Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

分離を助長するお役所

2008-10-11 16:23:10 | ひとから学ぶ
 中央リニアが直線ルートで現実化の道を歩む中、長野県知事を始め長野県内の基本スタイルが諏訪ルートを推進しようとすることへの批判もある。わたしも確かにそういうことをこの日記の中で書いてきているが、今のまま飯田というところに協力して「直線ルート、そして飯田駅実現へ」というわけにはいかないと思う。そこに近い地域に住んでいる者にしてもそんな流れがすんなりいっては、飯田の思うがままで許せるものではないと思う。それは今までにも触れてきたようにこの地域の中での飯田、そして伊那という関係、さらには飯田がそれを断ち切るように他地域への思いやりをしてこなかったまなざしに対して「それで良いのか」と思うわけで、わたし以上にそう思っている人がいても不思議ではない。

 11/8長野日報に「上伊那・木曽 名所紹介」という記事の見出しが見えた。権兵衛トンネル開通以降、伊那市を中心とした地域の木曽との連携が目立つ。なぜいまさら木曽へ、と思うことについても今まで触れてきた。確かに飯田より木曽福島の方が伊那には近くなったかもしれない。しかし、だからといって飯田下伊那ではなく木曽谷という広域圏に擦り寄る。こうした動きを助長するようなたとえば県とか、またあまりこの地域のことには無知な外部の人たちがいて、そうすることが活性化につながると思っているのかもしれない。けして木曽と連携するなというのではない。なぜ飯田下伊那地域と壁を作ってきた地域が広域行政の舵をとる県などの無知な人たちに乗せられてしまうのか、とそんなことを思うのだ(実際のところ飯田地域と壁を作ってきた地域が、だからといって木曽へという意識を持つとは思えないし、事実木曽へアプローチしようとする人は少ないだろう)。記事で紹介されているのは両地域の秋の景勝地を紹介した観光パンフレットである。十万部作成して両地域の住民には全戸配布していくという。発行したのは両地域の広域連合だという。A2サイズをA4の大きさに折りたたんだパンフレットで県の元気づくり支援金から事業費として157万円ほどの助成を受けたという。来春には春のバージョンも作成するという。なんというか近年の観光を主導しているのは県でありながら、なぜかこうした郡単位の縦割りをしたがる。ようは地域性などを認識した上での配慮などはなく、無知になった住民もそれでよしと思っている。何よりパンフレットを見てみよう。伊那谷と木曽谷は並走するように南北に展開している。実は楢川村が塩尻市に入ってしまって、木曽郡ではない。このあたりもだからこそ広域行政の役割があると思うのだが、現実的には行政が異なるからそうした枠外に追いやられたものは積極的には紹介されていない。木曽の南端にある南木曽町は、ほぼ飯田市と同じあたりに並ぶ。ということは木曽谷を網羅するとなれば、上伊那だけではなく下伊那、とくに飯田までは同じ地図上のエリアに入ってくる。それをわざわざ上伊那と木曽というエリアだけに絞るから、地図としては描かれても景勝地の空白地帯が登場する。事実掲載された地図では、南は飯田市の天竜峡あたりまで描かれていて、下伊那郡の全域をA2版に展開しようとすればすべて網羅可能だ。ところがわざわざ飯田市より南をカットして、そこには大きな字で景勝地の地図上の番号と景勝地名が一覧で書かれている。下伊那全域を掲載したとしても、右上と左下には上下伊那と木曽以外の地域があってそこに文字を集約することは十分可能なはずだ。なぜわざわざ上伊那と木曽なのか、だれが提案したものかしらないが、きっとこうした構図に異論を発す人がいないのだろう。こんなことをするからますます飯田地域が伊那地域へのまなざしを持たなくなる。それを県が主導しておいて、リニアがなんたらかんたら知事に言わせるようなら、ほとんどばらばら状態といわざるをえない。

 以前にも触れたが、中央線がリニアの開通に伴って新宿-甲府間が廃止されると、困るのは諏訪・松本地域。だからこそリニア諏訪ルートにすがる。中南信地域にあっては、どう考えても諏訪周りルートが最善策であることに変わりはない。それは前述した中央線の今後のことと絡むからだ。絶対新宿-松本間の維持が約束されるのならともかく、それがないとすれば、人口密度的に考えて何はともあれそれしか主張できないのである。けっこう長野県知事の発言に対して批判をする人がいるが、多数決でいけば当たり前のことである。そしてここまで触れた地域性が絡む。この問題を発端にして、さらなる伊那谷の分離が顕在化するのが残念でならないが、それは伊那谷の南北が両者にまなざしを持たなかった結果である。

 かつてのパンフレットをみてみると、「伊那谷」という扱いのものがあった。ところが最近は必ず上下を分けて作成される。それらはほとんどお役所絡みのものである。そういう姿を見ていてつくづく思うのは、地方事務所(県の出先機関)が別に別にあるのがいけないということだ。

コメント    この記事についてブログを書く
« 人社会の迷走② | トップ | 針と糸 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ひとから学ぶ」カテゴリの最新記事