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原発の建屋カバーを設計した清水建設の生産技術本部長…朝日新聞2月1日2面より

2012年02月01日 14時43分13秒 | 日記
印藤 正裕さん(55)

清水建設に入社して30年、シンガポールの空港や香川県の「世界一美しい」と言われる小豆島大観音などの建築に携わった。「自分にしかできない設計」にこだわり取得した特許は約10件に上る。

昨年3月末、東京電力本店に呼ばれた。福島第一原発の放射性物質を抑えるカバーの設計の募集だった。高さ52メートルある1号機原子炉建屋を覆う骨組みに、計6千~8千人が上り、ボルト2万本で締める案が出た。「高線量の現場は近づけない。方法を変えて下さい」と訴えた。

2日後、釘を使わない日本の木造建築の技術を応用しようと提案した。大きな建物でボルトなしに組まれた例はなかったが、他社とのコンペの末、採用された。

福島第一原発にはカバーの設計図作りから何度も足を運んだ。心配する妻を「気をつけてやるから大丈夫だ」と説得した。建設が始まると、建屋から数十メートル先にある超大型クレーンの操縦室に入り、その様子を見守った。

「世界が注目している。失敗はできない」 完成は7ヵ月後の10月28日。柱や梁を港から運び、組んでくれた作業員らが集まった。握手し、一緒に肩をたたき合った。一人になった後、ほっと息を吐いた。

アイデアを生むひけつは「手を動かすこと」。趣味は昔から模型づくり。カバーの構想を生むまでに試行錯誤したノートは3冊になった。     文・写真杉本崇

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