すとう信彦 & his band

社会起業家(チェンジメーカー)首藤信彦の日常活動とその仲間たち

オスプレイ普天間配備の深淵

2012-10-02 13:22:24 | Weblog
台風で延期されていたオスプレイの沖縄配備が強行された。着陸姿勢に入ったオスプレイをみあげる人々のテレビ画面からも、自分たちが求めないものを問答無用で配備される沖縄の人々の怒りと絶望がにじみ出てくる。沖縄に集中する基地負担、アメリカ軍の一方的な押し付けを拒めない日米安保条約、理不順な合意、これまでの複雑ないきさつ...、オスプレイ騒動は次第に日米安保そのものを揺るがすものになりつつある。
また、オスプレイ配備は表面的には一新型機種の配備だが、それは同時に辺野古移転にも深く関係している。旧式のCH46のオスプレイへの転換こそが、辺野古の広大な新基地建設やV字型滑走路の建設を導いたと言っても過言でない。辺野古のブループリントはオスプレイという新機種の問題点と不可分ではないのだ。
先日、岩国基地に駐機するオスプレイに搭乗することができた。テロ特別委員会メンバーを中心に与野党の議員と垂直上昇、ナセル転換モード、水平巡航と3種の飛行を体験することができた。純粋に航空機として見た場合、オスプレイに込められた革新的なシステムには正直言って脱帽せざるを得ない。ヘリコプターのように垂直離陸し、航空機のように巡航するというアイデアはじつは大戦直後からあり、さまざまな航空機の試験飛行が行われたが、実用に達しなかった。アメリカがここまでこうした飛行体にこだわるのはやはり、カーター政権時代の、ヘリの長距離飛行による作戦が失敗したイラン人質奪回作戦からだろう。
今、躯体を目にすると、驚くほどコンパクトで完成度が高いことに驚く。垂直離着陸時も騒音は大型の回転翼機よりもかなり低い。垂直上昇から水平飛行に移行する間もナセルの転換も含め、体感する違和感は想像してよりはるかに小さかった。
しかし、実物を目にすると、写真では気付かなかった問題点が直感的に浮かび上がってくる。それは何よりも風にたいする弱点だ。通常のヘリなら水平に回転する回転翼はある意味で風に対してニュートラルなのだが、オスプレイは機体軸方向すなわち、前方・後方からの強風に大型のプロペラが抵抗となる可能性があると思う。オスプレイの欠陥としては、エンジン停止時のオートローテーション機能がないことが致命的と批判されてきたが、前・後方からの強風はコンピューターの自動操作に依存するナセルの転換期に思いもかけぬ影響を与えると思う。実際、最近のフロリダの事故では、編隊の後方機が前方機のプロペラの風圧で結果的に事故を引き起こした。またプロペラが機体の重心に位置することも、そこが支点となって機が縦に振れる可能性があるように思えた。たしかに飛行場のようなコンクリートの平面なら、問題は少ないのだろうが、はたして風向の一定しないまた傾斜地で、ヘリコプターほどの機動力があるかどうかは疑問だ。
結論的に言って、すばらしい実験機ではあるが、まだ課題を多く抱えた航空機が、住宅地に取り囲まれた普天間基地に配備されることには多くの問題そして解決すべき課題がある。そのように防衛大臣にも伝えた。専門家ならそのリスクをしっかり把握すべきと思う。ともあれ、この拙速の配備はオスプレイ独自のリスクよりも、より広範な社会的政治的リスクを拡大する可能性がある。引き続きフォローしていくつもりだ。

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