光山鉄道管理局・アーカイブス

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Nゲージ「夢屋のEF63」に驚く・1

2015-10-03 05:19:39 | 車両・電気機関車
 今回は先日入手した「夢屋のEF63」から
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 これはTOMIXが碓氷峠ブームにあやかってEF63を製品化する直前位のタイミングでリリースしたブラスキットの機関車です。
 聞く所ではNゲージのキットだからという妥協なしに16番のバラキットそのまんまの内容で上級モデラー向けとして出したモデルだそうです。

 ですから完成作例自体実物を殆ど目にしませんでしたし、ましてや「塗装済み」の完成品などを実際に手にするのも今回が初めてです。
 (16番モデラーの多くは塗装しない真鍮地肌の状態を持って理想とするケースが多い)

 これは私見ですがこのEF63、キットとしての数は多いかもしれませんが、多くは未組み立てで死蔵されている気がしますし、作られても途中で放置されている物もこれまた多そうな気もします。
 更に「完成させても塗装しないケース」も計算に入れると塗装まで持って行った組み立て品は本当に少ないと思います。
 事によるとこれを入れても両手の指の数で足りるのではないかと(まさかとは思いますが)

 前述の通りこのキットが出てからTOMIXやKATOからプラ量産品のモデルがリリースされていますから以後は「EF63だから」という理由から購入したユーザーは殆ど無かったと思います。
 それだけにモデルとしてはかなり貴重な代物の様な気がします。
 
 私自身最初このモデルを見た時に「ちょっと変な質感のTOMIX製品」とまず思った位です。

 このモデルの驚くべき所はそこまでにとどまりません。
 16番バラキットでは当たり前の「動力もゼロから作る」という構成上、動力自体がNゲージのノリとは異なるのです。
 車体を裏返して見た印象は40年前の16番機関車モデルそのまんま。
 大きさを間違えたのではないかとすら思える位です。

 ただ、そういう構造のせいもあってか走行性は全く褒められた物ではありませんでした。
 通電して上から押さえればどうにか走行するのですが全体に粘着力が不足して空転しやすく、レールのちょっとした凹凸にもかなり神経質。
 これを作ったユーザーはモデラーとしてはかなりのレベルの方と推察されるのですが、それでも安定した性能の動力系をゼロから作るというのが如何に大変かというのを窺い知ることができます。

 Nゲージのマッスでこれだけ細かいパーツをハンダ付けで取り付けるのはかなりの手間と根性を要すると思いますが塗装前にそれらの殆どを済ませていただけでも私などからすれば称賛ものです。

 ですがそのせいか、パッケージの箱の底に台車パーツを中心にかなりのパーツが外れておっこっていたのにも驚きました。
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 前述の様にこのEF63、足回りのそれを中心にかなりのパーツの欠落がありそれをどうにかしてつけ直す事が課題でした。
 本来ならば塗装を落としたうえでハンダ付けをやり直すのが正道でしょうが、ボディをばらしてから組み直すのに自信が持てなかったのでやむを得ず今回は瞬着で対応する事にしました。

 欠落パーツは台車に貼り付けのブレーキシリンダや床下のエアータンク類、それと運転台からのステップ等が主です。
 ハンダと違って瞬着は貼り付けてから固着までの時間が掛かる事、一定の圧を掛けないと付かない事がある等の特徴があるので殆ど1時間に一工程みたいなノリです。

 既に出来上がった製品ですので組み立て説明書など付いている訳もなくどこにどのパーツをつけるかが悩みでした。


 が、この点では意外な参考資料が。
 以前中古を入線させていたKATOとTOMIXのEF63。この2両を裏返して各パーツの位置を確認するという荒業でどうにか取り付けました。

 ただ、ここで問題となったのが乗務員用ステップの存在です。
 KATOやTOMIXでは走行性への配慮からステップは台車にマウントしているのですが今回のモデルのそれはボディマウント。
 ですがこれをやると台車が殆ど首を振らなくなってしまうのです。
 (ご丁寧にもステップの下はこれ又後付けのブレーキシリンダが付いており相互に干渉すると台車はますます首を振らない。但し、正式にはステップは他社製品同様に台車マウントの様なので前ユーザーの製作時のミスとも考えられます)

 とりあえず走行性優先として今回はステップの取り付けは見送りました。それでもシャシにハンダ付けされているのが二組残っていますが。
 その他床下に配置されていると思われるエアタンク類は走行に支障のない範囲での取り付け(実はこれの一部にも台車に干渉する物がある)を行ないました。
 実はここまでやっても外見上それほど差はなかったりするのですが。

 固着が済んだ時点で試運転ですが、予想通りと言いますか、直線ではそこそこ走るのですがカーブに掛かると立ち往生。
 それも354R程度の径でも停まってしまいます。予想通りエアタンクとステップの干渉がもろに影響しました。
 上下方向への台車の遊びが小さいせいか勾配の掛かり口での粘着性もいまひとつ。
 但しこれはこの個体だけの問題である可能性も否定できません。

 実車に付いているパーツは可能な限り実車と同じように付けるというのがこのモデルのポリシーらしいのでその点では当然かもしれないのですが。
 今回は中古モデルを比較的安価に入手している上に走行性で問題のないKATO・TOMIXのEF63が別にあるのでこの程度のストレスで済んでいますが、もしNゲージのEF63のモデルがこれしかないとしたらレイアウト派にとってはストレスどころの騒ぎではないでしょう。
 しかもEF63は原則として2両ひと組での運用ですから・・・

 走行性については随分辛い評価になってしまいましたが、これはあくまで運転派が中古モデルを手にしたという条件での評価ですのでその辺は勘弁して下さい。

 
 車体の造形は上述の様にブラス特有の質感に加えて16番的なディテーリングは施されているのでKATOやTOMIXとは異質な存在感があります。
 ここだけでも個人的には十分惚れこめる中身と思いますし、もし今後レイアウト上でこれを走らせるにしてもこの点は生かしたい所です。
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 このEF63を単なる機関区の置き物とみなし他社の同形機と並べたらどう見えるか。
 機関区風セクションにKATO、TOMIXと共に夢屋の63を並べて違和感の有無を見て見ます。

 カラーリングが3機とも同じ青なのでぱっと見思ったほどの違和感はありません。

 今回並べて見てまず驚いたのは「KATOとTOMIXの見分けのつかなさ」プロトタイプが殆ど同じとはいえ、このふたつに相違点を求めるのは殆ど「間違い探し」のノリになります。
 言い換えればこの2社はほぼ同じ印象把握のセンスでモデル化している事になりますし、その意味ではクローン化するのは当然かもしれません。
 ただ、どちらも良く出来ている物の可愛げはありませんでした(笑)

 そして夢屋のキットメイク品。
 前面窓周りの印象がEF63というよりもEF64に見えてしまうのはパーツの造形と取り付けの問題と思われますが、あのサッシ周りはEF63ならではの個性を感じるポイントでもあったのでその点では残念でした。
 ですがそれを除けばKATOやTOMIXとは異なる重厚な存在感を感じさせてくれるのがまず好印象です。
 ボディ素材にブラスを使っている事で塗装を施してもその質感は十分感じられます。

 やはりブラス主体の細密モデル。全ての手すりを別パーツ化して植え込んだりランボードに足が付いているなど16番をNサイズに縮小した印象そのままです。

 台車も他社のプラに対してドロップ製の台車枠を使っているらしくこれも独特の質感には貢献しています。
 但しプラほどのシャープさはありません。

 こうして並べてみると夢屋の63は全体にカツミ辺りの16番ブラスモデルをそっくりNゲージのサイズに縮小したような印象です。16番モデルに慣れ親しんでいる人が観れば独特の懐かしさと憎めないキャラクターは感じるかもしれません。
 これで走りがよければ後発のKATO・TOMIXが出た後でもプラ成形モデルへのアンチテーゼとしての存在感は十分に出せたと思います。

 ただ、現状としては機関区の置物として、或いはごくたまに直線上を行ったり来たりの単機回送を行なうような用途にはこのEF63は十分以上に使えるのは間違いありません。
 ですがそれ以上を期待するのは難しいというのが正直なところです。

 とはいえ、私個人はこのモデルそのものには好感を持っているのでこれからも大事にしたいと思っています。
 (第一、悪印象ばかりだったら3回も書きません汗)

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 夢屋のEF63のはなし、もう一回だけ続けます。
 というのも先日古本屋でRailMagazineの126号が入手できたからですが。

 この号は時代的にかの「鉄道模型考古学N」が連載されていた頃の奴なのですが、著者の松本吉之氏が「夢屋のEF63のキットインプレッション」を掲載していたものです。

 RMのバックナンバーを置いている古本屋は多いのですが、この号だけどういうわけかどこの店に行っても出物が無く先日になってようやく見つけた次第です。

 そんな訳でこの記事も最初は興味本位で読み始めたのですが、驚いた。
 記事自体は見開き2ページに過ぎないのですがその70パーセントまでが活字、しかも字そのものが小さいので目が疲れます(笑)
 おまけに内容が異様なほど濃密。
 恐らくTMSの製作記事なら優に数ページ分の情報量のある文章と思います。

 当時、この記事を基にしてキットに挑んだモデラーも多かったのではないかと思いますが、製作上の注意点が具体的かつ的確なのでかなり役に立ったのではないでしょうか。

 手元のEF63を見ていても、これがかなり手間のかかったモデルである事は感じられるのですがこの記事を読むとキットメイクとはいえきちんと組むには相当の手間と要領を必要とする事が伝わってきます。
 私が作った訳ではないので「他人の褌で相撲を取る」内容になってしまいますがこのインプレッションと手持ちの63を比べて見て少し考察めいた事を書こうと思います。

 この記事に書かれている様にこのEF63の最初の難物は台車周りでプラ成形品みたいな一発成型ではなくエアタンクやらブレーキシリンダが別パーツ化されそれらを一々ハンダ付けしています。
 しかも一部はパーツを整形しなければ他のパーツに付かなかったり不自然な当たりが付いてしまうなどの弊害があって一筋縄ではいかないようです。

 動力も当然の様にゼロから組み立て、配線もNとしては珍しいリード線をハンダ付けするものです。
 こちらの63も走る事は走りますがちょっとしたカーブではブレーキシリンダがステップに当たりきちんと曲がらないのは既述の通りです。

 ところでこのモデルを手に入れた時から気になっていたのですが前面サッシの位置が実車の様に斜めになっておらずキハ82みたいな垂直の取り付けになっているのが少し気になっていたのはこれまでも触れていた通りです。
 最初はユーザーが実物を気にしないでこうしていたのかと思っていましたが、今回の記事によるとこれは元々のキットの仕様がそうなっていたそうで、(上と下の窓の出っ張りが同じレベルな為)実車通りにするには事前に前面パーツの修正が必須、しかもそれが前面サッシの修正を含めてかなり注意を要するのだそうです。
 これ位細密なモデルにしては少し困る仕様ではあります。
 (これほどのモデルに挑むようなモデラーは「ここまでやったから量産品よりも実物に近い」事を自慢したい筈ですから)

 又ボディを含めた各パーツはNとは思えないほどに繊細な構造と材質のために、ちょっと気を抜くとすぐにパーツの損傷につながりやすいそうで更に手強さを増しています。

 ですがそれを抜きにしてもこのEF63がNゲージとしては現在でも怪物級のモデルなのは間違いありません。

 この作例記事のモデルですら未塗装なのですから(前回も書きましたが)塗装まで済ませたモデルと言うのは更に少なかったのではないかと思われます。それを考えると技量はともかくとしてもこれに挑んで一応形にしているだけでもこれを作った方の熱意と粘りは大したものだと思います。


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