文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

安倍“悪玉”論のいかがわしさ」と題した特集の内、弁護士高井康行インタビュー、ジャーナリズムが民主主義を滅ぼすから

2018年05月03日 11時21分52秒 | 日記

以下は昨日発売された月刊誌正論の「安倍“悪玉”論のいかがわしさ」と題した特集の内、弁護士高井康行インタビュー、ジャーナリズムが民主主義を滅ぼすからである。

―国会では財務省理財局長だった佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問が終わり、森友学園との国有地取引に絡む決裁文書の改竄問題の焦点は大阪地検特捜部の捜査に移りました。ただ、毎日新聞は4月13日付の朝刊1面で、「佐川氏立件見送りへ」「虚偽作成罪問えず」という見出しの記事を掲載しました。 

高井 私も同様の見解です。今回の決裁文書の書き換えに関わった者が問われる可能性があるとすれば、「公文書偽造変造罪」「虚偽公文書作成罪」「公文書毀棄罪」が考えられます。

まず、公文書偽造変造罪ですが、これは公務員でない者、つまり、権限のない者が公文書を作った時、あるいは公文書を変造した場合に成立します。

しかし、今回の書き換えに関わったのは財務省理財局の職員とされていますよね?彼らは公務員であり、かつ作成権限も持っているため、公文書偽造変造罪は成立しにくいと思います。 

では、A理財局長が決裁した文書を、後任のB理財局長が承諾なく書き換えていた場合はどうでしょうか。

A理財局長が決裁した文書をA理財局長自身が書き換えていれば、公文書偽造変造罪には該当しません。

しかし、A理財局長が決裁した文書をB理財局長が書き直していたら、それはB理財局長がA理財局長の文書を勝手にいじったことになりますので、「公文書偽造じゃないの?」という見方もできないわけではない。

ただし、文書を作る権限の主体はAさんやBさんという個人ではなく、「理財局長」というポストにありますから、私は後任の「理財局長」が書き換える行為は権限の範囲内ではないかと考えます。

故にこの点でも公文書偽造変造罪は成立しないと思います。 

次に虚偽公文書作成罪を考えたいと思います。

書き換えられる前の文書には①、②、③という要素がありました。

書き換えられた結果、③が削られ、①と②の表現が簡素になりました。元々の文書に生い茂っていた枝葉はばっさり切り落とされましたが、根っこや幹や太い枝の部分はきちんと残っています。

つまり、書き換えの前後で客観的な事実がねじ曲げられたわけではない。

虚偽性がないという意味で、虚偽公文書作成罪に問うのも難しいというのが私の見方です。 

最後に公文書毀棄罪。決裁文書は、一番上の紙に決裁判が押され、その下に調書が付いているのが一般的です。

一番上の紙、いわゆる「鏡」の部分をはがし、それを別に新しく作った調書の上に貼り付けていた場合、もともとの文書は調書だけになりますよね? 

要するに、決裁文書としての体裁をなさなくなりますので、もともとの文書に関しては公文書毀棄罪が成立する可能性はないわけではない。

ただし、電子決裁だった場合は鏡の部分を張り替えるという行為が生じませんので、「毀棄された」と見るのは難しいのではないでしょうか。

このケースは、原本が紙なのか、それとも電子なのかもポイントです。

報道を見る限りでは、書き換えを犯罪に問うのは、なかなか難しいのではないかというのが私の見解です。

―これまでの国会はまさに「森友一色」でしたね。 

高井 今回の書き換えの一番の問題点は、野党を含めて誰も正確な事実を知らないということです。

比較的知っているのは検察だけであり、それ以外は「ああでもない」「こうでもない」と臆測で語っているだけ。

そのような状況が延々と1年以上も続いていることに民主主義の危機を感じます。 

―正確な事実の掘り出しは捜査機関に委ねるべきではないでしょうか。 

高井 そうは仰いますが、捜査機関とは犯罪を調べる機関であり、彼らは嫌疑がある程度濃厚でないと着手しません。

嫌疑が濃くないにもかかわらず動き始めるのは、警察国家的であり、逆に危険です。

つまり、嫌疑が薄い事案について捜査機関の動きが鈍くなるのはむしろ健全なのです。 

日本の制度上の欠陥は、犯罪とは断言できないけれど、国益に照らせば事実の解明が期待されている事案を専門的に調べる機関が存在しないことです。

国会に国政調査権はありますが、あれは事実を特定することが目的ではなく、政策立案のために必要な範囲で行うものです。

また、国政調査権を行使するのは国会議員であって、彼らは事実の特定に優れたプロではありません。

故に今後、書き換えのような事案が表面化した場合は、先に指摘したような専門機関で調べさせるのがベストです。

国会が特別監察官なり特別検察官なりを任命し、彼らに逮捕権を含む大きな権限を与え、自由に調べさせる。

そして、国会に対して定期的に調査の進捗状況を報告させ、結論が出たら国民に向けて詳細に公表させるのが良いと思います。

調査が行われている間、国会議員は喫緊の課題である北朝鮮情勢などについて議論することができるようになります。


最新の画像もっと見る