Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

「池の名前と村の記憶」、の前に

2016-10-05 20:56:06 | ひとから学ぶ

 先日の日本民俗学会年会は、シンポジウム以外はほとんど図書販売の部屋に腰を下ろしていた。そういえば、と思い出すのは、かつて図書販売をしていた時代にはその空間に身を置いたが、その後売り場を設けなくなってからは年会に行っても図書販売の部屋を訪れなかった。このあたりは昔に比べれば、学生ばかりではなく自分も足を運ばなくなったということになるだろうか。そもそも高額な専門書を買うほど、財布に余裕がない。かつてならそれでもと思って許される範囲で購入したのだが、今はできるかぎり図書館で済ませるようになった。その理由のひとつが、今はネットで蔵書を確認できるからだ。たくさん蔵書を置いている図書館でも、必ずしも探している本があるとは限らず、先ごろも目を通したいと思った本を検索したら、近在の大きな図書館にはなかったが、駒ヶ根市の図書館にあって母の見舞いがてら立ち寄った次第。意外に探しているものが点々と違う図書館にあったりする。そしてそんな図書館を訪れると、これまた意外にもふだん会わない人と会って近況を伝え合う、なんていうことになる。そういう意味では県内の図書館はどこもかしこも月曜日が休館日で、どうしても月曜日に目を通したいという時は厄介だ。そんななか下伊那では松川町図書館が月曜日に開館していて、ありがたいこともある。とりわけ図書館といえば同じような本が置いてあるのは当たり前だから、専門書を目的にしないふつうの人たちだって開館日をずらしてほしいと思っているのでは。

 さて、先日も記したように、図書販売をしたものの、売上は微々たるものだった。儲けるつもりでやっているわけではなく、宣伝という意味を含んでいるから、図書販売を行うということは会の活気を示すことにもなる。だから売るつもりはなくても図書を並べておくだけでも意味があるというもの。とりわけ会報はふだんの販売価格の2割引。通信に至っては「どうぞお持ち帰りください」と無料にしたにもかかわらず、持ち帰った人は少なかった。会報2割引、通信無料となれば、年会費を払わなくても会の還元分のほとんどを手に入れることができる。それでも宣伝と、学生さんたちに、と思うのだが思惑通りにはいかない。そんななか会場に持ち込んだ通信10号分ほどを各1部ずつ持ち帰った方に、かつて会員で、その後会費滞納で除名処分になっている人もいた。「それはないだろう」と思ったが、彼はわたしの顔を覚えていないようだった。わたしはどちらかというと人の顔を覚えられない方だが、それでも年会などで顔を合わせていると、会にかかわった方(講演をしてもらったり、懇親会で同じ席になったりした方)のほとんどの方を覚えている。もちろん名のしれた方々がわたしのことなど眼中にないことは百も承知だが、そうはいっても会の事務を担っている以上、会費滞納者や除名者については注意深く予習をしていった。さもなければわたしの存在価値がなくなる。

 一緒に行った仲間が安室知さんの本をせっかく年会に来たから買って帰りたいと言ったのは、年会ではほとんどの書籍が割り引かれるからだ。わざわざここに来て買う理由のひとつである。その通り前述したように会の発行物も割り引いているし、本来は売っているものを無料でお分けした。印刷物に価値があった時代には、年会の図書販売はありがたい空間であったはずだ。ところがどうだろう、販売の部屋が賑わったのは、土曜日のシンポジウムが終了したあとの30分ほどと、日曜日の昼食の間の1時間ほどだった。研究発表の時間になると、とんと人影がなくなる。「いいことじゃないか」とも思えるが、明らかに昔とは違う。ということで早々店じまいをする前に、わたしも安室さんの本を買って帰ろうと出版社の出店しているところに行ってみるとすでに店じまいしている。まだ出版社の方がおられたので「買いたいのですが」と言うと、すでに片付けて車まで運んでしまっていたものの、わざわざ取りに行ってくれた。それもそのはずで、2割引とは言うものの、定価が1万円もする本。買うにも躊躇する金額だが、生業複合に関していろいろ勉強させてもらっているし、興味をひかれるところが多いからこの機会に買いたいと思った。今回購入した唯一の本である。繰り返すが、自ら買わないのだから、人が買ってくれない、とぼやくのは身勝手かもしれない。

 なかなか忙しくてせっかく買った1万円もする本を、読む時間がない。ちなみに、今年2月に発行された本だが、長野県内のどこの図書館にもいまのところ置いていない。せっかく買ったのだから図書館にないうちに読み切りたいところだが…。ということで、目次を総覧して身近なテーマだと思った1章だけ先に読んでみた。そのことを次回から記しておきたい。

続く

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