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未来の公共図書館像、そのモデル

ドイツ図書館入門』より

果たして未来の図書館は、とくに未来の公共図書館は、あまりにもとっぴな発想に陥ることなくイメージするならば、どのような姿をしているのだろうか。図書館支援センターに勤める図書館員クラウス・ダームは最近、現在と未来を現実的に結びつける、考えるに値する4つのモデルを示した。

快適な図書館

 図書貸出数に比べてはるかに多い利用者数が示すように、誰もが利用できる社会的コミュニケーションのための空間に対する需要は、明らかに高い。今日でもすでに、現代の図書館からカフェテリアを排除して考えることはできない。英米系の図書館には、いわゆるリビングルームのような気持ちのよい家具の調えられた空間が設置されているが、ここでは利用者は、会話へ、インターネットサーフィンヘ、カフエタイムヘ、あるいはリラックスして読書へと没頭することができる。内装は、柔軟性に富む、「機能重視でない」空間とならなければならない。さらに 開館時間を夜や週末にまで延長することは自明のこととなろう。未来の図書館は、インスピレーションを共有するための場、雰囲気がよくスタイリッシュな場であり、そこでは人々が好んで時間を過ごし、誰に強制されることもなく情報検索の世界、本その他の現代のメディアの世界と出会うのである。

ネットワーク図書館

 時代に即した図書館は、すでに久しく、バリアフリーの、またすべての住民の層に利用できる情報の仲介者として、あらゆる教育レペルに対するサービスを行っている。どんな図書館もすべてを備えるわけにはいかないので、未来の公共図書館は、図書館ネットワークの一員となり、何倍もの文献やメディアヘのアクセスを可能にする必要がある。利用者がサービスを自宅から、学校からあるいは職場から利用できる場合には、共同の目録ネットワークはとりわけ有効である。今後は公共図書館と学術図書館の混合ネットワークによる図書館サービスに、より一一層の一体性が求められる。これが実現すれば、利用者は図書館利用カードのみでネットワークに属するどの図書館をも利用できるようになり、インターネットで申し込んだどのようなメディアも、中央図書館から借りたり、あるいは追加料金を払って家に送ってもらったりする、そんなサービスが組織的に保証されることになる。

コンビネーション図書館

 今日、異なった団体に運営された機能の異なる図書館が/協力関係を築くことなく互いに競い合っていることがしばしばある。経済状況の厳しい時代にあっては、投資を評価するさいに シナジーの可能性を検証することは重要である。小さい図書館の建物、空間、そして組織を融合し、大きな図書館へと組み替えることは、未来に開かれた選択肢の一つである。いくつもの文化・教育施設が一つの町にあるようなところでは、それらを空間的に統合することが検証される。この意味においては、相応の空間が提供されるのであれば、郷土博物館、学校図書館メディアセンター、資料館、市民大学、美術館そして図書館は、より大きな成果を出すことのできる一つの情報・メディアセンターとして合併されることもあるかもしれない。

市立図書館エージェンシー

 大都市あるいは中規模の都市でしばしば見かける、図書館の設置母体の多様性機能の多様性は、それらを空間的に統合することがさまざまな理由から実現不可能であったり、あまり意味がないと考えられたりするような場合には、別の方法で、つまりネットワーク化された図書館としてさらなる発展を促すことが可能である。ここでは特に たいていのところまだ小さな孤島のように互いにばらばらに存在している学校図書館を念頭に置いている。未来の市立図書館は、このような場合、これらを統合し、調整する図書館エージェンシーになりうる。中心には市内のすべての学校のための学校図書館オフィスを設立する。これは学校図書館員に教育と助言を与え、書籍その他のメディアの購入や、専門に見合った蔵書の構築と整理を助け、スタッフの勤務時間を調整し業務指標を作成する。

 さて、それ以上には何かあるだろうか? 図書館のトレンドはどこへ向かうのだろうか? いずれにしても、公共図書館は多機能の図書館へと変貌するだろう。つまり、文献の仲介という伝統的な機能に加えて、どのような情報源に対してもより幅広く、深く情報をインデックス化し、利用可能にしていく機能が加わるのである。さらに インターネットという情報媒体の導入とともに図書館にはすでに「情報ネットワークのナビゲーター」という新しい役割が加わり、この役割は拡大されてきている。また3つ目の役割として、イベントの開催や文化事業がある。というのも、州のレペルではしばしば、図書館は学校外で常時活動する唯一の教育・文化機関であるからである。図書館はますますさまざまな協調関係を築いていくことになる。ますますさまざまな機関と協力して仕事をするようになり、ますます多くの公共図書館と学校図書館、それに学校情報館が連携し、統合されていくことになる。これによって図書館は高いシナジー効果と多様な利用を実現するのである。市民大学(2.1.5参照)や町立資料館、博物館との緊密な連携、そしてさらには労働局やハローワーク、観光案内所との連携が期待されており、またこれらは間違いなく意味のあるものとなるだろう。適応性、連携能力、新しい図書館モデルやプロジェクトヘの柔軟な姿勢が、図書館を率いる者の重要な能力となるのである。
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