すずしろ日誌

介護をテーマにした詩集(じいとんばあ)と、天然な母を題材にしたエッセイ(うちのキヨちゃん)です。ひとりごとも・・・。

2006-11-01 07:46:31 | じいとんばあ
      手

   細くて 折れそうな体に
   たくさんの病気を 抱えて
   ほとんど 食べられなかったあなたが
   スープを お代わりしてくれた
   骨ばかりの手で 私の手を握りしめて
   「あったかいなあ」と つぶやいた

   そんなあなたの為に
   私の存在の意味を教えてくれた
   あなたの為に
   一抹の不安を抱きながら 
   スープをひとさじずつ 口元に運んだ
   「おいしい」 そう言ってくれたのに
   その夜 あなたは急変した

   「苦しい、助けて、お医者に行かせて」
   最後まで生きようと頑張るあなたに
   医者は 冷たくこう言った
   「こんな状態で来られても・・・」
   戸惑う家族は こう言った
   「入院しても、私・・・付き添えない」

   その間で 私たちに何が出来るのだろう
   死んじゃう このままじゃ 死んじゃうよ

   泣きながら 心の中で 叫ぶだけ
 
   ごめんね
   結局 あなたを見送れなかった 

   私の手をとってくれた あなたの為に
   私は 何をすべきだったの
   私の手は あまりに無力です


















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2 コメント

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Unknown (こじか)
2006-11-06 10:55:00
 「生きたい」 …のなら、生かせてあげたい


 両親を、保護することが出来なかった私は、複雑な思いで、すずしろさんの詩を読んでいます。


 私に何ができる?
 
 何ができたんだろう?

 あの時。そして今。
返信する
Unknown (すずしろ)
2006-11-06 18:32:54
人にはそれぞれ、事情があって、優しさや愛の形もさまざまで・・。
いつだって、どうしてあげたらよいのか、良かったのか、葛藤の連続です。
答えなんてないもの。
やったことを後悔したり、やらなかったことを悔いてみたり。
でも、悩んだり苦しんだりすることが、大切なのでは・・・と思うのです。
返信する

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