僕の感性

詩、映画、古書、薀蓄などを感性の赴くまま紹介します。

太宰治 「きりぎりす」

2018-01-15 18:31:32 | 文学
現代では、離婚する夫婦の離婚理由は、第一位は、、お金だそうだ。おおよそ43%。

そんな中で、太宰治の「きりぎりす」の主人公は夫との別れを決断するが、
その理由がお金持ちになったから・・・とちょっと解せない。

つまり。芸術一筋で、孤高な信念を持ち、憂愁な影を備え、清い志の持ち主が旦那だった。
それら清貧さ、愚鈍なまでの芸術追求性、ひたすら邁進する孤高な姿にぞっこん惚れたのであった。

周囲の反対をもものともせず、画を観て撃たれたインスピレーションにすべてを賭けた。

けれど予期せず画は売れて成功をおさめ、旦那はお金に執着する俗物野郎に堕落したのだ。
周りの知人への罵詈雑言を平気で口にし、他人の評論をわが説かの如く吹聴する姿にも失望した。

あまりの豹変ぶりに主人公はその俗物画家との別れを決心した。

決意した夜に縁側にいるであろう「キリギリス」が自分の背中にいて、
そしてずっと「キリギリス」が背骨の中で幽かに鳴いていると思った。
また、この鳴き声を永遠に背骨の中にしまい込んでしまうことにするのだった。

この場合のきりぎりすは何なのだろう。
遊び人で享楽主義のきりぎりすだろうか。

いやそうではあるまい。
たぶん、植物の花粉を舐めているきりぎりすと見せかけて、実は花に集まってくる虫をたいらげるキリギリスであり、
美味しいものには目がない狡猾な肉食性の生き物の象徴であろうと思う。


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2 コメント

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何となくですけど… (雀(から))
2018-01-19 19:49:38
太宰が何かで語っていた「撰ばれていることの恍惚と不安」と呼応するようなテーマのような?👼
雀(から)様へ (僕の感性)
2018-01-21 18:17:44
コメント有り難うございます🎵

おっしゃる通り、太宰が常に命題としてきた
感覚だと思われます。

生家が高額納税者がゆえに
存分過ぎる仕送りを受け、反面
常に作家として大成しなければという
プレッシャーが付きまとったという事でしょう。

パビナールやカルチモン等薬物中毒になったり
自殺未遂をして投獄されるところなど
ヴェルレーヌと共通するデカダンスの一面が
あるような気がします。
また、後世の人々に愛されている点も
共通でしょう。

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