守田です。(20120227 07:30)
今、僕は福島市内のホテルで朝を迎えています。放射能除染・回復プロジェクトが
23日から26日にかけて行った活動に後半の二日間参加したのですが、今回もとても
意義深い時間を過ごしました。
僕が参加したのは、これまで同プロジェクトが除染を行ったお宅のフォローアップ
でした。数ヶ月たって、線量がどうなっているのかを調べにいったのです。2日間
で3件のお宅にお邪魔しました。どこも確実に除染の効果は出ていましたが、しか
し安心して住めるレベルにはまだまだ遠いのが現実でした。どこのお宅も部屋の中
で高いとことでは0.4マイクロシーベルト毎時の放射線量が計測されました。
この様子もまたお伝えしたいと思いますが、今朝は、訪問先の方にうかがった話の
中で、山下俊一氏に関するとても印象的話が出てきたので、まずはそこからご紹介
したいと思います。
山下俊一氏は、長崎大学教授で、大震災直後に福島県に入り、県の健康アドバイ
ザーになった人物です。「100ミリシーベルトまでは安全」「マスクはしないでい
い」「布団は外に干してください」などと、当初から安全宣言を繰り返し、県民が
放射線から身を守る体制を大きく崩してしまった御仁です。
多くの人が山下氏を批判しています。もちろん僕も講演のたびに彼を批判してい
ます。とくに僕が彼を批判する理由は、あまりにひどい嘘をついたことと同時に、
とても残酷な役割を果たしてきたからです。というのは山下氏は、「今回の事故
で福島原発から出てくる放射能は、チェルノブイリ事故の1000分の1から100分
の1です。何も心配ありません。マスクはしなくても大丈夫です。布団は外に
干してください。窓は開けてください。子どもは外で遊ばせてください」など、
非常に問題の多い発言を繰り返しました。実際には、チェルノブイリ事故に匹敵
する放射能が漏れ出したのであり、これだけでも学者として完全に失格であるこ
とははっきりとしています。
しかしより大きな問題は次の点にあります。山下氏が、一番いけないことは放射
能を心配しすぎることだ。そのための心理的ストレスが一番危険だと繰り返し
強調したことです。なぜならこのことと「マスクはしなくていい」という言葉が
くっつくと、マスクをしているのは過剰に放射能を怖がることになるわけですか
ら、マスクは「しなくてはいい」のではなく、「してはいけない」に変わってし
まうからです。
このことが福島県民の中に非常に深刻な対立を産み落として生きます。山下氏の
言葉を信じてしまった人は、マスクをはずすわけですが、信じれない人はマスク
を付け続けました。ところが信じてしまった人からすると「そうやってマスクを
するから子どもたちが怖がるのだ」という考えが生まれます。そしてそれはきつ
い主張となり、そこここで人の間に亀裂を生んでいったのです。
実はこの山下氏の発言は、1991年のチェルノブイリ事故調査報告書以来、原子力
推進派が使い続けてきた「うそ」なのですが、効果は絶大です。なぜならこれは
災害心理学にいう「正常性バイアス」の上にのっかるものだからです。正常性
バイアスとは、突然の危機に直面した人間が、危機を危機として認めず、事態は
正常に推移しているのだというバイアスをかけることによって、精神的苦境を逃
れようとする人間心理です。危機だと思ったら、必死の対処をしなければならな
い。安全だと思えば何の対処もいらない。だから人は安全だと思い込みたがるの
です。この上に山下俊一氏は、自らの言葉を重ねていきました。
およそこれが山下俊一氏の罪深い嘘の実態なのですが、僕は今回、初めてその
リアルな姿をみた人に触れました。その方は福島市内在住の大貫友夫さんです。
事故当初より活発に情報を集め、娘さんを避難させ、自らは除染に挑んできまし
た。途中で、放射能除染・回復プロジェクトに参加し、自宅への除染をプロジェ
クトとともに行うなどしてきました。今回、フォローアップで訪れたお宅のうち
の一軒が大貫さんの家でした。
その大貫さんが、実は山下氏が一番はじめに福島市内で行った講演会に参加した
のです。情報が非常に限られてる中で、長崎大学から偉い先生がやってくると聞
いて、放射能のことを聞きたいと出かけたそうです。そのとき山下氏は、さきほ
ど述べたようなことを話したのですが、こんなことも言っていたそうです。
「セシウムというものは、100度になれば、気体になってどんどん出ていきます。
だから野菜はお湯でゆがけば大丈夫です」。僕は一瞬、耳をうたがいました。
セシウムは融点は摂氏28度ですが、気体になる沸点は641度。とても100度では
気体になりません。放射能の専門家を自称する人物がどうしてそんなことを
言ったのでしょうか。
「えっ」と絶句する僕に対して、大貫さんは「そうなんですよ。ラジオ福島を
聞いていても、すぐにいくらなんでもそれはおかしい。セシウムは100度では
気化しないという意見がどんどん出てくるんです。それでラジオのパーソナリ
ティーが、長崎に戻った山下さんに、電話でインタビューしたのですね。そう
したら、あの人がいつもするようにへらへら笑いながら、「ああ、あれは私の
勘違いでした」と語ったのです」・・・。
もう一度、耳を疑いました。しばらくして怒りがこみ上げました。僕には知っ
ていてついた嘘にしか思えないからです。しかも市民を素人とあいてどって、
非常にぞんざいな気持ちで語ったのではないか。だからへらへら笑って、軽く
撤回したのではないか。何かそこに、山下氏の福島県民に対する冷酷かつ尊大
な感情がすけてみえるような気がしました。
大貫さんは飯舘村か川内村からきた女性が、「自分には生まれたばかりの孫と、
妊娠している娘がいる。このまま福島に住み続けていいのだろうか」という質
問への山下氏の回答についても教えてくれました。
「まったく問題ありません。でも女性は感情的になっていいですから、心配な
ら避難したらいいです」
「女性は感情的になっていい」という言い方。放射能を怖がるのは「感情的」
であって、非理性的だけれども、女性はそういう存在だからそれでいい・・・
とこれは、放射能へのあたりまえの恐怖や不安を「感情的」といってさげすみ、
不安を口にできなくさせるとともに、強い女性蔑視に裏打ちされた二重三重に
あやまった発言です。
質問が続きました。
「牛の乳から放射能が出ました。どしてなんでしょうか」
「牛は外の青い草を食べているからです。みなさんは心配ないです」
「今は青い草なんてはえてません。人間の食べ物と同じように屋内において
あったものを食べたのですが」
山下氏、これにはこたえられなくて押し黙ってしまったそうです。
・・・長くなりだしました。そろそろホテルをでなければいけません。
続きは京都に戻って書きます。
今、僕は福島市内のホテルで朝を迎えています。放射能除染・回復プロジェクトが
23日から26日にかけて行った活動に後半の二日間参加したのですが、今回もとても
意義深い時間を過ごしました。
僕が参加したのは、これまで同プロジェクトが除染を行ったお宅のフォローアップ
でした。数ヶ月たって、線量がどうなっているのかを調べにいったのです。2日間
で3件のお宅にお邪魔しました。どこも確実に除染の効果は出ていましたが、しか
し安心して住めるレベルにはまだまだ遠いのが現実でした。どこのお宅も部屋の中
で高いとことでは0.4マイクロシーベルト毎時の放射線量が計測されました。
この様子もまたお伝えしたいと思いますが、今朝は、訪問先の方にうかがった話の
中で、山下俊一氏に関するとても印象的話が出てきたので、まずはそこからご紹介
したいと思います。
山下俊一氏は、長崎大学教授で、大震災直後に福島県に入り、県の健康アドバイ
ザーになった人物です。「100ミリシーベルトまでは安全」「マスクはしないでい
い」「布団は外に干してください」などと、当初から安全宣言を繰り返し、県民が
放射線から身を守る体制を大きく崩してしまった御仁です。
多くの人が山下氏を批判しています。もちろん僕も講演のたびに彼を批判してい
ます。とくに僕が彼を批判する理由は、あまりにひどい嘘をついたことと同時に、
とても残酷な役割を果たしてきたからです。というのは山下氏は、「今回の事故
で福島原発から出てくる放射能は、チェルノブイリ事故の1000分の1から100分
の1です。何も心配ありません。マスクはしなくても大丈夫です。布団は外に
干してください。窓は開けてください。子どもは外で遊ばせてください」など、
非常に問題の多い発言を繰り返しました。実際には、チェルノブイリ事故に匹敵
する放射能が漏れ出したのであり、これだけでも学者として完全に失格であるこ
とははっきりとしています。
しかしより大きな問題は次の点にあります。山下氏が、一番いけないことは放射
能を心配しすぎることだ。そのための心理的ストレスが一番危険だと繰り返し
強調したことです。なぜならこのことと「マスクはしなくていい」という言葉が
くっつくと、マスクをしているのは過剰に放射能を怖がることになるわけですか
ら、マスクは「しなくてはいい」のではなく、「してはいけない」に変わってし
まうからです。
このことが福島県民の中に非常に深刻な対立を産み落として生きます。山下氏の
言葉を信じてしまった人は、マスクをはずすわけですが、信じれない人はマスク
を付け続けました。ところが信じてしまった人からすると「そうやってマスクを
するから子どもたちが怖がるのだ」という考えが生まれます。そしてそれはきつ
い主張となり、そこここで人の間に亀裂を生んでいったのです。
実はこの山下氏の発言は、1991年のチェルノブイリ事故調査報告書以来、原子力
推進派が使い続けてきた「うそ」なのですが、効果は絶大です。なぜならこれは
災害心理学にいう「正常性バイアス」の上にのっかるものだからです。正常性
バイアスとは、突然の危機に直面した人間が、危機を危機として認めず、事態は
正常に推移しているのだというバイアスをかけることによって、精神的苦境を逃
れようとする人間心理です。危機だと思ったら、必死の対処をしなければならな
い。安全だと思えば何の対処もいらない。だから人は安全だと思い込みたがるの
です。この上に山下俊一氏は、自らの言葉を重ねていきました。
およそこれが山下俊一氏の罪深い嘘の実態なのですが、僕は今回、初めてその
リアルな姿をみた人に触れました。その方は福島市内在住の大貫友夫さんです。
事故当初より活発に情報を集め、娘さんを避難させ、自らは除染に挑んできまし
た。途中で、放射能除染・回復プロジェクトに参加し、自宅への除染をプロジェ
クトとともに行うなどしてきました。今回、フォローアップで訪れたお宅のうち
の一軒が大貫さんの家でした。
その大貫さんが、実は山下氏が一番はじめに福島市内で行った講演会に参加した
のです。情報が非常に限られてる中で、長崎大学から偉い先生がやってくると聞
いて、放射能のことを聞きたいと出かけたそうです。そのとき山下氏は、さきほ
ど述べたようなことを話したのですが、こんなことも言っていたそうです。
「セシウムというものは、100度になれば、気体になってどんどん出ていきます。
だから野菜はお湯でゆがけば大丈夫です」。僕は一瞬、耳をうたがいました。
セシウムは融点は摂氏28度ですが、気体になる沸点は641度。とても100度では
気体になりません。放射能の専門家を自称する人物がどうしてそんなことを
言ったのでしょうか。
「えっ」と絶句する僕に対して、大貫さんは「そうなんですよ。ラジオ福島を
聞いていても、すぐにいくらなんでもそれはおかしい。セシウムは100度では
気化しないという意見がどんどん出てくるんです。それでラジオのパーソナリ
ティーが、長崎に戻った山下さんに、電話でインタビューしたのですね。そう
したら、あの人がいつもするようにへらへら笑いながら、「ああ、あれは私の
勘違いでした」と語ったのです」・・・。
もう一度、耳を疑いました。しばらくして怒りがこみ上げました。僕には知っ
ていてついた嘘にしか思えないからです。しかも市民を素人とあいてどって、
非常にぞんざいな気持ちで語ったのではないか。だからへらへら笑って、軽く
撤回したのではないか。何かそこに、山下氏の福島県民に対する冷酷かつ尊大
な感情がすけてみえるような気がしました。
大貫さんは飯舘村か川内村からきた女性が、「自分には生まれたばかりの孫と、
妊娠している娘がいる。このまま福島に住み続けていいのだろうか」という質
問への山下氏の回答についても教えてくれました。
「まったく問題ありません。でも女性は感情的になっていいですから、心配な
ら避難したらいいです」
「女性は感情的になっていい」という言い方。放射能を怖がるのは「感情的」
であって、非理性的だけれども、女性はそういう存在だからそれでいい・・・
とこれは、放射能へのあたりまえの恐怖や不安を「感情的」といってさげすみ、
不安を口にできなくさせるとともに、強い女性蔑視に裏打ちされた二重三重に
あやまった発言です。
質問が続きました。
「牛の乳から放射能が出ました。どしてなんでしょうか」
「牛は外の青い草を食べているからです。みなさんは心配ないです」
「今は青い草なんてはえてません。人間の食べ物と同じように屋内において
あったものを食べたのですが」
山下氏、これにはこたえられなくて押し黙ってしまったそうです。
・・・長くなりだしました。そろそろホテルをでなければいけません。
続きは京都に戻って書きます。
給食で牛乳を飲まないと「みんな飲んでいるのに何故お前だけ飲まないんだ」
そんなふうになじられるという噂もあります。
放射能は安全と、言葉だけで言い募ることは簡単でしょう。
でも、未知のことはとても多いです。
大人は子供の危険を回避しなければならない責任もあります。
今、南相馬市で[黒い粉]のことが話題になっています。
β、γ線が非常に高いそうです。
毎日のご活動、本当にお疲れ様です。
私は東京在住ですが、
事故の状況が気が変になりそうなほど心配だったので、
毎日ネットで情報収集していましたが、
その時に山下医師の福島での講演を知りました。
原爆被害のあった長崎の先生とのことで私もその発言をすっかり信じてしまっておりました。
もちろん、しばらくしてその発言がとんでもない嘘だったと知りましたが・・・。
許せない・・・。
彼のせいで一体どれくらい多くの人々の心と身体が傷ついてしまったことか・・・。
私は彼の非道を一生許さない・・・。
申し訳ありません・・・!
怒りに興奮して失礼してしまいました・・・。