第四部 Generalist in ミシガン大学編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、Harvard MHQSを経て 現在ミシガンで奮闘中

グッドデザイン 金賞 受賞しました!

2022-10-12 05:12:03 | 総合診療
みなさまこんにちわ。
色々と忙しく過ごしているうちにあっという間にAnn Arborに移り住んで1年が経ちました。色々ありました。
この一年は専門医機構や学会運営や、雑誌のacademic editorや、査読や、毎日の会議のような日本の仕事を大量にこなしてきました。
 
振り返れば、できるだけプライベートの時間を確保するためにインターネットを駆使して、生産性や作業効率を高めるための工夫をする毎日だったと思います。
さて、そんな中で島根の仲間の皆さんのおかげで、とても嬉しいグッドデザイン賞(しかも金賞)を受賞しました為に省察してみました。
 
臨床ができる医師の集団はいると思いますし、
教育ができる医師の集団もいると思いますし、
研究ができる医師の集団もいると思います、
が、
地方国立大学から受賞できるということは本当にすごいことだなと改めて思います。全ては白石先生の4分間のプレゼンテーションと島根のみなさまの奮闘のおかげです。
 
デザインって、アート的な要素以外に僕はシステムを構築するためにこそあると考えてきました。このブログの記事にも大学院の授業などで記載していた日々が懐かしいです。
 
以下、日々の心の動きを書き留めたものです。
 
グッドデザイン賞 金賞と総合診療医
 
日立、Panasonic、Xbox、ワコール、Dell、SEIKOなどなど、錚々たる企業の中で僕らのNEURAL GP network(島根)が金賞を受賞しました。
これは確認した感じでは大学開闢以来、というか島根県をあげての大金星です。
単なる一地方国立大学が潤沢な資金で展開する企業とCutting edgeな領域で勝負するのはなかなかできることではないので、決定通知に感動しました。(どうか我らが白石先生のプレゼンを試聴下さい)
デザインと聞くと美術とかアートとか、見た目がカッコイイとか想定されるかもしれませんが、僕は違う個人的感覚をもっています。良いデザインとはどれだけ多くの人の「あぁ、それだ!それな!」的な共感のエネルギー的ポイントを見抜くか、それをいい感じにわかりやすく概念化できて、それを実際に現場で動かすことができるか?結局は、デザインを突き詰めると僕はリーダーシップとマネージメントなのかなと考えてきました。
パートナーである大石さんにまだセンターが始まる前に無理難題を押し付けたことが懐かしいです。ホームページとバーチャルオフィスのイメージは、いわゆる大学的なものではなく、絶対青っぽいティール色を採用してほしいと訴えでした。そう、この色はティールカラーです。
日本の構造的問題ですが、年功序列であまりわからない人が古典的リーダーになってしまい組織を機能停止させてしまうようなものにだけはしたくなかったのです。
所属・役職・年齢・出身大学関係なくそれぞれがリーダーとしてネットワークを自分でも自由に動かしていく。結果的に自分達の夢と自己実現をしていくのだという思いを込めています。ホームページには医療統括鑑や偉い人もおられますが、僕でも一番したにちょこっと乗せるくらいで多分いい。総合診療の主役は現場のリーダー達ですから。
性別・医師年数など全てのバイアスは極力排除し、全体のために提案された優れた意見は全て採用し、まず実践してみる。できないではなく、どうすればできるか考えていく、そんな思いの込められたティール色なのであります。
大学の教育現場は想像した以上に委員会や会議が多く疲弊することがあります。
ただでさえ忙しく、そしておそらく報酬も一番低いのに真面目に頑張っている医学部教員の負担をどうすれば減らせるか?さらに学生の能動的学習を向上させられるか?その答えがNEURAL GP networkを用いたオンデマンド教育の公開でした。ゆくゆくは、教育面での費用対効果の向上を狙い、文部省を中心としてミニマムリクワイアメント的な一部の授業や、臨床教育の講義などは全国統一で行える可能性もあるかもしれません。指数関数的に増え続ける医学情報の爆発に、医学教育現場は足し算だけではなく、引き算を考える時がきているのかもしれません。そして、やはり教育は得意な人、やりたい人に貢献していただく。能力を一番発揮できる場所で輝いてもらう、これに尽きるかと思っています。
総合診療医こそ、このような視野・視座・視点を調整して貢献する様々な活動に向いていると僕は思っています。共感力が高く(論文用のData揃いましたのでいずれ発表します)、規定路線に捉われないニュータイプの人の割合が多く、横断的俯瞰的視点をもっていることが多いためです。まぁ、そんな事を考えながら試行錯誤で色々とチャレンジし続けていると、Design thinkingというのはとても楽しいものだと感じます。やはり、島根の仲間の皆様がすべからく素晴らしいからこそ、毎日楽しめているのだと思います。本当にありがとうございます。
ちなみに、このようなDesign thinkingのマインドセットはHarvard MHQSという大学院で学んで感動した部分でした。だから若者に共有したく授業を開きたいと思います。2023年度から坂口先生と専門家の先生も呼びながら島根で教育活動開始予定です。
最後になりますが、みんなの夢をのせて最高の4分プレゼンをしてくださった我らがカリスマ白石先生、センター開始前の志とビジョンを語る段階からお付き合いつくださった益田工房の大石さん、最強情熱バックアップを下さる院長と医学部長、医療統括鑑、そして島根の総合診療医の皆様と事務の皆様のおかげです。本当にありがとうございました!
*グロービスの田久保先生もありがとうございました(4年前に出雲のお寿司屋さんでトップビジネスマンはみんなデザインを学んでいるって教えてくださり、そうなんか!と純粋に影響されました)!
引き続き、僕らがやりたいこと、やれること、やらなければならないことの中央突破を頑張ります。
 
グッドデザイン金賞受賞 審査員コメントです。
全国的に地域医療の従事者が少ないという背景の中、医学部の中にできた「総合診療医養成プロジェクト」という新しい枠を活用し地域医療従事者を増やそうとする仕組みと、関係性のデザインが素晴らしい。地域医療を担う医師が大学でも教え、また学生も地域に出ていくことで総合診療医のなり手を増やすにとどまらず、教育のネットワークがそのまま地域医療のネットワークとなり、地域での医療的課題やお互いの日常的な気づきも共有できている。地域医療の人材やネットワークが、そこに住む人の安心・安全を心理的にサポートしてくれることに繋がり、結果としてその地域に住みたい人を増やす公共的なインフラ価値を作っている。