Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

金メダルという物語

2018-02-18 23:12:46 | ひとから学ぶ

 インターハイで伊那西の娘が優勝するなどというのは、それまで「伊那西」がスピードスケートの選手を抱えているなんて聞いたこともなかったので「意外」と思ったことを今でも思い出す。なるほどと思ったのは、新谷志保美さんの父親の指導を受けていたことを知ったときのこと。新谷さんもまたオリンピックに出場経験のあるスピードスケートの選手だった。それこそ「なんで」と思うほど、あまりスケート選手を輩出するような環境ではなかった宮田村の出身だったからだ。そしてオリンピックに出場したのも30歳になったとき、ただ1回だった。

 小平奈緒さんがオリンピックで金メダルを獲得した。「誰にも負けていない」ほど今のスピードスケート500メートルでは圧勝状態。もちろん金メダル候補最右翼で、予想ランキングでも当たり前のように金メダルだった。これもまた意外と思ったのは、盛んに報道されているように、ソチ五輪後、オランダに渡っているというのは地方紙で知らされていた。しかし、当時の国際大会の成績はソチ五輪以前とあまり変わらなかった。ところが昨年からだ、人が変わったようにワールドカップで優勝するようになったのは。最初はたまたまのように思っていたが、連勝が続きそれほど関心がなかったからタイムに気をかけていなかったが、若い頃より明らかにタイムが向上していた。ひょっとすると、と来年に平昌五輪を控えて思ったものだ。それでも年齢が年齢だけに、来年になったら「わからない」、そう思ったもの。ところが今シーズンが始まっても連勝が続いた。もはや小平さんに勝てる人はいない、というくらいに。それでも巷では「オリンピックに合わせてくる選手がいる」と、考える人も少なくなかった。良い例がソチ五輪でのジャンプ女子高梨さんだった。とはいえ風が左右されたり、意外と好調の波が現れやすいジャンプ選手とは違って、スピードスケートには番狂わせが少ない。連勝を続けるということは、もはや第一人者であることに間違いはなかったわけだ。

 そんな小平さんも日本選手団の主将の話があったとき、「嫌だなー」と思ったと言うのだから、この大役は余計な重荷になんだろう。主将なんてなくせば良いのに、いつもながらオリンピックの度に思う。人に勝つのではなく、自分に勝つ、目標タイムが出れば自ずとそこに金メダルがあると想定している小平さんには、自信があって当然なのだろう。納得する滑りができて負けたのなら仕方ない、そう思うからブレはない。「求道者」と自らを表現するほどだから、悟りの境地に入っている。何より一貫して長野県内に身を置いて極めたのは嬉しい話。明らかにスケート人口は減ったのに、いまだ長野県内には有力な選手を輩出する土壌がある。しかし、有力企業の少ない長野県には、有力な選手が育たない環境がある。それでも金メダルを獲得することができたのだから、いかに小平さんの努力が並大抵ではなかったか、そこだけ見てもよく解る。それほどありえない環境なのだ。個人種目で夏も含めて初めての長野県人金メダリストと言うのだから、わたしの表現は間違っていない。


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