徘徊オヤジの日々是ざれごと

還暦退職者が、現在の生活と心情、そしてちょっとした趣味について綴ります。

あらしの夜明け・・・65(第5章・・・2)

2015-04-30 06:21:39 |   (第5章 たたかい)
「スク殿、浮かれているときではありませぬ。決してあなどってはなりませぬ」

 モノブは何度も気をしきしめるようにいうのだが、

「わかっている。モノブ殿は心配のしすぎだ」

「いいすぎると、若い者は心もとなくなりましょう。それともやっぱりモノブ殿はおくびょう風に吹かれましたかな」

 などと皮肉をいわれるのだった。前夜スクは、前祝に酒をのもう、といいだす始末で、これにはさすがにモノブも腹にすえかねてやめさせた。

 そしてついにいくさの日になった。シカの皮がはられた太鼓が朝から打ちならされている。人々の気持ちはいやが応でも高まっていく。

(あらしの夜明け…66)に続く…

北海道の里山をあるく・・・35

2015-04-26 04:26:50 | 北海道の里山をあるく
石狩市・石狩浜

 石狩市弁天町はアイヌの人々との交易のために道央でも最も古くに開発された地域です。市街の中心部にある石狩弁天社が創建されたのは何と1694年といいます。

 現在ここは石狩海岸として保護されており、古い街並みが整備され、新しい施設も建てられていて、海浜植物保護センターと砂丘の丘資料館に立ち寄ってきました。

 市街地の先には灯台があって、おそらく昔はここが砂嘴の先端だったのでしょうが、現在の砂嘴の先端はさらに1.5kmほど先に伸びています。

 この日は晴天で暖かく、たぶんボランティアの人でしょう、たくさんの人が集まって周辺を整備していました。自転車で訪れている人もいて、「札幌から1時間ちょっとかかった」といっていました。


石狩灯台


灯台付近のはまなすの丘の風景(遠方の建物は北石狩衛生センター)


砂嘴の先端部の風景(背景は暑寒別連峰)


石狩弁天社


k←2万5千分の1地形図「望来」「石狩」より

←このあたり

あらしの夜明け・・・64(第5章・・・1)

2015-04-22 04:10:25 |   (第5章 たたかい)
第5章 たたかい

2009年ごろ創作作品(未発表)
2015年一部改変

 ニムシリ村では着々といくさの準備がすすめられていた。総大将はスク、それを補佐するのがモノブとグズリである。モノブは、いくさをするのは本意ではなかったが、こうなった以上、何としても負けるわけにはいかない、全力でたたかうしかない、と考えていた。

 モノブはタカトのことが気がかりだった。あれからタカトは姿を見せない。スクのいうとおり、本当にわれらを裏切ってラサン村に加担するために行ったのか。いやそんなことはない、タカトが自分たちを裏切るはずはない、などとモノブの心はゆれ動いていたが、今はいくさの準備で大忙しだ。深く考えている余裕はなかった。

 それからモノブが気にしていたのは、ラサン村がもっている武器のことだった。鉄でできているというヤリ、強力な弓矢、それに身を守るためのよろいやたてもあるという。それに対して自分たちの武器は石のヤリと弓矢だけだ。身を守るものなどありはしない。

 戦力となる男たちは相手方がほぼ20名、自分たちは40人。人数が多いことで、スクやグズリはもう勝ったような気になっている。

(あらしの夜明け…65)に続く…

北海道の里山をあるく・・・34

2015-04-12 04:44:25 | 北海道の里山をあるく
小樽市・旭展望台

 小樽市の旭展望台および周辺の遊歩道は、市街地のすぐそばにもかかわらず、豊かな自然が残されているところです。

 この日は暑からず寒からずのちょうどよい気候で、同じくウォーキングをしている人がたくさん来ていました。残雪は、市街にはもうまったくなくても、山中の道の両脇にはまだ50cm程度残されていました。

 また旭展望台からの眺望はすばらしく、市中心部や小樽港が眼下に見下ろせました。


旭展望台からの眺望


近くにあった小林多喜二文学碑


←北海道地図発行2万5千分の1地形図「札幌・小樽周辺の山」より

←このあたり

あらしの夜明け・・・63(第4章・・・10)

2015-04-09 07:07:52 |   (第4章 故郷の村)
<カニイどの>

タカトは突然カニイの前にひざまづいた。

<カニイどの、お願いです。いくさをやめさせる手立てはないものでしょうか>

<われわれもできるならいくさは避けたいと思っている。こちらからいくさをしかけようとは考えていない。だが攻めてこられれば、全力で防がねばならないだろう>

 そのとおりだ。攻められて抵抗しないわけにはいかない。攻めてこられないようにする手立てはないものか。タカトの目から涙がおちた。

<いや、一つだけ手立てがないわけではない。この2人だ>

 カニイがいった。タカトの目がかがやいた。

<中へ入ってくれ。作戦会議だ>

 カニイはタカトとマトナとアペ、それから数人の男たちを家の中へ引きいれた。

(あらしの夜明け…64)に続く…