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Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

「慣例」という圧力

2017-12-10 23:14:22 | ひとから学ぶ

 自治会の役員会があった。「自治会」という呼び方をするようになってもう15年ほど。それ以前は「」を使っていた。そもそも自治組織の単位については、いまだ地域によっていろいろだ。先ごろ会社の同僚とそんな話をした際、彼の地域では「班」という呼び方をしていて、いまひとつイメージがつかなかったが、どうもわたしの住む地域でいう「自治会」と同じ程度の大きさだと知った。

 さて、ちょうど今年度に入ったころの役員会で話題にした、いわゆる高齢世帯の自治会費免除の話。最近自治会内で自治会を脱退する世帯が目立つようになって、とりわけ高齢世帯であったりご主人が亡くなった女性のみの世帯であったりと、いわゆる弱者と言われる世帯に対しての高額負担をなんとかした方が良いのてじゃないか、というあたりで今年はそのあたりを検討していくという話だった。役員の方たちである程度議論されたのだろうと思っていたら、やはり多忙な中で検討していくのは難しいようで、今年度の先が見えてきたので、慌てて提案を練ったという感じ。「提案」の中には次のように書かれている。「近年、高齢により自治会活動に参加できないなどして自治会を脱退する例が増えています。(中略)そこで、高齢者世帯の自治会脱退を回避する方策として、該当世帯に対する自治会費の軽減措置を設けることを議題としたい。」というもの。かつてなら「子どもはどうしているのだ」という具合に、必ずしも高齢者世帯だからといって後継がどこかにいて、そうした後継がいるのならそうした人たちに負担してもらうべきだ、という議論もあっただろう。しかし、今や子どもが必ずしも親の「家」を面倒見ない時代になって、そんなことを言っていられないのが現実だ。あくまでも子どもがいても、その世帯が高齢であるのなら、負担軽減を、という議論である。おそらく地域によっては、いまだ子どもの存在を遡上させる事例は多いだろうが、わたしの自治会ではそうした話題が上らないだけ、ましな地域だと思う。現実をよく踏まえているといってもよいだろう。

 とはいえ、あっさり役員上層部が練った提案は通らなかった。いわゆる慣例がどうしても頭に残っている。とりわけ軽減する部分を具体的に説明したから、その算出根拠に異論が上った。たとえば自治会の世帯数と自治会より大きな枠の「区」への世帯数を違えるという提案だ。自治会費として集金する際には、区費や耕地費といったものを含めている。この地域のちょっと不思議な構成なのだが、「区」とは別に「耕地」というものがある。どこにでもあるというものではなく、なぜか「自治会」と「区」の間に「耕地」というなくても良いような組織が挟まっている。自治会のできた歴史に関わっているのだろうが、よそ者のわたしにはよく理解できない。そうした自治会より大きな組織に1人あたり「いくら」という具合に負担金がある。そのいっぽうで自治体からは、「区」に対して1人「いくら」という補助もあるという。自治組織は上納金もあれば、補助金もあって、差し引きすればなくても良いような金銭のやりとりが存在する。上納金を納める際の自治会世帯数は少なくしておいて、区に入る補助金は世帯数が減ったおかげに減るというのでは、自治会の身勝手ではないか、という意見なのである。提案された役員の方は、自治会に入っていたとしても、区に入らなくてはならないということはないと主張。しかし、過去に自治会の役員をされた方は「自治会に入っている世帯は、そのまま区に入るのが慣例だった」と言う。「慣例」、いわゆる暗黙の中で当たり前のように引き継がれていたことそのものが、「本当にそれで良かったのか」とは考えないのである。自治会のように1年ごと役員が変わっていくような世界では、「慣例」がとくに重要視される。それを逆手にとって自治体は自治会を利用しているようにも見えるが、よく考えてみれば「慣例」ほどわたしたちの暮らしを抑えているものはないのかもしれない。

 結局、異論の狭間で提案者はちょっと弱気になってしまったが、とはいえ、せっかく軽減したらどうかという議論が上がったのだから、なんとかこの機会に実行して欲しいものだ。


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