自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

口蹄疫感染とウイルス排出と抗体産成の関係

2011-07-31 10:32:01 | 牛豚と鬼

1.口蹄疫の感染はウイルス排出量の増加による。抗体は感染を証明するが、このとき感染力はない。(基本認識1)

 口蹄疫に感染するとウイルスは食道,咽頭で増殖し、その後血流に侵入し全身へと移動して、さらに増殖します。この血中にウイルスが出現するウイルス血症の時期に体温も上昇し、口蹄疫の症状も出ます。また、ウイルス排出量も多くなります。ウイルス血症の期間は平均4日間で血中ウイルスが早く出現すると症状も早く出ます。しかし、感染後7~9日に抗体ができると、血中ウイルスは消失し、感染してから10~14日でウイルス排出もなくなります(スライド3(pdf),表1)。

2.2000年に日本で92年ぶりに発生した口蹄疫ウイルスの感染試験

 スライド3(pdf),表2は。2000年に日本で発生した口蹄疫ウイルスの感染試験の報告14)をまとめたものです。舌皮内および皮下にウイルス接種したホルスタイン(3ヵ月齢)はウイルス接種後8日目に発熱し、6日目頃に抗体が認められましたが、口蹄疫の症状は認められませんでした。また、遺伝子検査(PCR検査)で血中ウイルスが確認でき、ウイルス接種後4~6日目にウイルス血症となっていますが、ウイルス接種して1日後から3週間同居させた牛には伝染しませんでした。
 黒毛和種(2ヵ月齢)はウイルス接種した翌日から血中ウイルスが認められ、3日目から4日間認められ、接種後4日または5日目に発症し、抗体は接種後4日目に陽転しています。ウイルス接種した黒毛和種に同居させた黒毛和種は接種した場合よりやや遅れて、同居後5~6日目の2日間血中ウイルスが確認され、6日目に発症し、抗体は8日目に陽転しています。
 一方、豚はウイルス接種豚および同居豚は感染から発症まで2、3日と早く、典型的な口蹄疫の症状が認められました。血中ウイルスもウイルス接種の翌日から10日間、ウイルス接種豚と同居した豚は同居2日目から4日間検出され、抗体は接種後4日目(発症後2日目)、同居後5日目(発症後3日後)に陽転が確認されています。このウイルスは感染力が弱かったと言われていますが、牛と比較して豚に対する感染力は強かったのではないかと思われます。また、ウイルス接種した黒毛和種と同居した豚は感染していませんが、これは牛のウイルス排出量が少なかったためと考えられます。

 本報告では体温、血中ウイルス濃度、抗体価等の実験データが表に示されていませんが、貴重な情報なので公開すべきです。また、2010年に宮崎に大惨事をもたらした口蹄疫ウイルス(O/JPN/2010)についても感染試験の結果を早く報告すべきです。この場合に1試験区2反復以上とし、ワクチン接種の効果を含めて詳細な実験データを公表すべきです。

3.英国動物衛生研究所の口蹄疫感染試験の実験データ

 最近、口蹄疫の感染時期に関する研究報告15)(2011年5月)が詳細な感染試験の実験データ16)とともに公表されました。その実験データの一部をスライド4(pdf),表3)に示しています。実験方法につきましてはスライド5に紹介していますが、口蹄疫ウイルスを接種して48時間後の牛と湿度99%の部屋で確実に感染する条件で24時間同居させて感染させたドナー牛の2週間の血中、食道咽頭粘液および鼻汁の口蹄疫ウイルス量の推移、抗体価、インターフェロン、体温、四肢、鼻汁、舌、口腔等の症状発現、跛行、ドナー牛に2日目、4日目、6日目、8日目に健康な牛を8時間同居させた場合の感染の有無等が示されています。

 VQ05牛はウイルス接種牛と同居1日後には咽頭にウイルスが検出されていますが、血中ウイルスは2日目から6日目まで認められてます。体温上昇と症状発現は4日目に認められ、このとき同居牛も感染しています(T)が、他の時期には感染していません(NT)。VQ06牛は8日目に口腔内に症状が認められ、同居牛も感染していますが、体温の上昇が明確に認められたのは10日目でした。このようにウイルス感染が確実に起きる条件でウイルス接種牛と同居させても感染後の状態には個体差が認められています。

  この研究は口蹄疫に感染した牛から健康な牛に伝染する期間は短く、症状発現後2日以内であることを推計学的に明らかにしたものですが、このデータを感染防止のためのマネジメントにどう活用できるでしょうか。血中遺伝子検査が防疫対策にどのように活用できるかスライド5と6(表3~5)で検討してみました。

2011.7.31  開始 2011.8.4 更新1 2012.1.3 更新中


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