フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 子どもの日などを含む大型連休です。 
 しかし、私の勤める大学は、4月29日(水)みどりの日も5月6日(水)振り替え休日も、いずれも授業日です。これも、半期15回の授業を必ずしなければならないという、文科省の指導が徹底されたためです。そのため、前期授業が終わって夏休みに入るのも、8月初旬になってからです。
          
 以前は、日本の学校で大学生だけが遊んでいると言われたものですが、近年は、小中学生・高校生が休みなのに、大学生だけが授業に行くという日がすっかり多くなりました。
          
 夏目漱石『三四郎』には、主人公の三四郎が熊本から上京し東京大学で入学します。授業期間が始まっているはずなのに、誰も授業をしていない様子が描かれています。昔から、大学では先生が授業を休んでもかまわない、という風潮がありました。私が学生時代も、あらかじめ休講と言ってくれるならまだしも、急に休む先生が多くて、たしかに不愉快な思いはしました。なかには、授業に30分遅れてきて、さらに終わりの時間を30分延長するという迷惑な先生もいました。
          
 その点で、半期15回授業の徹底は、大学の驕りを正すという意味合いもあったのだと思います。祝日授業が増えたのはいい気持ちはしませんが、これも時代の必然ということなのでしょう。

 せめて、子どもの日を含めた5月3日(日)~5日(火)は少し休養したいものです。
          

※あいかわらずの校務多忙につき、ブログの更新が滞りますが、
 なんとか週1回(できるだけ土日)の更新を心がけています。



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 恒例のテレビドラマ批評です。4~6月期ドラマに関するここまでの感想を書いておきましょう。あいかわらずの校務多忙につき、ごく簡単なコメントにとどめておきます。
 いつも通り、ドラマ名の後に今までの視聴率を示しておきます。(ビデオリサーチ社、関東地区)
          

『ようこそ、わが家へ』 (フジ、月9)  13.0%→11.4%

 かつては恋愛ドラマの枠だったフジテレビの看板「月9」は、近年さまざまなジャンルを試行しています。今回はミステリー・サスペンス調のドラマを持ってきました。家の花が荒らされるなど嫌がらせという題材が、近年流行の「殺人事件⇒推理⇒解決」というパターンとは違います。ただ、毎週毎週、「嫌がらせ」の題材を見たくなるかどうか?その点が心配です。
          

『戦う!書店ガール』
(フジ、火10)  6.2%→6.4%

 AKB渡辺麻友が初主演するドラマ(稲森いずみとW主演)として注目です。書店という舞台も、文学研究者の私にはおおいに関心がひかれます。大人の世代は稲森に、若い世代は渡辺に感情移入して見られるという仕組みも意図的と思います。ただ、渡辺ファン以外の一般の視聴者にも受け入れられるかどうか。題材が地味ですし、私は、渡辺演じる北村亜紀が熱意だけの身勝手女にしか見えないので、どのくらい多くの視聴者に受け入れられるのか気になります。
          

『マザー・ゲーム』
 (TBS、火10)  9.8%→8.7%

 「シングル・マザー」「ワーキング・プア」「保育園待機」「格差」「お受験」「ママ友地獄」といった、近年の女性と子育てをめぐるテーマが満載のドラマです。子育てしながら働く女性には身につまされる場面が次々に出てきます。それだけに、立場の違う視聴者の関心をどのように引くのか。視聴者をかなり選ぶドラマかもしれません。

          

『Dr.倫太郎』
(日テレ、水10)  13.9%→13.2%

 『半沢直樹』が大ヒットした堺雅人を主演に、『ドクターX』『花子とアン』の中園ミホを脚本に、と最強の布陣で臨む今期の注目作です。先進国ではどこも精神衛生の課題が大きく、精神科医を主人公に据えた着眼点も秀逸です。「こんな精神科医はいない」「わざとらしい」といった批判もあるようですが、それはおりこみ済みでしょう。スーパードクターでありながら自身の恋愛には不器用というギャップがこれからどのように描かれるか、その点を楽しみにしたいと思います。
        

『心がポキッとね』 (フジ、水10)  10.4%→7.5%→7.5%

 「キレちゃった男」「ストーカー女」「いい歳して自分探し女」「悩めない男」という、いずれも性格や精神状態に問題のある4人の奇妙な同居生活。登場人物一人一人を丁寧に描く岡田惠和脚本らしく、問題がある人びと全員に愛情を注いで描き出しています。誰か一人に感情移入するドラマの方が見やすいので、視聴率的には苦戦すると思いますが、人物の描き方としてはたいへんよく出来ていると感じました。精神科医を主人公にした『Dr.倫太郎』と扱う題材に近い面があります。私は録画しているものの、視聴率的に考えると、同じ時間帯に放送されるのは残念です。
          

『ヤメゴク』 (TBS、木9)  9.1%→6.7%

 笑えます。テレビドラマのオリジナル作品のようですが、てっきり原作がマンガなのだと思いました。それくらいマンガチックです。ただ、この作品なら、主役が大島優子である必要があるのかどうか、それは疑問です。私は前作『銭の戦争』で演じた真面目で平凡なOL役の方が、大島優子には似合っているし、その路線でいく方が女優として有望だと思いました。
          

『アイムホーム』 (テレビ朝日、木9)  16.7%→14.0%

 原作は石坂啓のマンガ。キムタクがテレビ朝日連続ドラマに初主演ということもあり、注目された作品です。事故で最近5年間の記憶を失ったばかりか、現在の妻子の顔が仮面に見えるという奇抜な設定。次第に5年間の出来事や仮面に見える要因が開かされていくという、ミステリー仕立てにも興味をひかれます。なお、『華麗なる一族』で昭和の鉄鋼マンを演じても髪を切らなかったキムタクが、今回は短髪でいかにも普通のサラリーマンらしくなり、見た目から役作りをしているようすが伺われます。
          

『医師たちの恋愛事情』 (フジ、木10)  10.3%→8.6%→8.4%

 今もっともセクシーな男・斎藤工をいかにかっこよく見せるか。その点を最大限に重視した、ハーレクインロマンス的なテレビドラマです。散乱したネックレスを拾い集めて届けてくれる、高い棚にある本をとってくれる、転びかけたときに抱きかかえてくれる、雨の中で傘をさしかけてくれる、桜の木の下で女性を後ろから抱きしめてくれる…、などなど。ロマンチックなシーンが満載です。う~ん、斎藤工、かっこよすぎるぞ。女性の皆さん、このドラマを見て「胸キュン」しましょう。男性の皆さん、草食系とか言っていないで、斎藤工をお手本に頑張りましょう。
          

『恋愛時代』 (フジ、木11)  4.4%→4.3%→3.0%→5.5%

 亡くなった脚本家・小説家、野沢尚の小説をドラマ化した作品です。原作小説は未読ですが、理由があって離婚した理一郎とはるが主人公。二人はお互いの再出発のために再婚相手を紹介しあうのですが、二人とも相手に未練がある…という設定。単純で率直な愛の形ではなく、複雑で素直ではない愛を描いた、大人のドラマです。互いを想う気持ちがありながら、それがすれ違ってしまう話。現実の愛は多くのドラマのように単純ではなく、この作品はそのことをよくとらえています。さすが野沢尚原作ドラマです。深夜枠ですし、恋愛ドラマ不毛の時代ですから、視聴率はとれないと思いますが、大人の視聴者にオススメしたいドラマです。(第4回で視聴率が上昇したのは、もしかするとこの作品の良さが理解され出したのかも…)
          

『アルジャーノンに花束を』 (フジ、金10)  11.5%→7.9%

 原作はダニエル・キイスの小説、2002年にテレビドラマとしてフジテレビ系列で放送されています。私は原作も読み、2002年のテレビドラマも見ていますが、今回は野島伸司の脚本監修で独自色を出そうとしていると感じます。現時点で2回しか放送されていないので、まだ判断はできませんが、その独自色が功を奏するかどうか。私の年代のテレビドラマ好きには、前作のユースケ・サンタマリアや菅野美穂の配役のイメージが強く残っているので、それをくつがえすインパクトを残せるかどうか、これからの見どころです。

          

『ドS刑事』 (日テレ、土9)  12.7%→8.0%

 多部未華子はどんな役でもこなせる、若手ワンバーワンの芸達者な女優さんと思います。だからといって、土曜9時にこの企画はどうでしょうか。この枠は、小中学生とその親が一緒に見られる時間帯で、これまでもそれ向きの作品が多く放送されました。この時間帯を意識して、あまり「ど」ぎつい作品にはなっていませんが、それなら「ドS」の設定が活きないのでは…。どうせなら、深夜枠かVシネマで、やりたい放題の作品にする方がよかったように思います。
          

『天皇の料理番』 (TBS、日9)  放送開始前

 まだ放送前です。私は、堺正章主演のテレビドラマ化第1作(1980年放送)を見ていた世代ですので、今作がどのように作られているか、おおいに期待しています。
           


『ワイルド・ヒーローズ』 (日テレ、日10)  9.7%

 「どんなにボコボコにされたって、負けだって言わなければ、それは勝つまでの過程なんだ」って。なんてアツイんだ! 私なら「ボコボコにされる前に謝っちゃいます。ともあれ、EXILEのためのドラマです。
          

※このブログは、できるだけ週1回(なるべく土日)の更新を心がけています。

 



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 このところ、何本かの映画をマスコミ試写会で見ましたが、ブログに感想を書く余裕がありませんでした。そうこうしているうちに封切りになってしまった作品もあるので、ともかく簡単でも感想を書いておきたいと思います。

 このところ試写会で見せてもらって、まだ感想を書いていない映画は次の4本です。

『夫婦フーフー日記』
(監督=前田弘二 主演=佐々木蔵之助、永作博美)

『あの日の声を探して』
(監督=ミシェル・アザナビシウス 主演=ベレニス・ベジョ、アブドゥル・カリム・ママツイエフ)

『インヒアレント・ヴァイス』
(監督=ポール・トーマス・アンダーソン 主演=ホアキン・フェニックス)

『シグナル』
(監督=ウィリアム・ユーバンク 主演=ブレントン・スウェイツ)


それぞれに興味深い作品でした。
『夫婦フーフー日記』は、ブログに公開された実話が本として出版され、その後テレビドラマ化、映画化された作品です。映画では、病死した妻が幽霊になって出てきて、夫と一緒に出会いからの二人の出来事を振り返るという設定になっています。死んだ妻が幽霊になって…というと、けっこう湿っぽい作品を連想するかもしれませんが、全体のトーンは明るく、ほのぼのとした作品に仕上がっていました。

『インヒアレント・ヴァイス』は、トマス・ピンチョンの小説『LAヴァイス』の映画化作品。私は文学研究者なので、ピンチョンには関心を持っていますし、映画はアカデミー賞の脚色賞と衣裳デザイン賞にノミネートされた作品ということで、映画作品にも期待していました。ヒッピー探偵が、元恋人の失踪から謎に巻き込まれるという設定。ストーリー自体よりも、1970年前後の風俗・ファッション・音楽を最大限に取り入れた時代の雰囲気に興味をひかれました。

『シグナル』は、大学のPCにハッキングしてきたハッカーを追いかけた3人の大学生の話。気が付くと政府の隔離施設で 「感染が疑わるので隔離される」ことが告げられます。ジャンルとしては、「SFミステリー」に「アクション」の要素を加わっていると言えばいいでしょうか。私は通常、この種のジャンルの作品を見ませんが、それでも最初から引き込まれ、最後まで楽しみました。結末に驚かされるということは前宣伝の通りですが、加えて、このジャンルの作品にしては、「映像美」を追究していることが特に印象に残りました。

もっとも印象深かったのは、 『あの日の声を探して』で、紛争で両親を失った9歳の少年が難民キャンプで生きる姿を描いたヒューマンドラマでした。舞台は、ロシアに侵攻された1999年のチェチェン。両親を銃殺されたショックで声を出すことができなくなった少年ハジが、フランスから調査にきたEU職員のキャロルと出会い、彼女と暮らすうちに次第に心をひらいていく物語です。
紛争の見方としては、善悪をわかりやすく描きすぎているという印象は持ちました。しかし、重要なのは、それぞれの登場人物たちがみな、それぞれの意味で変化していくことです。少年ハジはキャロルによって心の傷から立ち直っていく、キャロルはハジと暮らすことによって自分の仕事の無力さと重要性を認識していく…という変化です。そして、それ以上に印象深かったことは、ロシア兵の側からも変化が描かれていること。その変化はハジやキャロルの変化とはまったく異なる意味での変化であり、それがあることで、この映画を単なる「感動もの」で終わらせない複雑な性格を持たせていると感じました。


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 少し前にさかのぼりますが、私が勤務する中央大学で永年勤続表彰式というものがありました。これは、中央大学に25年間勤める教員・職員を表彰するものです。
 私も1990年に専任講師として着任。このたび、めでたく勤続25年を迎え、表彰していただくに至りました。
           
 ということで、現在学んでいるほとんどの学生が生まれる前から、中央大学の教員をしているということになります。自分では、そんなに長く勤めてきたという実感もないですし、勤めてきたというだけで表彰していただくのも申し訳ない気がします。
           
 とはいえ、長く勤めてきただけに、これまでの中央大学や文学部の経緯がわかっているという面はあります。それだけに、常に新しい目、外からの目を持って自分の環境を見つめ直す姿勢は持たなければいけませんが、一方で、長く勤めている人間としての責任も果たさなければならないと思っています。
          
 そのような気持ちを持って、これから26年目の年度に向かおうと思います。


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  (中央大学文学部国文学専攻の入学生ガイダンス) 


先週、中央大学の卒業式がありましたが(3月25日)、早くも今週は入学式(4月1日)を迎えました。
          


 私も、大学院の入学式(経済学部・商学部・総合政策学部と合同)、大学院文学研究科国文学専攻の入学者との懇談会、文学部国文学専攻の入学者ガイダンス、大学院入学者の歓迎会…と続けて出席し、忙しい一日を過ごしました。
          
 学部・大学院に入学した皆さんの、これからの学生生活の充実を願っています。
             


  (中央大学大学院国文学専攻の入学生懇談会)



  (プーさんも入学をお祝い)


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