史跡を巡り始めて何年になろうか。これまで何箇所の史跡を訪ねたか分からないが、ますます史跡を訪れる楽しみは尽きない。
史跡に触れる楽しみは、史実と空間を共有する喜びに他ならない。後世の我々は、タイム・マシンでも発明されない限り時間を共有することはできないが、同じ空間を共有することは可能である。或いは同じ空間を汗を流して移動することで、先人の体験を共有することも可能である。
かつて宮崎県の可愛岳という標高727メートルほどの山を登ったことがある。勿論、登山家が好んで挑戦するような山ではなく、歴史に登場することがなければ誰も目を向けないような山である。明治十年の西南戦争で、追い込まれた薩摩軍は闇に紛れて官軍の包囲網を突破した。薩軍の「突囲」と呼ばれる。汗だくになって可愛岳を登りながら、当時の薩軍の進軍に思いを馳せるのは無上の楽しみであった。薩軍は夜間の進行で、官軍に知られないよう、物音も発せず黙々と崖を攀じ登ったことであろう。山を登っているだけで薩軍の息使いが感じられる。これが史跡訪問の醍醐味である。
史跡を訪問する目的が歴史的事件との接触であれば、歴史上の人物との接触を可能にするのは、その墓を訪ねることである。著名人の墓を参ることを「掃苔」という。歴史上の人物の墓前に立つと、それまで書物の上での登場人物であったその人が急に現実に存在した一個の人間としての現実味を帯びてくるのである。
私は歴史とともに音楽を好む。特にCD録音よりもFMで放送されるライブ録音が好きである。スタジオで作られる音楽というのは、確かに演奏の良い部分だけを繋ぎ合わせて理想的な音楽を編集することはできるかも知れないが、そういう完璧な音楽を聴いてもあまり感動しないのである。ライブというのは、観客のしわぶきや楽譜をめくる音、時には指揮者のうなり声や雑音も混じるし、勿論ミスやほころびもあるが、それが時に演奏者も予期しない効果を生むことがある。そして何よりも演奏者と聴衆の作る緊迫感、演奏者の熱気が伝わってくる。スタジオで淡々と作られる冷静な音とは全然違う。
若き日のアバドとポリーニの熱気溢れるブラームスピアノ協奏曲第1番、クレーメルの奏でるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲(カデンツァはシュニトケ)の独特の世界、チェリビダッケの雄叫びの聞こえるブルックナーなど、30年以上も音楽を聴いてきても、これぞという名演奏に出遭うことはそう多くはない。それでも飽きもせずに毎日のようにFMのライブ放送をチェックするのは「もしかしたら凄い演奏に出遭えるではないか」という期待感があるからである。
ライブ録音の臨場感と、史跡を訪ねた時に感じる臨場感は共通するものがある。ものに憑かれたように史跡を訪問し、FM放送を聴くのも根は同じところにあるように思う。
史跡に触れる楽しみは、史実と空間を共有する喜びに他ならない。後世の我々は、タイム・マシンでも発明されない限り時間を共有することはできないが、同じ空間を共有することは可能である。或いは同じ空間を汗を流して移動することで、先人の体験を共有することも可能である。
かつて宮崎県の可愛岳という標高727メートルほどの山を登ったことがある。勿論、登山家が好んで挑戦するような山ではなく、歴史に登場することがなければ誰も目を向けないような山である。明治十年の西南戦争で、追い込まれた薩摩軍は闇に紛れて官軍の包囲網を突破した。薩軍の「突囲」と呼ばれる。汗だくになって可愛岳を登りながら、当時の薩軍の進軍に思いを馳せるのは無上の楽しみであった。薩軍は夜間の進行で、官軍に知られないよう、物音も発せず黙々と崖を攀じ登ったことであろう。山を登っているだけで薩軍の息使いが感じられる。これが史跡訪問の醍醐味である。
史跡を訪問する目的が歴史的事件との接触であれば、歴史上の人物との接触を可能にするのは、その墓を訪ねることである。著名人の墓を参ることを「掃苔」という。歴史上の人物の墓前に立つと、それまで書物の上での登場人物であったその人が急に現実に存在した一個の人間としての現実味を帯びてくるのである。
私は歴史とともに音楽を好む。特にCD録音よりもFMで放送されるライブ録音が好きである。スタジオで作られる音楽というのは、確かに演奏の良い部分だけを繋ぎ合わせて理想的な音楽を編集することはできるかも知れないが、そういう完璧な音楽を聴いてもあまり感動しないのである。ライブというのは、観客のしわぶきや楽譜をめくる音、時には指揮者のうなり声や雑音も混じるし、勿論ミスやほころびもあるが、それが時に演奏者も予期しない効果を生むことがある。そして何よりも演奏者と聴衆の作る緊迫感、演奏者の熱気が伝わってくる。スタジオで淡々と作られる冷静な音とは全然違う。
若き日のアバドとポリーニの熱気溢れるブラームスピアノ協奏曲第1番、クレーメルの奏でるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲(カデンツァはシュニトケ)の独特の世界、チェリビダッケの雄叫びの聞こえるブルックナーなど、30年以上も音楽を聴いてきても、これぞという名演奏に出遭うことはそう多くはない。それでも飽きもせずに毎日のようにFMのライブ放送をチェックするのは「もしかしたら凄い演奏に出遭えるではないか」という期待感があるからである。
ライブ録音の臨場感と、史跡を訪ねた時に感じる臨場感は共通するものがある。ものに憑かれたように史跡を訪問し、FM放送を聴くのも根は同じところにあるように思う。
私、「竜馬が長州をゆく」のホームページの管理人の石原 博之と申します。
植村さんのブログを拝見させていただき、投稿をさせていただきました。
まさにその通りですよね。
私も植村さんのホームページを参考にさせていただきました!
一度、感謝を述べたくて投稿させていただきます。
ありがとうございました!
どうぞお体には気を付けて下さい。今後益々のご活躍を祈念申し上げます!
コメント有り難うございます。
石原さんのHP拝見させていただきました。
さすがに長州の史跡は完璧ですね。実は、私は中根市之丞や時山直八の墓は、探しきれずに泣く泣くギブアップしました。(いつになるか分かりませんが)今度長州に行くことがあったら、是非ともご教示ください。
幕末に関心を持ち、インターネット上をウロウロしていた時に、植村 様のホームページに出会いました。そして史跡訪問をする際に、印刷をさせていただき何度も参考にさせていただきました。私にとってはバイブルのようなホームページです(笑)。植村 様への感謝も含め、より多くの方に史跡訪問をしていただき私と同じ感動を味わっていただきたいと思い、「竜馬が長州をゆく」なるホームページを作りました。ですから、私にとって植村 様のホームページは目標であります(笑)。実は、ただ今印刷して持ち出しやすいようにリニューアルをしております。もちろん、地元の利を活かして、まだまだ調査中です。山口に来られる際はご連絡下さい!取り急ぎ御礼申し上げます!
長州は、私にとって永遠にあこがれの地です。
今度は何時長州に行けるか分かりませんが、チャンスがあれば連絡させていただきます。
大変、失礼いたしました。リンク先を修正しましたのでご報告します。
田中(atanaka69@yahoo.co.jp)と申します。
いつも楽しく拝見させていただいております。
(過去に一度、新宿の高須四兄弟展のことをコメントさせていただいたことがあります。)
寒い日々が続きしばらく史跡訪問を怠っておりましたが、そろそろ再開しようと思い、貴HPを閲覧したところ、Not Foundとなってしまっており、とても驚きました。
いつも貴HPをガイドに色々巡ってきた私としては、道標となるべきものを失ったも同然で、非常に残念です。
当ブログは変わらず拝見してまいりたいと思いますが、幕末史跡訪問についても何とか県別の目次のテキスト部分だけでも拝見できないものかと思っています。
ブログへの掲載が難しいようであれば、ページのHTMLを頂戴出来たりしないか?とのお願いもしたいほどです。
貴殿が長い年月をかけて訪問された実績を頂戴しようとする厚かましいお願いなのは、重々承知しておりますが、とても素晴らしいデータベースですのでよろしくお願い致します。
厚かましいついでに、西南戦争にまつわる九州の史跡についても知ることができればと。
今後も全国津々浦々を訪問される活動を期待しております。
県別のリストは手元にありますので、ブログに掲載する方法を考えてみます。
西南戦争関連史跡については、手元にはこれから訪問予定のリストもありますが、まずは訪問済みのリストを掲載することにさせていただきます。
今後も貴ブログを師にあおぎ、色々と訪ね歩き回りたいと思います。
訪問済みの史跡リストをブログに掲載しました。
福岡、大分のリストについては、後日掲載します。
宮崎のリストは、今回の作業の中で作成していないことに気が付きました。これから作ります。