印藤 正裕さん(55)
清水建設に入社して30年、シンガポールの空港や香川県の「世界一美しい」と言われる小豆島大観音などの建築に携わった。「自分にしかできない設計」にこだわり取得した特許は約10件に上る。
昨年3月末、東京電力本店に呼ばれた。福島第一原発の放射性物質を抑えるカバーの設計の募集だった。高さ52メートルある1号機原子炉建屋を覆う骨組みに、計6千~8千人が上り、ボルト2万本で締める案が出た。「高線量の現場は近づけない。方法を変えて下さい」と訴えた。
2日後、釘を使わない日本の木造建築の技術を応用しようと提案した。大きな建物でボルトなしに組まれた例はなかったが、他社とのコンペの末、採用された。
福島第一原発にはカバーの設計図作りから何度も足を運んだ。心配する妻を「気をつけてやるから大丈夫だ」と説得した。建設が始まると、建屋から数十メートル先にある超大型クレーンの操縦室に入り、その様子を見守った。
「世界が注目している。失敗はできない」 完成は7ヵ月後の10月28日。柱や梁を港から運び、組んでくれた作業員らが集まった。握手し、一緒に肩をたたき合った。一人になった後、ほっと息を吐いた。
アイデアを生むひけつは「手を動かすこと」。趣味は昔から模型づくり。カバーの構想を生むまでに試行錯誤したノートは3冊になった。 文・写真杉本崇
清水建設に入社して30年、シンガポールの空港や香川県の「世界一美しい」と言われる小豆島大観音などの建築に携わった。「自分にしかできない設計」にこだわり取得した特許は約10件に上る。
昨年3月末、東京電力本店に呼ばれた。福島第一原発の放射性物質を抑えるカバーの設計の募集だった。高さ52メートルある1号機原子炉建屋を覆う骨組みに、計6千~8千人が上り、ボルト2万本で締める案が出た。「高線量の現場は近づけない。方法を変えて下さい」と訴えた。
2日後、釘を使わない日本の木造建築の技術を応用しようと提案した。大きな建物でボルトなしに組まれた例はなかったが、他社とのコンペの末、採用された。
福島第一原発にはカバーの設計図作りから何度も足を運んだ。心配する妻を「気をつけてやるから大丈夫だ」と説得した。建設が始まると、建屋から数十メートル先にある超大型クレーンの操縦室に入り、その様子を見守った。
「世界が注目している。失敗はできない」 完成は7ヵ月後の10月28日。柱や梁を港から運び、組んでくれた作業員らが集まった。握手し、一緒に肩をたたき合った。一人になった後、ほっと息を吐いた。
アイデアを生むひけつは「手を動かすこと」。趣味は昔から模型づくり。カバーの構想を生むまでに試行錯誤したノートは3冊になった。 文・写真杉本崇