『流通政策入門』より
理念としてのコンパクトシティは以上のような内容であるが、具体的にはどういった都市をイメージしたらいいのであろうか。欧米の都市のケースとしては、レディソダ(英国)、アーヘソ(ドイツ)、ポートラソドおよびシアトル(米国)、ピルバオ(スペイソ)、ストラスブール(フランス)などがよくとりあげられている。これに対して、日本では「高齢者が歩いて暮らせるコンパクトシティ」を標榜する青森市が、先行モデルといわれている。
① 青森市の場合
青森市では、JR青森駅を中心とした徒歩約20分圏内に、商業施設やマソショソ、県庁等が集積している。その中心にあるのが生鮮市場、ファッショソ専門店、市立図書館などが入居する駅前の9階建て再開発ビル「アウガ」である(2001年1月開業)。中心市街地の商店街では「青森市街づくりあきんど隊」が組織され、イベント等が活発に行われている。さらに、その界隈にはクリェックや訪問介護ステーショソ等を併設した高齢者向けマンションをはじめとして、分譲マンションが建設中も含めて多く立地している。
こうした都市機能の集約化を可能にしたのが, 1999年の都市計画マスタープランで、市内を3ゾーンに分け、郊外開発を抑制した(店舗面積3,000㎡超の商業施設が立地できるのは市中心部の約3,000haのみ)。その最大の理由は豪雪にあり、除排雪が必要な道路の延長距離は現状で1,150km,その経費は年10億~30億円に達し、郊外化が進めば負担は一層膨らむ。これこそまさにスプロールの社会的費用であり、これを削減することを目的にコソパクトシティヘと大きく舵が切られたわけである。
ただし、2003年にアウガから約500m離れた地元百貨店が閉店し、跡地周辺では現在、空き店舗が目立っなど、順風満帆な部分ばかりではなく、課題も少なくないともいわれている。
② その他
また、金沢市における「歩けるまちづくり条例」(2003年4月施行)に基づく取り組み(中心部の竪町商店街で駐車場確保数増大とセットに全日歩行者天国を実施など)や、山口市における中心部の定住人口増による公共投資の効率化を図るための取り組み(市の委託を受けたNPO法人が中心部の空き家の持ち主に改修や賃貸を働きかける一方、郊外の住民に移住を呼びかける)をはじめとして、各地の自治体で動きが積極化しつっある。
だが、コンパクトシティの動きに「逆行」するような事例もある。例えば、群馬県太田市において、郊外の田んぼを市街化区域に用途変更して大型ショッピングセンター(SC)を誘致したケースをあげることができる(2003年12月開業)。当市においても、中心商店街に配慮して太田駅前に市営住宅を整備するなどの対策がじっはとられたが、商店街の構成がもともと顧客ニーズに合っておらず、連帯もしていないこと等から、対策の効果はあがらなかったという(『週刊東洋経済』2005年9月3日、「日経MJ」2006年1月4日による)。
こうしたケースもあるものの、コンパクトシティの取り組みは、それが都市中心部の活性化にとって有効性が高いかどうかという問題以前に、自治体の財政難への対応という点で緊急性や切実性が高いことから、3法見直しが実現することによって、さらに多くの自治体に普及していくものと考えられる。
ただし、首都圏に代表される大都市が連たんする超大都市圏においても、地方の中核都市クラスや農村部の小都市においても、まちづくりの理念はコソパクトシティ一本でいいのか、都市規模等に応じた階層的な考え方で補完する必要はないのか、といった諸点について、今後、具体論レベルで検討が必要と考える。
理念としてのコンパクトシティは以上のような内容であるが、具体的にはどういった都市をイメージしたらいいのであろうか。欧米の都市のケースとしては、レディソダ(英国)、アーヘソ(ドイツ)、ポートラソドおよびシアトル(米国)、ピルバオ(スペイソ)、ストラスブール(フランス)などがよくとりあげられている。これに対して、日本では「高齢者が歩いて暮らせるコンパクトシティ」を標榜する青森市が、先行モデルといわれている。
① 青森市の場合
青森市では、JR青森駅を中心とした徒歩約20分圏内に、商業施設やマソショソ、県庁等が集積している。その中心にあるのが生鮮市場、ファッショソ専門店、市立図書館などが入居する駅前の9階建て再開発ビル「アウガ」である(2001年1月開業)。中心市街地の商店街では「青森市街づくりあきんど隊」が組織され、イベント等が活発に行われている。さらに、その界隈にはクリェックや訪問介護ステーショソ等を併設した高齢者向けマンションをはじめとして、分譲マンションが建設中も含めて多く立地している。
こうした都市機能の集約化を可能にしたのが, 1999年の都市計画マスタープランで、市内を3ゾーンに分け、郊外開発を抑制した(店舗面積3,000㎡超の商業施設が立地できるのは市中心部の約3,000haのみ)。その最大の理由は豪雪にあり、除排雪が必要な道路の延長距離は現状で1,150km,その経費は年10億~30億円に達し、郊外化が進めば負担は一層膨らむ。これこそまさにスプロールの社会的費用であり、これを削減することを目的にコソパクトシティヘと大きく舵が切られたわけである。
ただし、2003年にアウガから約500m離れた地元百貨店が閉店し、跡地周辺では現在、空き店舗が目立っなど、順風満帆な部分ばかりではなく、課題も少なくないともいわれている。
② その他
また、金沢市における「歩けるまちづくり条例」(2003年4月施行)に基づく取り組み(中心部の竪町商店街で駐車場確保数増大とセットに全日歩行者天国を実施など)や、山口市における中心部の定住人口増による公共投資の効率化を図るための取り組み(市の委託を受けたNPO法人が中心部の空き家の持ち主に改修や賃貸を働きかける一方、郊外の住民に移住を呼びかける)をはじめとして、各地の自治体で動きが積極化しつっある。
だが、コンパクトシティの動きに「逆行」するような事例もある。例えば、群馬県太田市において、郊外の田んぼを市街化区域に用途変更して大型ショッピングセンター(SC)を誘致したケースをあげることができる(2003年12月開業)。当市においても、中心商店街に配慮して太田駅前に市営住宅を整備するなどの対策がじっはとられたが、商店街の構成がもともと顧客ニーズに合っておらず、連帯もしていないこと等から、対策の効果はあがらなかったという(『週刊東洋経済』2005年9月3日、「日経MJ」2006年1月4日による)。
こうしたケースもあるものの、コンパクトシティの取り組みは、それが都市中心部の活性化にとって有効性が高いかどうかという問題以前に、自治体の財政難への対応という点で緊急性や切実性が高いことから、3法見直しが実現することによって、さらに多くの自治体に普及していくものと考えられる。
ただし、首都圏に代表される大都市が連たんする超大都市圏においても、地方の中核都市クラスや農村部の小都市においても、まちづくりの理念はコソパクトシティ一本でいいのか、都市規模等に応じた階層的な考え方で補完する必要はないのか、といった諸点について、今後、具体論レベルで検討が必要と考える。