玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

糞を覗く

2016-12-10 14:54:30 | ぽんぽこ便り
紹介した肉眼的にわかるものは一部で、大半は微細な動植物の破片です。それを調べて糞の組成を知るにはひと工夫が必要です。私(高槻)はあれこれ試行錯誤をしたうえで、スライドグラスの表面に1mm間隔の格子がついたものを使い、糞からでてきた破片が覆う交点の数をカウントするという方法を採用しています。
 若い頃、シカの食性を調べましたが、このとき初めて糞分析法に挑戦しました。これは日本で最初のもので、その後の私の研究を大きく進めました。私が東大にいたとき、スペインからアイムサ=カンポス・アルセイス君が留学してきました。彼はいま、マレーシアで大学の先生になり、アジアゾウ研究を精力的に進めていますが、当時、大学院に入る前に論文を書くために何かしたいというので、モンゴルの家畜とモウコガゼルという野生動物の食性比較を糞分析でしてもらうことにしました。


Ahimsa Cam@os-Arceiz @ Malaysia

彼がスペインのおばあさんと電話したとき、
「おまえ、日本みたいな遠い国にいって何をしてるんだい?」
と訊かれたので
「モウコガゼルの糞を分析しているんだ」
といったら、しばらく絶句してから、オイオイと泣き出したので、とりなすのに困ったと苦笑いしていました。それはそうでしょう。なにも極東の小国(スペインのおばあさんにとってそれはどれほど遠い国であることか)まででかけて、動物のウンコに取り組むなんて、こんな情けないことがあろうか、と思われたのは無理からぬことです。

 私がシカで初めて糞分析をしてから30年以上が経ちます。
「飽きないか」ですって?
ちっとも。ますますおもしろくなっています。
 昨年、定年退職したのですが、わが書斎で顕微鏡を覗いています。


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