自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

牛 vs. 豚か、規模の戦いか(追加改定)

2020-08-18 23:22:31 | 牛豚と鬼
 口蹄疫の悲劇は、感染拡大を防ぐために現在の技術では殺処分しか方法がないことです。技術の発達により個体単位の検査が可能な牛なら殺処分を少なくする方法はありますが、豚は感染力が強く検査よりも殺処分の方が現実的だとする大規模経営では、殺処分を少なくする方法は机上の空論だと否定的です。

 また、個体管理が中心の牛の繁殖は、種をつけ、子を産み、その子が肥育して集荷されるまで最低3年、その子が繁殖のために残され、次の世代の子を産み、その子が出荷されるまで最低5年は必要であり、個体選抜で改良している牛は成果が得られるまで10年単位の仕事となり、繁殖牛や種牛は貴重な遺伝資源でもあります。

 一方、豚は8ヵ月齢から繁殖に供用し、年間分娩回数2.3回以上、年間子豚離乳頭数22頭以上、肥育豚の出荷は190日齢以下が経営指標とされるように回転が早く、個体選抜ではなく系統間交配などのハイブリッドシステムなので、豚を入れ替えて生産体制を立て直すのは容易です。鶏は口蹄疫には関係していませんが、生産体制そのものがオールイン、オールアウトですから、全殺処分に抵抗はないのでしょう。

 しかし、規模拡大によるコストダウンは経済学のドグマに過ぎず、農業は太陽エネルギーを循環的に活用するため資源を有効に組み合わせて食料を生産することが基本ですから、鶏でも小規模で太陽のもとに飼う方法もあれば、放牧養豚もあり、牛でも改良とコマーシャル生産を分離したハイブリッドシステムは可能です。
したがって、口蹄疫対策は牛 vs. 豚の戦いではなく、どちらかと言えば規模の戦いの側面が強いのかも知れません。

 しかし、この度の韓国の口蹄疫(O型)発生では、3km以内6回、500m以内5回の地区全殺処分、2回の農家全殺処分で、牛306農場10,858頭、豚37農場38,274頭、山羊、鹿を含めて合計395農場49,874頭が殺処分されました。リングカリングは畜種も規模も関係なく、感染も健康も関係ありません。しかも、1回の地区全殺処分では終息せず、11回も地区全殺処分を繰り返しています。

 私たちが共有しなければならないのは、「口蹄疫を終息させるための殺処分最小化問題」を解くことであり、このためにはいかに早くウイルス感染を見つけて殺処分するかが問われています。
 全殺処分を畜房単位、畜舎単位、状況によっては個体単位にする柔軟性と、地域で実施できる遺伝子検出の1次検査を組み合わせなければ、韓国のケースを繰り返すことになります。
 なお、ウイルス遺伝子の検出は必ずしも個体別採血を必要とはしません。鼻汁、唾液、糞便等にもウイルスは排泄されますので、個体別または畜舎の糞便や敷料等の検査でも検出は可能です。殺処分はウイルス検査をしながら、その検査の結果から次の対策を講じていく必要があり、感染の経路と拡大の可能性を調査する疫学調査も平行して実施されねばなりません。

 2000年の宮崎口蹄疫では、牛の移動か輸入ワラ等が感染源である可能性があり、その追跡調査で北海道の感染畜を確認することが出来ました。感染源は輸入麦ワラであったようです。
 今回(2010年)は初発確認の段階で10農場以上に感染が拡大していた可能性が認められています。ことに1例目、6例目、7例目の疫学的関係については緊急に調査する必要がありますが、口蹄疫の疫学調査に係る中間的整理について(農水省2010.8.25,PDF)には個々の調査は報告していますが、3例の関係についての報告はありません。また、わが国には疫学専門家が育っていないと言われますが、常識が育っていないように現場からは見えます。今回の口蹄疫対策においては委員会等の報告も含めて、素人でも考えることがなされていない杜撰さが目立ちます。

 私がブログ(牛豚と鬼)を書き始めたのは、牛をワクチン接種後に殺処分したことへの怒りからでした。私は獣医ではなく、システム論の立場から現場を研究していた立場からの怒りであったかもしれません。しかし、ワクチン接種後の牛の殺処分の理由は専門家からは丁寧な説明がされなかったように思います。現在(2020年)はコロナウイルスによる経済へのダメージが問題にされていますが、その対策への国の的確な指示が示されているように見えません。私のブログ「自然とデザイン」に書いた口蹄疫につて検討しながら、コロナウイルスとの関係についても、もう少し考えて見たいと思っています(2020.8.18)

牛 vs. 豚か、規模の戦いか 2010-10-14 | 牛豚と鬼
 最後の部分を追加し、改行の指示を削除した。

NHK宮崎放送局制作ドラマ「命のあしあと」 2013-02-02| | NHK
追跡!A to Z  口蹄疫“感染拡大”の衝撃 2013-02-09 | NHK
特報フロンティア なぜ”SOS”はとどかなかったのか
2013-02-16 | NHK


2010.10.14  開始 2010.10.15  更新1 2010.10.16  更新2  2010.10.18  更新3 2010.10.22


追加 2020.8.18




最新の画像もっと見る

コメントを投稿