文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

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そして今後、米国との貿易戦争が長引くと、中国の稼ぐ貿易黒字が確実に減っていくから、手持ちの外貨が減少することはあっても、今以上に増えることはまずない

2018年11月15日 11時01分06秒 | 日記

以下は今日の産経新聞13ページに、画餅にすぎぬ「輸入額拡大」、と題して掲載された石平さんの定期コラム「China Watch」からである。

文中強調は私。

今月10日まで、中国商務省主催の「中国国際輸入博覧会」が上海で開催された。

博覧会には3600社の各国企業が参加し、習近平国家主席が自ら開幕式に出席して大演説を行うなど、盛大なイベントとなった。 

しかし、よく考えてみれば、このイベント自体は実に奇妙なものだ。

「輸入博覧会」の「輸入」とは、要するに中国側が外国企業からモノやサービスを買うことだが、ビジネスの世界で企業が自社商品を売るために販促イベントを行うのは普通であって、他人さまからモノを買うのに財力と労力を投じてわざと「博覧会」をやるような話は聞いたこともない。 

習主席は開幕式の演説で「輸入をテーマとする世界最初の国家級展覧会」と自慢しているが、確かに、このような本末転倒の博覧会が国家レベルで開催されたのは前代未聞のことではないか。 

結局中国は、ビジネスのためにこの展覧会を催したというよりも、一大政治・外交イベントとしてそれを行ったのであろう。

その主な目的の一つは明らかに、貿易戦争の相手の米国を牽制することだ。 

そのために習主席は、世界各国の首脳を開幕式に招き、中国の貿易網の広さを見せ付けようとしたが、上海にやってきた首脳たちの顔ぶれは実に寂しいものであった。

中国の主な貿易相手国であるG7の先進7力国の首脳がそろって欠席したのはもちろんのこと、G20サミットの参加国首脳のうち、習主席の招待に応じて開幕式に参加したのは口シア首相だけであった。 

メーンの出席者には、チェコやケニアやドミニカの大統領などがいたが、そういう国々と中国との貿易額は微々たるものである。

これらの国家元首たちは単に、習主席のメンツを立てて中国主催の「政治ショー」に顔を出しただけのことであろう。 

そして、こうした貿易額が少ない国の首脳たちに向かって、習主席は未来への壮大なる夢を語り、今後15年間で中国のモノ・サービスの輸入額が40兆ドルを超える見通しを示した。  

「15年閧で輸入額40兆ドル」といえば、平均にして毎年の輸入額は2兆6600億ドル以上となるはずだ。

だが、中国の2017年の輸入額は約1兆8400億ドルだから、習主席の示した数値目標に達するためには、中国は今後、各国からの輸入を大幅に増やしていかなければならない。

しかし外国からの輸入を増やすには、まずは手持ちの外貨(すなわち外貨準備高)を増やさなければならない。

確かに中国は今、「世界一」という巨額の外貨準備を持っているが、今後それがさらに増えていく可能性はほとんどない。

なぜならば、一国が稼ぐ貿易黒字が、その外貨準備の源となるのだが、中国の貿易黒字の6割は実は、対米貿易から稼いでいる。

そして今後、米国との貿易戦争が長引くと、中国の稼ぐ貿易黒字が確実に減っていくから、手持ちの外貨が減少することはあっても、今以上に増えることはまずない。 

その一方で、米国との貿易戦争において、中国の人民銀行が人民元の急落を防ぐために断続的に元買い・ドル売り介入を繰り返していかなければならない。

これでは外貨準備の減少はさらに加速化するに違いない。

現に、貿易戦争開始後の今年8月から、中国の外貨準備は3ヵ月連続で前月比での減少となり、10月末の外貨準備は前月末より339億ドルも減った。

もちろん今後もこのような傾向が続くはずだ。 

そうなると中国はこれから、外国からの輸入を大幅に増やしていくのはまず不可能だ。

習主席が示した「15年間で輸入額40兆ドル」の見通しは単なるホラ吹き、習主席流の「買う買う詐欺」にすぎない。


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