第四部 Generalist in ミシガン大学編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、Harvard MHQSを経て 現在ミシガンで奮闘中

医療者のためのリーダーシップ30の極意

2022-12-06 08:22:21 | 執筆書籍一覧

みなさまこんにちわ。

メンターと一緒に翻訳書を出します。(多くの人に読んで欲しいので自分の収益はほぼ0%に価格設定しています)

日本の医学部で、大学病院で、全ての病院幹部に、いやどんなに小さなチームでも、役職ある人にでも、足りていないと感じてきたことが一つだけありました。

それは医療現場におけるリーダーシップ教育。

色々な論文でも書きましたが、実験基礎医学系の研究で過去に優れた業績をあげたからといって病院長などの経営者として優れたマネージメントができるとは限りません。もちろんそれらのことが自然と身に付くこともあるかもしれませんが、所属する講座や部門、診療科を超えて病院全体や地域全体を考慮したリーダーシップを発揮できるともまた限らないと思います。

でもリーダーシップって、かなり難しくて、見えるものでもなく、良い意味で先人から盗み、自ら感得したりする必要があるものでもあり、実際のところ学ぶ機会が乏しいのも事実です。そこで、メンターのSanjay Saint先生、Veenet Chopra先生の"医療者のためのリーダーシップ30の極意"を僕なりの言葉で僕なりの感覚で翻訳させていただきました。特にSaint先生の隙のないリーダーシップと緻密なマネージメントはこの本を読んで始めて意図的に行動されていたのだということに感動しました。これが本当の世界のリーダーかと。

下記は今回の訳書の自分の思いを込めたメッセージです。許可をいただき掲載させていただきます。どうか研修医でもチーフレジデントでも、看護師としてのプリセプターでも、薬剤部長でも、師長でも、医局長でも、教授でも、院長でも、健康保健福祉部長でも、医療政策に携わる偉い人でも、一人でも多くの人に手に取ってこれらのどれかを感得し、実践していただければ訳者としては幸いです。

------訳者まえがきより抜粋------

皆さんはリーダーシップとは部長や院長など役職のある年配の人が発揮すべきものだと思っていませんか?答えは、否、全ての医療職があらゆる局面でリーダーシップをとり続けているはずです。そして数名以上の人間が揃えば大小を問わず誰でも常に発揮していく必要があります。リーダーシップとはそれくらい日常的なものであると思っています。さて、僕には人生の方向性を決定づける程のリーダーシップに遭遇することが何回かありました。その一つが本書の著者であるSanjay Saint先生、Veenet Chopra先生との出会いです。

 

2017年に僕は現場の若手のリーダーとして思い悩んでいました。どうして周囲の人は自分の所属部門だけの事しか考えないのか?どうすれば医学部を変革できるか?どうすれば優れた若手を育成できるのか?誰も答えてはくれませんでした。しかし、その時に遭遇した論文が著者の2人がハーバードビジネスレビューという雑誌で発表したものでした。そこにはリーダーシップ論やメンター論の観点から明確に答えを示してくださっていました。その美しい文章を読んだ時に心の底から救われた瞬間を鮮明に覚えています。文字通り臨床・研究・教育・リーダーシップ/マネージメンなど全ての方向から死角がない二人の姿に僕は心底憧れ、二人が在籍されているミシガン大学へ移動し弟子入りすることになりました。米国の医療者であれば誰もがその名を知る有名なホスピタリストのお二人がカンファレンスや会議で見せる時間管理術や、心理的安全性の高い雰囲気の作り方、メンバーの良いアイデアを最短最速でチームとして実現させていく姿に驚愕しました。この「リーダーシップの極意」の翻訳は、自分が地球上で最も尊敬するリーダー達の知識・技術・姿勢・経験のエッセンスを日本の読者が理解しやすいように魂をいれる作業でもありました。

 

さて、本書の翻訳にあたりお伝えしたい特徴があります。まず、この本は巷によくある企業向けの書籍やM B A関連の書籍で述べられるリーダーシップとは決定的に異なります。医療現場を経験したことがある人でこその悩み、またそのリーダーが決まって遭遇する問題の解決法などを提示しています。我々にとって日常である医療現場は、患者さんの病の苦しみや悩みに加えて様々な専門家達のリーダーシップが複雑に絡み合って構成される非日常の世界です。僕は、これまで様々なマネージメントやリーダーシップに関する書籍を読んできましたが、医療者の視点からは腑に落ちないものが散見されました。医療は限られた医療資源を最も効率的・効果的に用いることで人々の健康状態を高める事を根本的な目的としており、この点がビジネスの目的とは全く異なるからです。さらに、企業とは異なりほぼ全ての医療職が何らかの独立した専門家として患者のためにそれぞれ独自の考え方で協働しているからです。

 

次に、日本版の本書の最大の強みは、著者と翻訳者が同じ病院の現場で志を共有していること、またメンターとメンティーの関係であることです。文化的背景が異なる米国のリーダーシップやメンタリング等の内容をそのまま日本語に言い換えてしまうと逆にわかりにくくなってしまう事が多いです。編集部と相談し、少しでも日本の読者にとってわかりにくいと感じた文章や内容は、何度もSaint先生のところに足を運び、訂正し、場合によっては注釈や表を挿入しました。翻訳の作業過程にも注意を払いました。医師だけではなく、全ての医療職にとって読みやすくなるように医療の素人である僕の両親や、医学生、若手医師のメンティー達に通読と校正を依頼し、どのような初学者やベテランスタッフが読んでもわかりやすいように配慮しました。ご協力いただいたみなさま、特に丁寧に読み込んでくれた両親には心から感謝します。

 

最後になりますが、本書「リーダーシップの極意」が医療の現場で自然と広まり、実践されていくことで日本の医療がさらにより良いものになっていくことを心から願っています。

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