Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

仙丈ヶ岳

2017-02-02 23:17:38 | 信州・信濃・長野県

記憶に残る山なみ」参照

 

駒ヶ根市赤穂より

 

 飯田市川路の国道を走っていてなんとなく思ったのは、「ここは仙丈ヶ岳ぐらいかなー」というもの。ようはそこから望んで印象強い山のこと。川路は飯田の街より南にあたり近くには天竜峡もあるという位置。したがって伊那谷の空間も狭まってくるのだが、それでも比較的空間的には空の広い場所。それでも西側には里山があって、その向こう側の中央アルプスの山々は望めない。また、天竜川東岸には伊那山地の山々があって、その向こう側の白く輝く南アルプスの山々はせいぜい頭だけ見せる程度。明らかに○○山と誰でも認識できるような、いってみれば象徴的な山はせいぜい仙丈ヶ岳くらいなのだ。仙丈ヶ岳というと、伊那市内から山容が大きく望める山で、伊那市の人々にとっては象徴的な山ではないだろうか。この季節は夕方になると真っ白い山容が赤く染まることで印象的だ。前山が山容を隠すことがないため、山全体の姿が望める。実は同じように前山にそれほど邪魔されずに望めるのが飯田市あたりから望む仙丈ヶ岳だ。その中間地帯は前山として伊那山地の山々が接近していて望めないことはないものの、前山が隠したりする。我が家のあたりでもはっきり仙丈ヶ岳は望めるが、飯田市で望む仙丈ヶ岳ほど印象深くない。

 長野県人は山を象徴的に捉える傾向があることは、「描かれた図から見えるもの」で何度となく触れている。しかしながら、実際のところ、たとえば飯田市川路にみる「山」とはどんな印象かといえば、確かに仙丈ヶ岳は印象強い山かもしれないが、かなり遠くに見えていることもあって、象徴性を仙丈ヶ岳に抱いている人はほとんどいないだう。飯田市内から望んでも、やはり仙丈ヶ岳は印象に強い山ではあるが、身近な山としての風越山は街の西側に聳えていて親近感が強いだろう。そしてここからは中央アルプスの高峰は見えにくい。やはり振り返って望める南アルプスが風越山に次いで印象強いだろうが、山容がはっきり望める仙丈ヶ岳よりはもう少し近い位置にある塩見岳や荒川岳といった山々に心は行っているのではないだろうか。とはいえ、伊那市からも飯田市からもその山容がはっきりと捉えられる仙丈ヶ岳は、伊那谷のかなり広いエリアから捉えられる、伊那谷にとっての代表的な山と言える。が、もちろん仙丈ヶ岳の名を口にする人はその割合に少ないかもしれない。

 何より段丘が典型的な地形だけに、起伏が激しいから平らな空間と違って、どこからでも望めるという山は長野県内では珍しいのだ。「東山スカイタワーから見える山」というページがある。「東山」はいわゆる名古屋市東山のこと。ここに望むことのできる山々が写真で紹介されているが、「中央アルプス」の写真には、みごとに同アルプスの代表的な山々が並んでいる。左手に木曽駒ケ岳があって右手に南駒ヶ岳があるという、いってみればわたしがふだん見ている山々とは鏡になる。それでいて遠い位置から見ているから全ての峰が望める。もちろん見た感じでどの山が高く、どの山が低いか解る。ようは意外にも地元で見ているよりたくさんの山々が望めるというわけだ。段丘崖の下、ようは谷の中に生まれ育ったわたしには、望める山は限定的だった。南アルプスはその前山が接近していたから望めないし、中央アルプスも直近の山々しか望めなかった。とはいえその直近の山々が印象深い山容だったから、わたしの中では象徴的存在だったことも以前に触れた。と思って検索してみると、実は生家から望んだ山の姿は日記になかったが、「馬ひき権兵衛」で触れた山々がそれにあたる。我が家からは宝剣岳は見えなかったが、少し南寄りの段丘崖に移動すると望めた。伊那谷に住んでいると、その位置によってまったく山の姿も、見える山も異なる。だからこそ仙丈ヶ岳は特異な存在かもしれない。

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