育、研究の柱で貢献できるAcademic hospitalistを育成することが必須であるということである。

引用

1) Robert M. Wachter and Lee Goldman. Zero to 50,000 — The 20th Anniversary of the Hospitalist. N Engl J Med 2016; 375:1009-1011.

2) Wachter RM, Katz P, Showstack J, Bindman AB, Goldman L. Reorganizing an academic medical service: impact on cost, quality, patient satisfaction, and education. JAMA 1998;279:1560-1565.

3) Auerbach AD, Wachter RM, Katz P, Showstack J, Baron RB, Goldman L. Implementation of a voluntary hospitalist service at a community teaching hospital: improved clinical efficiency and patient outcomes. Ann Intern Med 2002;137:859-865.

4) Luci K. Leykum, et al. Tried and True: A Survey of Successfully Promoted Academic

Hospitalists. Journal of Hospital Medicine Vol 6 | No 7 | September 2011

5) An N. Dang Do, et al. Research and Publication Trends in Hospital Medicine. Journal of Hospital Medicine Vol 9 | No 3 | March 2014