明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1883)美浜原発3号機配管破断による5人死亡6名重軽傷事故を振り返る

2020年09月17日 12時30分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20200917 12:30)

玄海原発の危険性の続報です。

美浜原発で2004年8月9日に死傷事故発生

前回の記事で加圧水型の美浜原発2号機が1991年に、蒸気発生器の配管破断事故を起こしたことを書きました。このため国内で初めての蒸気発生器交換が行われましたが、美浜原発は、その後、2004年にも深刻な事故を起こしました。
事故は8月9日の午後に3号機で起きました。今度は蒸気発生器ではなく、二次の「低圧給水加熱器」と「脱気器」の間の配管が破断しました。玄海3号機が2018年の再稼働時に故障事故を起こした脱気器のすぐそばの配管です。
破断は作業員が配管の下にいる状態で起こりました。定期点検準備作業中でした。140度の蒸気が人々を襲い4名が即死。体中の水分が奪われたそうです。その後、搬送先の病院で1名が死亡。他に6名が重傷を負う痛ましい事故でした。
当時のニュース動画があったのでご紹介します。ここには2004年の事故に至るまでも、美浜原発がさまざまに故障事故を繰り返していたことにも触れられています。

11人死傷!美浜原子力発電所事故 当日のニュース(平成16年)
https://www.youtube.com/watch?time_continue=3&v=PtvBSovjisM&feature=emb_logo


美浜原発の事故を伝える当時のテレビ映像より 美浜で繰り返しトラブルが起こっていたことにも触れている

この時に明らかになったのは、一次系冷却水系統や蒸気発生器でトラブルが繰り返されてきたため、一次系の「安全管理」に労力が奪われ、二次系統の点検がおろそかになっていたことでした。
このため設計上は10ミリとされている配管の内側が腐食によって減肉し、事故当時は肉厚が0.4ミリにまで減ってしまっていることが見過ごされていました。しかもなんとこの配管は1976年の稼働以後、一度も交換されていませんでした。
もともとはこの配管は、関西電力の内規で4.7ミリまで減肉したら交換すべきことになっていており、1989年に検査し1991年に取り替えることになっていたのに見過ごされていたのでした。


関西電力による事故の説明図


「まさか」が現実に

この事故から15年が経った2019年8月7日の福井新聞に、関電の元幹部の男性から告白が寄せられました。それによると男性は、県内の町役場で、部下から事故発生の電話を受け、鳥肌が立ったそうです。
なぜかというとこの約一月前の大飯原発1号機の定期点検で、「予想以上の配管の減肉」箇所が見つかっていたからだと言います。
記事には「『まさか大飯のようなもの(減肉)ではないやろう』と信じたかったが、『まさか』は現実となってしまった」と書かれています。以下、記事をご紹介します。

美浜原発死傷事故「まさか」が現実 未点検配管破裂、発生から15年 
福井新聞 2019年8月7日 午前7時20分
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/909673


福井新聞より

記事によると、破裂箇所はメーカーの三菱重工が1990年に点検リストを作ったときに記載漏れして点検されませんでした。
しかし事故前年の2003年、三菱重工から点検リストを引き継いだ関電の子会社「日本アーム」(現日本ネットワークサポート)の担当者が気付き、関電にメール報告したそうです。しかし関電は点検を先送りしてしまった。
男性は、減肉現象に対して関電の「不誠実な対応」があったと指摘しています。厚みが国の定める基準を下回っていても、都合の良い評価をして使い続け、次の定検で変えることが度々あったというのです。

さらに次の点も指摘されています。被害に遭った作業員たちは、定期検査による停止期間を短縮するため、タービンが運転中で危険なのにタービン建屋の中に入り、配管の真下で作業スペースを設置していたのだそうです。
男性は、この箇所を子会社の指摘を受けて調査し、減肉の可能性が指摘されても、それだけで関電が運転を止めることはなかっただろうが、いくら何でもその下での準備作業はさせなかったとも語っています。
減肉がつかめなかっただけでなく、安全マージンを削って定期点検を短縮しようとする行為が、死亡事故に直結していたのです。


加圧水型原子炉はトラブル続き 玄海・高浜・大飯もとめるべきだ!

美浜原発の事故を振りかえって分かることは、加圧水型原子炉は蒸気発生器をはじめ、配管系で繰り返しトラブルが起こっていること。だからもう運転をやめるべきだということです。
さらに大事なポイントは、こうした危険性が金儲け優先で安全マージンを削り取る、電力会社の経営姿勢のもとでさらに大きくなっているということです。
その姿勢は、2018年3月玄海3号機再稼働時の、瓜生社長(当時)の「何があるか分からないと言っていたのが現実になってしまい残念だ」ということ言葉に、端的に表れています。

何が起こるか分からないで原発を動かしていいはずなどない!もう本当にいい加減に、モラルハザードに陥った電力会社が運転している原発を止めて欲しい!止めなくてはいけない。
みんなで声を上げ続けましょう。

続く 次回は同じく加圧水型原子炉である伊方原発で起こった「一次冷却水ポンプ故障」、および「全電源喪失」の問題を取り上げます。


本年1月25日に伊方原発で起こった全電源喪失を伝えるANN NEWS

#玄海原発 #加圧水型 #蒸気発生器 #美浜原発 #配管破断事故 #原発再稼働反対

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