第四部 Generalist in ミシガン大学編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、Harvard MHQSを経て 現在ミシガンで奮闘中

Diagnostic error in medicine 12th, Washington D.C.

2019-11-14 05:05:54 | 診断エラー学

みなさま、こんにちわ。

 

早くも、筆頭発表3演題、Supervise1演題が終わり帰ります。

僕は極力自分のリサーチ結果などを論文にするために国際学会に発表して、国内の学会では発表をしません。学会に出て勉強という意味では、PubMed、Google Scholarの方がよっぽど短時間で多くの情報を手に入れることができると考えていたので、あまり得意ではないのですね。。

 

でも、学会に参加するということで、最近考え方が変わりました。。

一つは、同じような研究をしている人たちとの議論できること。独りよがりのアイデアをさらにブラッシュアップさせるためには非常に効率が良いと感じます。

 

二つ目は、Net Working作りですね。何より、国内、国外で同じようなテーマで頑張っている人が出会い、国際共同研究などに持ち込むなど、人との顔の見える出会いは最も大事な要素のように感じます。

 

三つ目は、その土地を知ること。実はワシントンDCは3度目にも関わらず、国会議事堂や有名な博物館なども一度も行ったことがなく(それはかなり問題だと思います)。もしかしたら人生で最後かもしれないと考えるようになりましたの、その土地の文化や歴史や、食事などに集中しようという風に考えるようになりました。

 

ということで、国際学会DEM13thへ向けて新しいアイデアを実施できないか検討中です。

そして今回の内容をすぐに英文誌に投稿したいと思います。

 

 

 

なんとあの月へ行ったアームストロング船長のホンモノのスーツ。

アポロ11の博物館のビデオに感動しました。

 

 

 

 

 


オレゴンOHSU特派員かおりさんレポ Vol.3~医学生地域医療・家庭医療海外研修~

2019-11-07 18:54:42 | オレゴンOHSU特派員かおりさんレポ

皆さんこんにちは。オレゴンで地域医療・家庭医療研修中の島根大学5年河野香織です。Day3の今回もOutpatient clinicについてお伝えしますが、Day2とは違う診療所でのレポートです。お読み頂ければ嬉しいです。

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Day3はRichmond という、SE (South East)に位置するエリアで2箇所のクリニックを訪れました。1箇所目はRichmond clinicというところです。この診療所では、医療保険の有無や収入、言語やその他患者の持つ様々な背景によらず、SEエリアの住人なら誰でも診療を受けることができます。また、所得や家族サイズに応じて医療費の少額割引も行っています。さらには、クリニックの近くには誰もが採って帰ることのできる野菜畑もあります。Richmond clinicでもCHHと同じように、behavioral scientistやpharmacist, psychologistなど様々な職種の人が働いており、出会った患者のうち、mental problemを抱える患者に対しては診察後すぐにpsychologistによるカウンセリングが行われていました。


Richmond clinicでは、CHHではあまり出会わなかった低所得層の患者に多く出会いました。幼少期に親からtraumatic abuseを受け、定職に就けず薬物漬けの日々を過ごしていたり、昼夜逆転の低収入の仕事で不摂生が止められなかったり、そうした色んな人達の瞳の奥からは、言葉では表せないような暗く、曇ったようなものを感じました。疾患のみに焦点を合わせるとbiological approachのみで治療しようとしてしまうかもしれません。ですが、恐らくどんな人にも、biologicalに加えsocial and psychological approachも必要で、”病気を診ずして病人を診よ”という言葉の意味が、少し分かったような気がしました。

2箇所目はRichmond clinicから3ブロックほど離れたところにあるWalk-in Clinicです。Walk-inという名前だけあって、予約せずに受診できる外来を専門としていますが、健診などのroutine careも行っています。ここでは、3種類の保険加入者を対象としています。Medicaid、Medicare、そしてChildren’s Health Insurance Program (CHIP)です。CHIPは、Medicareの資格を得るには収入が多すぎる親を持つ子どもに対して提供される低コストの医療保険です。無保険の患者に対しては、Richmond clinicと同様に医療費の割引を設けています。私はNurse practitioner (NP)の先生の診察を見学したのですが、実は、こちらにはphysicianはいません。NPが医師と同じように診察、診断、治療を行っています。ここで、NPについて説明したいと思います。

アメリカの看護師は准看護師(Licensed Practice Nurse, LPN)、看護師(Registered Nurse, RN)、そして高度看護師(Advanced Practice Registered Nurse, APRN)の3つに大別されますが、NPはAPRNのうちの一つです。4年制の看護大学を卒業後RNとして2〜3年勤務し、2年間の博士課程を修了して州立試験を受験するのが一般的でしたが、更に高度な専門性を身につけること、自律性を高めるといった背景により、2015年からnursing degreesの中でも最高峰にあたるDoctor of Nursing Practice (DNP)の教育プログラムに変更しようという動きが出ています(1)。NP数ですが、American Association of Nurse Practitioners (AANP)によれば、2019年1月時点で27万人以上います(2)。 また、Bureau of Labor statisticsのoccupational handbookによれば、全米のRN数は2018年時点で約305万人います(3)。年度は違いますが、単純に計算するとRNのうちNPとして働いているのはわずか9%弱になります。NPになるには、狭き門を通らねばならないのですね。


次回はOHSUの先生、学生のSmall group sessionについて報告します。Small group sessionって何でしょうね。どんな人達が何人いて、何についてやるのか分からないまま飛び込んでみたら、それは楽しい2時間でした。お楽しみに。

<参考>
1)レンデマン美智子, アメリカにおけるNPとCNSの役割と責任, 日本小児看護学会誌 Journal of Japanese Society of Child Health Nursing Vol.25 No.3; 116-120, 2016 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jschn/25/3/25_116/_pdf
2)AANP | The American Association of Nurse Practitioners https://www.aanp.org/about/all-about-nps/np-fact-sheet
3)U.S. Bureau of Labor Statistics Latest Numbers https://www.bls.gov/ooh/healthcare/registered-nurses.htm#tab-1


La belle indifférence 解離性障害に使えるか?

2019-11-06 17:28:15 | 総合診療

みなさまこんにちわ、今週来週は大忙しで自宅で寝るのは14日間で3日程度になってしまいそうで、色々なところへ出かけてきます。自宅へは15日に帰りますのでパンツと靴下をいっぱい買いました。少しでも研究のための時間を確保しないと研究とはやること♾なので、打ちひしがれています。

 

さて、講演などで使うために文献を読んでいたら、自分のコレッていう感覚と全く違うものが出てきましたので、紹介します。

La belle indifférence

 
はご存知ですか?これは、分かりやすく言うと解離性障害(Conversion)いわゆるヒステリーと言われている状態で、片麻痺や痙攣や、感覚障害など普通だったら一生を脅かしかねない疾患にかかっているかもしれないのにもかかわらず、まったく心配するそぶりすら見られない状態のことを言います。
 
で、このLa belle indifferenceが解離性障害の診断にどれくらい役に立つかと言うことを調べてみました。(Hoover徴候やArm dropping testはあまりにも有名ですね!)また時間があるときに、僕が英語論文にしようと集めている解離性障害身体所見でRule in してみようシリーズをいつかお伝えしようと思います。
 
おそらく一番有名なLa belle indifferenceに対する論文はこのSystematic reviewですね。でも文献の集め方とその選定の方法、定義や除外基準などSelection biasが強すぎて判断は難しいです。
 
大筋は解離性障害器質的疾患とでみられたLa belle indifferenceを比較すると前者で21%で後者で29%と器質的疾患でも多くみられるのと、定義も曖昧でありそれ自体が高い診断精度ではないために解離性障害の診断に用いるべきではないと言う見解です。
 
また別の研究でも、 感度3% 特異度 98% +LR1.3程度であったりとLR1台にて全く使えません。
 
一方で、同じ様に解離性障害の診断に対して我々が行うHoover徴候ですが、 感度56% 特異度 98% +LR26と驚異の診断精度を誇ります。
昔の逸話がありまして、多数の病院にかかり、MRIなどで異常がないと言うことを複数回調べられている原因不明とされる若い女性の片麻痺を師匠が回診で一発でRule in していたのを鮮明に思い出します。やはり僕の感覚でも、それくらい有用性が高いです。だった何回も色々な病院でMRI撮られて、髄液検査までされて原因不明だったのに、一撃フィジカルで診断されてましたから。
 
La belle indifferenceは、ある意味研究のLimitationでもあると思うのですが、プロの臨床家がなんとなく患者さんが醸しだす雰囲気や空気感を察知したり、ちょっとした目の動きなどから感じ取る非言語情報を数値化することは難しいので(Yes or No のBinary dataなりRating scaleなり)解釈が難しいですね。
 
また、救急搬送された患者さんの理解力が乏しかったり、知識レベルがあまり高くなかったり、精神疾患があったり、そもそも自分の健康に全く興味がない人だったりと【La belle indifference様の反応】はよくみられ、そもそも定義も曖昧なので比較研究にするとさらに難しいかもしれませんね。
 
この様な臨床家が持つ意味のある診断学的なスキル(非言語情報を)をたくさん言語化して数値化できれば、色々な人に役にたつだろうなぁと最近は考えており夢が無限大に広がります。
 
引用
1) La belle indifférence in conversion symptoms and hysteria: Systematic review, DOI: https://doi.org/10.1192/bjp.188.3.204. 

 


オレゴンOHSU特派員かおりさんレポ Vol.2~医学生地域医療・家庭医療海外研修~

2019-11-04 17:32:04 | オレゴンOHSU特派員かおりさんレポ

みなさまこんにちわ。現在雲南市立病院で当直中です。

ここは、家庭医と病院総合医のマインドとスキルを学ぶにはとても良い施設で僕は月曜日(結構祝日が多くて・・)と火曜日に初診と再診外来をしに医学部長にお願いしてこさせてもらっています。マインドを同じくする仲間がいるのが楽しいのです。

さて、メンティーのかおりさんから、随時学んだ報告がくるのでそれをせっかくなのでここにUPして記録しておきます。とっても良い学びになっているようでなぜか自分も嬉しいです。

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皆さんこんにちは。オレゴンで地域医療・家庭医療研修中の島根大学5年河野香織です。前回はオレゴンについて紹介しましたが、オレゴン州ポートランドの魅力が少しでも伝わっていれば嬉しいです。10月末の最高気温は15℃前後、最低気温は5℃前後と結構寒いので、訪れる際はしっかり防寒着を羽織っていらしてください。 さて、今回からDay2、outpatient clinicについてレポートします。

(お世話になったFamily medicineの先生と)

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Day2:Outpatient clinic】  OHSUは Marquam Hill (通称 Pill Hill)と呼ばれる丘の上にあるのですが、Day2に訪れたのはその丘の麓にあるThe Center for Health & Healing(今後はCHHと表記します)という外来を中心に行っている建物でした。

(The Center for Health & Healingの建物)

9階にあるFamily medicine clinic は 4つのチームで構成されており、それぞれWillamette, Atlantic, Pacific, Columbiaというチーム名がついています。各チームにはMD(医師)、MA(Medical assistant)、NS(看護師)などがいて、密に連携を取っています。医師が診察している間にMAが次の患者の予診、バイタルを取り、次の患者についてMAと医師が情報共有をし、医師が診察する・・といった感じで、円滑な診療を行っています。診察時間は、初診では40分以内、再診では15〜20分程度で、一日に診察する患者数はMD1人あたり20人程度とのことです。

 

 印象的だったのは、診察室で医師も患者も、とにかく話していたこと。疾患に関する事だけでなく、家庭のこと、仕事のこと、最近の面白かった出来事など、話題は多岐に渡ります。他の診療科でも患者とざっくばらんに会話する場面は見られるとは思いますが、患者との信頼関係を築くことはもちろん、ただ単に会話するのではなく、治療のアプローチポイントを探るような医師の態度も勉強になりました。さらに心に残っているのは、ある神経疾患のためにスムーズに話せず、言葉を一つ一つ紡ぐようにゆっくりと話す患者の診察に、医師だけでなくNS、medical resourcesを提供する人(日本で言うところのMSWのような存在。アメリカでの正式な名称が分かりませんでした、すみません)も参加し、みんなでその患者の困り事をしっかり聞いていたことでした。

 

Family medicine のフロアにはPreceptor workroomという部屋があり、behavioral scientistやpharmacist, psychologist, MSWなどがいます。Family medicineのメンバーがその部屋に自由に出入りしては彼らと相談して治療方針を決定したり、患者への説明などをお願いしたりしています。日本の診療現場でもこうした場面は見られるのかもしれませんが、様々な職種の人達が1つの部屋にいて、MDなどがすぐに相談できるような環境に出会ったことがなかったので、私にとってはとても新鮮でした。

 

Day2で学んだことは他にも沢山あるのですが、とりあえずDay2はこの辺りで終わります。2週間の実習の後に更新する機会が頂ければ、そのときに触れさせて頂きたいと思います。

(お世話になった小児科医の先生と)


オレゴンOHSU特派員かおりさんレポ Vol.1~医学生地域医療・家庭医療海外研修~

2019-11-01 15:54:37 | オレゴンOHSU特派員かおりさんレポ

現在、福岡空港にてドドドドと溜まった業務をこなしています。

いやぁ佐賀大学病院総合診療の歴史と、市中病院との研究連携は本当にすごくて、厚労省が視察にきまくるだけあって、今後の高齢化対策のアイデアの縮図のようでした。

さて、メンティーの中で我らがBHBかおりさんが現在オレゴン大学に研修に行かれているので、いずれ持ち帰ってきてまとめるためにも皆様とシェアさせてください。以下、かおりさんからのレポです!

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皆さんこんにちは。島根大学医学部5年の河野香織です。

10月末よりアメリカはオレゴン州、ポートランドに滞在しています。

オレゴン健康科学大学(Oregon Health and Science University,以下OHSU)で2週間、家庭医療・地域医療を学びます。

私が参加しているプログラムは地域医療振興協会(JADECOM)が提供する医学生地域医療・家庭医療海外研修で、参加者は各自が希望する期間に実習することができます。私は5年生の地域実習の2週間を研修期間に充てました。


残念ながら実習初日は体調を崩してしまいスケジュール通りに過ごせなかったので、実習2日目(Day2)から実習内容をレポートしていきたいと思いますが、その前に、少しだけオレゴン州についてご紹介させてください。

オレゴン州は西海岸沿いに位置し、北はワシントン州、南はカリフォルニア州と接しています。面積は本州と四国を足した面積よりも少し大きく、私が滞在しているポートランドはオレゴン州で人口最大の都市です。


ポートランドはWillamette川で西と東に、Burnside通りで北と南に分かれ、OHSUはSouth Westに位置しています。また、道路が碁盤の目状に走っているため現在位置を把握しやすく、交通機関はStreet carとMAXと呼ばれる2種類の路面電車とバスがあり、市内の移動で苦労することはほとんどありません。


10月末からポートランドに来ていますが、今の季節は紅葉がとてもきれいで、どこを切り取っても絵になる、素敵な街です。ぜひ一度訪れてください。