新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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「マスクには予防効果あり」エビデンスへの一歩

2009-02-22 10:33:28 | インフルエンザ:基礎知識/新知見

マスクは何のためにするの?

従来、この問いに対する回答は「マスクには、インフルを予防する効果のエビデンスはありません。しかし、自分が罹っているとき、他人にうつさないためにするのです。咳エチケットです」でした。
ただ、これだと今ひとつモチベーションがあがらない人もいるでしょう。自分のためにならんなら、赤の他人のためなら・・・と。

でも、「自分が感染しないため。予防のため」効果がはっきりある、というエビデンス確立に大きく動き出しています。

*豪New South Wales大学と英Medical Research Council Centre for Outbreak Analysis and Modelling at Imperial College London の発表(Emerging Infectious Diseases)
呼吸器感染症に罹患した子供がいる家庭をサンプルに調査。マスクをした大人は、マスクをしていない大人に比べて、子供からうつされてしまうリスクが4分の1に減少した
*サンプル数は143家庭280人。
*マスクを指示どおり絶えず装着し続けたのは半数以下であったが、実際パンデミックになったらその率はあがるであろう。
*パンデミック対策としてマスク備蓄をすすめる国は多いが、その予防効果のエビデンスはこれまで未確立だった。しかし、今回のデータは予防効果のエビデンス確立への第一歩になる。
*今回のデータで、感染した子供がいる家庭で、親がマスクをして看護すれば、感染をうつされてしまうリスクを60~80%減らすことができることを証明できた。
*医療現場など異なる状況でデータを重ねること、マスクをきちんとしない要因にはどんな事があるのか検討することなどが次のステップとなる。

一見地味ながら画期的なことです。これから、自信をもって「マスクは感染予防に有効です。自分の身を守るためにマスクをしましょう」と大きな声で言えるようになりつつあります。
なり”つつある”と書きましたが、心の中では”なった”つもりで良いと思います。何せ、医学の世界(に限らず)、論文が出て認められるのには本当に時間がかかるのです。
研究費申請→審査→研究費獲得→実験→データ→論文執筆。
そしてこの先に無為に時間が過ぎてゆく。
論文投稿→査読→修正→査読→掲載決定→掲載待ち→掲載→エビデンスとして認知。まあ、管理人もこの”無為な時間経過”に文句を言わず黙々と従い・・でやって来て大学の教師やってられるわけなので、今さら批判する気力はありませんが、まあ、そういうことです。
 だから、エビデンス確立!まで待つことなく、今から「マスクが自分の身を守ってくれる」つもりで啓発してゆかれたら良いと思います。

ソースは2月22日付virtualmedicalcentre.com↓
http://www.virtualmedicalcentre.com/news.asp?artid=13247&title=A-face-mask-may-prevent-you-getting-flu,-but-only-if-you-wear-it&odr=&page=
A face mask may prevent you getting flu, but only if you wear it

22 Feb 2009

コメント (4)    この記事についてブログを書く
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4 コメント

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Unknown (たっちゃん)
2009-02-22 12:15:41
今季の場合、インフルエンザワクチンよりマスクの方が予防効果はあると実感しています。(笑)マスクに限らず、実証されてデーターが揃い、認められないと何も進まないのは空しいですね。
Unknown (マスク)
2009-02-23 23:06:13
一つだけの論文で根拠があるといえるのですか?まだそうとはいえないと思います。
マスクは追加的な手段であり、マスクの過信が問題と思います。まずは感染者に近づかないということが最も重要と思いますがどうでしょうか?
ありがとうございます (管理人)
2009-02-24 09:36:16
たっちゃんさん、いつもコメントありがとうございます。
エビデンスが無いと腰が動かないというのは困りものですが、マスクについては必ずしもそうとも限りません。 人々が薬局に行ってマスクを買い、しっかり装着するという行動をとる人が一人でも増えれば、十分に進歩かと思います。
あっ、舌足らずでしたね (管理人)
2009-02-24 09:51:34
マスクさんありがとうございます。
舌足らずを反省・・
「一つだけの論文で根拠があるといえるのですか?まだそうとはいえないと思います」はい、その通りです。
この記事の真意は、「根拠があると言える状態」に至る「一里塚を通過」したということにあります。さらにもう少し深読みをすると、この研究者は「次のステップとして医療現場とか~」次の論文のアイデアをマスコミにペラペラ喋っています。ということは、次の準備整っているか、データもそこそこ集まっているか、今から思い立った人が追い付けない所はいるのかなと。次のステップの論文は完成近しor既に書き上げ査読中?
さらに、同様のことを考え競争中の人もいるでしょうから、実質的にいくつも論文が書き上がっていることが考えられ、査読プロセス(投稿→査読→修正→査読→編集委員会開催待ち→掲載決定→掲載順番待ち→掲載)で1年以上空費(私はそれ批判できる立場になく)するのがザラな現状考えれば、そろそろその気になってマスクちゃんと装着しても良いのでは・・・そんな事を考えています。

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