昨日に続いて、今日もとても涼しい日です。
でもどんよりと曇って、今にも降りそうな外を見ていると出かける気にならず、午前中は読書をして過ごしました。
読んだのは、「父からの手紙」というミステリーです。
父からの手紙 (光文社文庫) | |
小杉 健治 | |
光文社 |
妻子を捨てて別の女性の元に走った中年男。
中年男から、長女とその弟の二人の誕生日に、必ず手紙が届きます。
曰く、遠くから君たちの幸せを願っている、といったようなもの。
長女が父の親友が経営する町工場が経営難に落ち込んでいることを知り、お金持ちの経営コンサルタントとの望まない結婚に踏み切ろうとしたり。
弟がそれに激しく反発したり。
もうひとつの物語として、警官を殺害した男の物語が語られます。
この二つの物語が、後半に至って接点を持ち、同時に進行していくという構成になっています。
ラストはあっと驚くもので、そこはミステリーとして優れていますが、かなり設定に無理があります。
親子の愛、男女の愛、家族愛、そういった様々な愛情が、ゆがんだ行動を起こさせる、切ない物語に仕上がっています。
小説だから仕方ないとはいうものの、様々な愛情を紡ぎだすには、ここまで複雑なプロットを立てる必要はないし、かえって無理目なストーリーが読者を白けさせます。
えぇ話や、と思う人も多かろうと思いますが、小説としての完成度には疑問を感じます。
そんなことを言いながら、後半に至って物語に加速度をつけて語られる様々な謎解きに魅了されたのは事実です。
好悪の分かれる小説でしょうねぇ。