自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

マネジメントと論理的、科学的な基本認識の共有

2011-07-20 06:21:14 | 牛豚と鬼

1.マネジメントとは

 わが国の口蹄疫対策は殺処分を前提にしか説明されませんが、被害は殺処分により発生しますので被害を最小にするには殺処分を最小にする必要があります。「殺処分をしないで欲しい」という被害者側の願望は、「殺処分するしかない」とする処分側のドグマと権限により無視されていますが、その迷妄なドグマから解放されると、殺処分を最小にする知恵が関係者それぞれに沸いてきます。それぞれの知恵と仕事を結集するのがマネジメントの真髄です。迷妄なドグマから解放されるためには、科学的事実に対する真摯な態度が必要です。
 人は一人では生きられないように、組織も社会から遊離しては生きていけません。マネジメントとはチームから組織、国に至るまで、自己中心的な目的や方法ではなく、社会に開いた目的と方法で人々の知恵と仕事を結集することです。社会に開くとは、仕事を自己の利益を中心にして部分的に考えるのではなく、生命を大切にして地球から太陽、人間から社会へと全体的なつながりの中で考えることです。地域(地球)とのつながり無くして、私たちは生きていけないことを忘れてはいけません。また、自己の利益のために自己と他者との境界を引き、閉鎖的な集団の一員として意思決定に参加してもいけません。

 人は自問自答しながら意思決定をしています。自問自答のつもりが「他聞他答」である場合が多いにしても、自問自答の意識を失うと思考停止してしまいます。そして自問自答の判断基準の中に神(お天道さん)や科学的事実が必要です。特に「神は死んだ」と思う人々にとっては、神に替わり真摯に従うことができる絶対的他者が必要です。しかも現代科学の宣教師として社会的に信頼を受ける立場にいる学者、専門家はドグマを否定し、真摯に科学的事実と向き合う責任があります。また、行政や政治もドグマに陥り、「よらしむべし、知らしむべからず」とならないように、科学的事実に謙虚にならなければなりません。

 マネジメントの目的と方法は関係者が合意し、お互いに信頼して自主的な活動をしていく源泉となる必要があります。そのためには一部の利益を共有する自己と他者の関係を超越して自己を律する絶対的他者として、論理的、科学的な基本認識を真摯に共有する必要があります。知識があればマネジメントができるものではありません。現在は常識と訳されているコモンセンスはもともと共通感覚という意味なのです。明治以来、脱地域、脱自然を目指してきた東京時代にある日本では、単なる知識ではなく真摯な共通認識と命に対する共通感覚こそが人々を共感させ、人々の知恵を結集する源泉となるのではないでしょうか。

 一方、独占的、閉鎖的な仕事は、自己の利益を優先し、自己にとって都合の悪い情報は隠蔽し、メンバーの主体的活動を認めないので、いずれ腐蝕が拡がり破綻します。この世(宇宙と現象)を説明してきたのは神と科学ですが、宇宙は未知の暗黒物質で占められているように、科学では説明できないことが多いので、未だに迷妄なドグマが信じられる場面が多くあります。経済成長が命や生き方より優先されるのも経済成長神話(ドグマ)に支配されているからです。原発の安全神話も原発推進で利益を得る人々が作り出したものでしょうが、口蹄疫は殺処分しかないとするドグマは誰によって作られ固執されてきたのでしょか。そして何故ドグマを固執するのでしょうか。口蹄疫の感染を阻止するために家畜を殺さない方法はないか、何故真摯に考えようとしないのでしょうか。真実に近付くには命を大切にし、命を守るために、現象の理解を論理で埋めていく真摯さが必要です。そして口蹄疫禍と原発震災を地域と自然を取り戻す時代への転換としなければなりません。

2.口蹄疫ウイルス、遺伝子検査、ワクチン、抗体検査の基礎知識

 口蹄疫に関する「最新の科学的知見と国際動向」について基本認識を共有するため、口蹄疫ウイルスと遺伝子検査とワクチンと抗体検査の関係について図(スライド2)に示しておきました。
1)口蹄疫ウイルス
 口蹄疫ウイルスは核(カプシド)の中にRNA遺伝子が1本入っている最も小さなウイルス粒子で、蹄が2つある偶蹄類(牛、羊、ヤギ、鹿、サイガ、豚、猪等)に感染して増えます。感染とは偶蹄類の咽頭等の細胞でウイルス粒子から脱核してRNA遺伝子が出てきて、細胞にある蛋白合成経路を乗っ取って,ウイルスの増殖を始めることです。このとき細胞で合成される蛋白質はウイルス本体の蛋白質とは違うので、非構造体蛋白質(NSP)と言います。
2)遺伝子検査
 咽頭で増殖したウイルスは数日後に血中に増えます。このウイルスは微量でも遺伝子検査で検出できます。遺伝子検査とはウイルス遺伝子の断片を増幅してウイルスを特定する方法で、口蹄疫ウイルスを最も早く(45分)、最も簡単(チューブと恒温槽)に、検出する方法は我が国で開発されています 12)。口蹄疫の遺伝子検査を現場で実施するのは危険だとする立場がありますが、遺伝子検査はウイルス遺伝子の断片を増幅するから危険ではありません。それより日常的な病性鑑定に取り入れることで、口蹄疫ウイルスを早く閉じこめることが感染拡大を阻止するために最も大切なことです。
3)ワクチン
  ウイルスに感染するとウイルス本体(カプシド)にある蛋白質と宿主細胞で作られる蛋白質(NSP)を抗原として抗体ができます。ウイルスを人工的に増殖して、RNA遺伝子を不活化し、精製してNSPを除去し濃縮した抗原がワクチンバンクに保管されています。いろいろなウイルスの抗原が保管されていますし、世界で流行しているウイルスの情報もありますので、ワクチン接種を決定すれば、最適な不活化ワクチンを必要に応じて1週間程度で入手できるようになっています。
 ワクチンは抗体によりウイルスの増殖を防ぐ自然で安全な抗ウイルス剤です。これに対してNSPの産制を阻害する抗ウイルス剤13)が開発されていますが、この抗ウイルス剤は殺処分を前提に使用されるようです。なぜ殺処分を前提にするのか。一つには抗生物質に対する耐性菌ができるように、抗ウイルス剤に抵抗するためにウイルスが遺伝子変異する心配があること、もう一つには蛋白合成を阻害することから、人の健康にも悪影響を与える可能性があります。ワクチン接種しても安全に食用にできるのに、なぜ、ワクチンを使わないで殺処分を前提にしたウイルス増殖阻害剤を利用しようとするのでしょうか。
4)抗体検査
 ウイルスに感染すると抗体ができますが、NSPを除去していないワクチンを使うと、その抗体が感染によるものかワクチン接種によるものか識別できません。しかし、最近は精製してNSPを除去したワクチンが使用されていますので、NSP抗体検査をすればワクチン接種をしていても感染していることを証明できます。
 なお、抗体検査は感染を確認する方法ですが、抗体が確認できた家畜はウイルスを排出していませんので感染拡大の恐れはなく、殺処分して埋却する必要はまったくありません。食用に安全に利用できるのに、なぜ埋却しなければならないのでしょうか。この問題についても検討する必要があります。、

 スライド2

2011.7.20 開始 2011.8.4 更新1 2012.1.3 更新中


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