徘徊オヤジの日々是ざれごと

還暦退職者が、現在の生活と心情、そしてちょっとした趣味について綴ります。

あ ざ・・・11

2018-01-30 07:31:42 | ・あ ざ
「話はこれでおしまいじゃよ。あれからもう何十年もたつ。みんなが貧しかったころのことじゃよ」

 ぼくも弟もだまったままだ。

(そんなことが本当にあるわけない)

 とぼくは半信半疑だった。

「おばあちゃん、その話、本当なの?」

「ああ、本当じゃよ」

「うそだよ。同じあざができるなんて、そんな非科学的なことが本当にあるわけないよ」

「そう思うかね」

(あ ざ…12)に続く…

あ ざ・・・10

2018-01-25 07:38:35 | ・あ ざ
 もともとそのあざは、少し前に枝にはじかれてできた小さな傷だったのじゃが、どんどん大きくなって、ついにはほっぺたから胸にまで広がっていった。

 加代は花枝に罪を着せたせいだと思って、おそろしさで学校へも行けんようになり、一日中神さまに手を合わせていた。

(花枝にあんなことをしたむくいです。加代は悪い子です。お許しください)

 心配した母さんにつれられて街の病院でみてもらっても、うら山の小さなほこらに何度も足を運んでも、あざはいっこうによくならなかった。

 加代はそれまで母さんに、事件のことはいっさいないしょにしていたのじゃが、とうとうすべてを話した。

 加代は両親にこっぴどくしかられた。そして、花枝のたましいをなぐませねばならないとして、街の大きな神社でていねいなお払いを受け、それからようやくあざは少しずつ小さくなっていったのじゃ。

(あ ざ…11)に続く…

あ ざ・・・9

2018-01-21 09:18:20 | ・あ ざ
 おばあちゃんはここでちょっと話をとめた。ぼくも弟もいつの間にかお話に引きずりこまれていた。

(ほかの人と同じあざができるなんて、そんなことがあるもんか)

 ぼくはこう思いながらも、知らず知らずのうちに手で自分の首をさわって、あざができていないか確かめていた。

「それからどうなったの?」

 二人とも身を乗り出してたずねた。

(あ ざ…10)に続く…

北海道の里山をあるく・・・159

2018-01-17 07:18:36 | 北海道の里山をあるく
札幌市・山口運河

 山口運河は、物資輸送のために掘削された花畔(ばんなぐろ)・銭函間運河の一部で、明治27年着工・30年に完成したものです。この地域の開拓者が山口県出身だったのでこう名づけられ、現在は散策路として整備され、毎年地域住民による「山口運河まつり」が開かれているそうです。

 この日はJRほしみ駅に降りたち、星観(ほしみ)緑地を通り、山口運河に沿って歩き、星置駅にいたりました。星観緑地はなかなか広くて気持ちのよいところで、3方向に分かれた星流橋が印象的でした。また山口運河は雪に被われて水の流れはほとんど見えませんでした。

 JR星置駅は崖の途中にあって、北口は階段2階分下、南口は2階分上にある変わったつくりだといい、たしかにそうなっていました。


星流橋


山口運河


←昭文社発行1万分の1札幌便利情報地図より

←このあたり

あ ざ・・・8

2018-01-13 09:33:17 | ・あ ざ
 そうしてみんなが花枝のことも事件のことも忘れかけたころ、花枝が病気で亡くなったといううわさが聞こえてきた。

 加代は忘れていた、というよりつとめて忘れようとしていたあのいやな思い出がよみがえってきた。そして毎日思いなやんでいた。

(花枝は罪を着せられたまま死んでいった。あたいは何てことをしたのだろう)

 そんなある日、加代はかがみで首すじが赤くなっているのを見つけた。その赤みは日ごとに大きくくっきりしてきて、大きなえりのついた服でもかくせないくらいになった。

 そして加代は気づいたのじゃ。形も色合いも同じ左の首すじにあることも、花枝の首にあったあざにそっくりだということに。

(あ ざ…9)に続く…