玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

講義録2 生き物のつながり 1.訪花昆虫 <人工林の間伐>

2016-04-25 02:09:12 | 生きもの調べ
<人工林の間伐>
 すでに述べたようにアファンの森に隣接して暗い人工林があります。実は日本の森林の半分近くはこの人工林であり、国土面積の27%にも達する広さです。2014年にアファン財団にこの林の管理をしてほしいとの申し出があったそうです。ここはリンクの調査をしていた場所でもあり、ちょうど良い具合に前の年に下生えの記述を終えていました。そこで望月亜祐子さんにこのテーマで卒業研究をしてもらいました。
 間伐をするので、明るくなりますが、それが実際どの程度であるかを光量子測定器で測定したところ、約10倍明るくなったことが確認されました。


スギ人工林と間伐林の光量子量の比較(望月亜祐子卒業論文より)

 次に群落調査をして、同じ場所の間伐前と比較しました。興味深いことに間伐した翌年の夏にはやや増えた程度でしたが、2年目に7倍もになりました。この量は落葉樹林よりも多いほどでした。というのは、アファンの森では下刈りを続けているからです。間伐林の特徴は低木が多いことで、これはアオキ、アブラチャンなどの低木がもともとあり、それが明るくなって枝を伸ばしたからです。グラフの「オープン」というのは草地のことで、ここでは低木は少なく、草本ついやシダ(おもにワラビ)が多いという違いがありました。


スギ人工林における間伐後のバイオマスの変化と、アファンの森の2群落でのバイオマスの比較(望月亜祐子卒業論文より)

 ついで、訪花昆虫のリンクを調べました。1年目にはまったくリンクが観察されませんでしたが、2年目には8種の花が咲き、そこに5群の昆虫が訪問するのが観察されました。ただし、春から夏にかけては記録されず、夏から秋に集中していたので、さらに増加することが期待されます。またチョウやハチは限定的でした。

 
間伐林で間伐後2年目に観察された訪花昆虫と虫媒花のリンク(望月亜祐子卒業論文より)

 しかしまったくリンクがなかったところに、これだけのリンクが回復したことは驚くべきことでした。

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