博物館学芸員
近頃は市町村や新聞社等が主催して、特に中高年者を対象に、生涯教育とかカルチャースクールと称してさまざまな講座が設けられている。また各地にいろんな博物館等があって、そこでも同様の活動が行われている。
私も退職してから何度かこうした講座や活動に参加させてもらっている。私がひかれるは主に自然に関する活動で、室内で講義形式のこともあれば、バスで現地に出向くこともある。参加した会はどこも盛況で、多くの熱心な中高年であふれていた。
どの活動に参加しても感じるのは、一つは講師やガイドの方のリーダーシップのあり方である。だれもが快活で、適度にユーモアをまじえ、参加者をあきさせない話術をそなえていて、大勢のわがままな中高年を適切に導いていて、まさしくエンターテイナーそのものだった。
そしてもう一つ感心したのはその博識さである。細かなことまでていねいに説明してくれ、またわれわれの気まぐれな質問――多くはその分野に関する質問であるが、飛躍した質問にも――適確に答えてくれていた。
おそらく彼らは、子どものころから興味を持っていたからそうした仕事につき、またあらかじめ現地を下見したうえで本番に臨んでいるのであろうが、特別に人を導く技術を教えられたとは思えない。たぶん長年の経験と努力のたまものなのだろう。
若いころ私は、博物館学芸員という仕事があることを知り「自分の好きなことを仕事にできていいな」と思ったこともあるが、「どんな仕事も楽しいだけの仕事などない。どの仕事にも人知れぬ苦労があるのだ」ということを、今さらながら痛感している。