新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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押谷講演@渡航医学会

2009-07-19 08:49:09 | インフルエンザ:基礎知識/新知見

 学会初日、座長を拝命したシンポジウムも好評裏に終了、上海・北京・ダルエス~集まり、さらに南極基地医療の発表までいただいたシンポジスト先生方に感謝、感謝です。

さて、シンポジウムに続く押谷教授講演、興味深いところを紹介します。前日バンコックから帰国されたばかりの同教授のお話はいつもながらエキサイティング。
以下、要旨です。

  まずは、「今回の新型は季節性とは違う。かなりキビシイことになると思います」としっかり“つかみ”を押さえて始まりました。

  • 現在のウイルス、若い人に免疫ないので感染拡大。WHOは深刻に受け止めている。現在流行拡大中は豪・NZのほか、タイが相当地方まで拡大中(管理人注:押谷教授は前日まで会議にてタイ滞在していた)。
  • 米国で確認されているインフルエンザはほとんどA/H1N1。今、サマーキャンプでの拡大が問題になっている。
  • UKでは毎日10万人の感染者が出るようになると保健大臣が警告。
  • 豪では真っ先に寒くなるビクトリア州から始まり、全州で拡大。
  • アジアではタイ>フィリピン>インドネシア。深刻なバンコックでは学校閉鎖。米国死亡者数推移は右肩あがり。
  • 感染者が多いのが25~64歳。30~40代で合併症などリスク無い死亡例。 2歳以下の突然死例。新型インフルエンザ脳症?豪 6000人亡くなるという試算も。重症化例 でウイルス性肺炎+ARDSのパターン多い
  • (WHOのフェーズ6引上げの時、今回のはmildじゃなくてmoderateだと表明したが)Moderateの意味とは、死亡率2%超えるスペインインフルエンザほどではないが、しかし、0.05%の季節性インフルよりは高いという意味。
  • 今回の神戸・大阪の例は第一波といえるのか? 3桁台の感染者数は(第○波と言えるようなものじゃない”小流行”ではないか?米国のようなケースでは第一波といえるが。。
  • 疫学リンクのわからない患者が出ているのは問題。
  • 日本の予測。感染者数3200万人、入院23万人、死亡5万人。日本が有利な条件は、抗ウイルス薬備蓄、学校閉鎖に社会的理解(米国ではPTAがヤイヤイ言ったので学校閉鎖やめざるを得なかった由)
  • 日本の懸念は、限られたICUベッド、人工呼吸器の不足
  • 渡航歴のあるケース、その国名。 ハワイ>米>フィリピン>豪>タイ>グアム>>>NZ>インドネシア>カナダ>中国>UK・・・・ 数は少ないながらラオス・クロアチアといった国々からも。
  • 予想されるシナリオ ①このまま大規模なパンデミックになってゆく ②北半球今回は小流行(数千万というケタではないという意味。数十万単位の流行ならある)。③感染の流入続く(南半球での拡大、40年前と移動パターン異なる、北半球も冬前に相当の感染者(ワクチン間に合わない)
  • 私見ではタミフル予防内服には否定的(この先1~2年続く。2年間のむのですか?と)、スタンバイで(症状出たら服用する)ということで良いのでは?
  • 水際作戦の評価。 これを今までやり続けているのが中国。中国では死者は(感電死は別として)出ず重症者少数。水際作戦に努めた日本でも死者ゼロ。重症者ゼロ。米国がもう少し違う動きをしていたら、現在の状況は違っていたのではと思う。麻疹が日本から入ってくるのには色々言う米国が何もしないで輸出しているのはいかがなものかと思う。(そうだっ!と心の中で喝采する管理人。。。)
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