アメリカ映画『あなたが寝てる間に』(While You Were Sleeping)を見ました。BSで放送していたので録画しておき、空いた時間に見てみたものです。
独身女性ルーシー(サンドラ・ブロック)は、地下鉄の窓口の仕事をしている。恋人のいない彼女は、毎朝見かける男性に好意を持っていた。クリスマス・イヴの朝にその男性がおそわれてホームに落ちたため、ルーシーは彼を必死で助け出した。ルーシーは昏睡状態の彼・ピーター(ピーター・ギャラガー)の婚約者と誤解されてしまう。ピーターの家族に婚約者として扱われているうちに、彼女は次第に家族の一員のような気持ちになっていく……。というストーリーです。
孤独で少し年齢のいった女性を幸せにするのは結局「恋愛」「男性」だ、というありきたりなメッセージの映画と感じられもしますが、それでも見終わってあたたかい気持ちになれる映画であることは確かです。ただ単に「孤独な女性の前ですてきな男性があらわれる」という作りではなく、男性よりも先にその家族に気に入られ、その家族に迎えられるというところが、この映画をほのぼのとしたものにしている最大の理由だと思います。
ところで、小説を含めたドラマのストーリー作りという観点が言うと、この映画には少し面白いところがあります。それは、この作品の主人公ルーシーと恋をする男性が、最初から登場しているピーターではなく、後になってから登場してくるピーターの弟・ジャック(ビル・プルマン)だということです。
これは、ドラマ的には大きな欠点になる可能性もあります。というのも、視聴者・読者というのは、ドラマにある期待を持って見進め(読み進め)ていくものだからです。つまり、映画ははじめルーシーとピーターをめぐって展開していくので、いずれピーターが目を覚ましてルーシーと結ばれると予想してしまうのです。
それが後から登場してきたジャックを好きになるのですから、視聴者・読者はそれを快く受け入れるとは限りません。実際に、映画を見た人の感想ページを見てみたところ、この点で裏切られた印象を持った人もいたようでした。こういう反応が考えられるからこそ、このようなストーリー展開はあまり用いられないのです。
視聴者・読者は、物語のはじめの方で、誰に感情移入して見る(読む)かを決めることが通常です。したがって、ラブストーリーでは、後から重要人物を登場させる方法は通常とりません(主人公が次々にいろいろな異性に会うけどなかなかいい人に会えなくて、最後にぴったりの人に出会う…といった展開ならあり得ますが)。
その意味で、ドラマ作りの観点から言うと、なかなか興味深い点のあるこの映画『あなたが寝てる間に』でした。