昨夜、メールを頂きました。ここでお答えさせて頂きますね。
あ、他にもお手紙とファックスで質問を頂いております。『お返事をださなきゃ、ださなきゃ』と思いつつ、静岡・島根・東京の出張時も頂いたお手紙を数通、持参しておりました。(汗)。もう少しお時間下さいね。必ずお返事致しますから~。
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私は蘭が好きで育てているのですが、わからないことがあり、先生にお聞きしてみよう!とメールさせて頂きました。3種類の蘭について、どうぞ教えて下さい。
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長くなるので3回に分けました。
質問その1《カトレア》
昨春、通信販売で「カトレア バイレージ」という冬咲き品種を購入しました。葉も大きく成長してシースの中に花芽が透けて見えているのですが、去年の12月頃から花芽の成長がとまったままです。(シースの下1/4位の長さ) 家には加温設備がないので寒さが原因なのでしょうか?石油ストープの側に置くのは極力避け、主に暖かい窓辺に置いていました。シースの中の花芽は枯れてしまったのでしょうか、もう咲かないのでしょうか?いちばん古いバルブが根元より薄茶色に変わって枯れてきているのも気になります。カトレアらしいカトレアだと思って楽しみだったのですが・・・。
【演芸研究家・トミーからの回答】
~トミーの診断~
12月頃から、シース内の花芽が止まったままというのは、もしかするとすでに花芽がシース内で座死(枯死)しているかもしれません。カトレアは、冬咲き・春咲き品種が最も開花させづらいのです。温室やワーディアンケース(室内簡易小型温室)があると簡単に開花しますが、窓辺での栽培では難しいかもしれません。
うまく蕾が生存していれば、4月頃から再び生長をして、開花するかもしれませんが、現物を診断しないかぎり、なんともお答えようがありません。
~大型カトレアのおすすめは初夏・秋咲き品種~
悲しいかな?洋ラン展自体が、2月頃に開催されることが多く、どうしても一般の方々は冬咲き・春咲き品種のイメージが強く残ってしまいます。入手される株も冬咲き・春咲き品種がどうしても多くなってしまいます。以前、夏の洋ラン展や秋の洋ラン展が開催されたこともあったのですが、最近は経済の衰退により、開催されなく、入手する機会が減ってしまいました。
大型カトレアをぜひ自分の手で栽培して、咲かせてみたいという方には、『初夏咲きのパープラタ』や、『秋咲きのラビアータ系交配種』でしたら、ベランダや庭で開花させることは容易です。
~冬咲き品種の生殖成長期の温度・湿度条件~
もし冬咲き・春咲き品種が冬にシース内で蕾らしきものが見えた場合、窓辺で大きめの透明ビニール袋で囲い、最低温度15℃以上最高温度30℃以内になるように、サーモスタット(設定温度による自動ON/OFF)やプレートヒーター(板状の小型加温装置)で調節してみて下さい。湿度はできましたら、加湿器を入れて70~80%に保つのが理想です。
なかなかここまで家のなかで、できませんよね?前述の初夏咲きや秋咲き品種はそのような心配もなく、自然状態で戸外で開花させられるので、お薦めなんです。
~大型カトレアの開花習性~
大型カトレアは、フラスコ内のバルブから数えて、『7本目のバルブに初花をつける習性』があります。しかし肥培管理できていないと、8~10本目のバルブでやっとはじめての花を開花させるといったことも珍しくありません。
プロが肥培管理しても1年で2本のバルブを生長させるのが精一杯なので、フラスコ出し後、約3年半で初花がみられる計算となります。
『なぜ、7本になるまで開花しないのか?』は、まったく解明されていません。
アサガオなどは、発芽まもない双葉の状態でも短日条件(1日の日の長さが短いこと)に遭遇させると、開花することが知られていますが、カトレアでは、開花できる株の充実した状態、つまりある程度のバルブの本数が揃わないと、開花しないものなんです。
~購入時の診断がポイント~
フラスコ苗から育てていると、バルブが何本まで育ったか?理解できるのですが、中苗(適当の大きさまで育った株のこと)や一作開花株(栽培1年後開花可能な株になるという意味。開花する保証はありません)を購入した場合は、フラスコ時代のバルブが枯れ落ちている場合があります。
その場合、過去に開花した株か、まだ開花サイズに至っていないか?を確認する必要があります。
開花した形跡(バックバルブの葉の付け根に花茎らしき痕跡があるもの)があった場合は、そのバルブの高さ以上に、新しいバルブを育てあげる必要があります。悪くても、前年のバルブの背の高さまでは育てると、開花すると思います。基本は、『花がついたバルブの背の高さと太さがあるバルブが3本揃って一人前』の開花サイズの株といえます。
一方、開花した形跡がまったくみられない株を入手した場合、バルブの本数を数えても、一番古いバルブは枯れてなくっているかもしれないので、参考になりません。開花サイズになりかけると、リード(新芽のこと)の葉の付け根から、シースと呼ばれる蕾を守る葉がでてきます。これが開花サイズにほぼ近づいたというサインです。ところが株が充実していないと、せっかくシースがでてきても、蕾が入っていなかったり、蕾がでてきても途中で座死・枯死することも多々あります。でも開花サイズに近づいたと喜ぶべきだと思います。来年にはきっと開花しますよ、きっと。
>いちばん古いバルブが根元より薄茶色に変わって枯れてきているのも気になります。
栽培環境がよければ、古いバルブも枯れませんが、室内栽培だと、どうしても古いバルブの老朽化が早くなってしまいます。
できましたら、開花サイズの大きなバルブを3本しっかり育てあげて開花させ、それ以後、毎年、開花するような立派なバルブを育て上げ、4年前のバックバルブを切り捨てて、毎年4本のバルブで開花させられるようになれば、OKだと思います。詳しくはレリア(2002年5月号?)を趣味の園芸でやったときに、バックバルブ切り捨て植え替え法を書いておりますので、参考にしてください。
画像は、秋咲きの大型カトレアのご先祖にあたるラビアータ。
素朴さがいいですね。ブラジルから輸入したもの。
ではまた~