『仮面ライダーW FOREVER A to Z 運命のガイアメモリ』を観た。
コレが文句なしで素晴らしい作品で、良い意味で「正しいヒーロー映画の在り方」を描いた傑作でした。
別の言い方をすれば、「お子様向け映画」こそ高水準でなければいけないという、基本を忠実に守っているとも言えます。
かつてヒーローの活躍に胸を熱くした大人も、今リアルタイムでヒーローに夢中な子どもも、共に理屈抜きで楽しめると言う作品は簡単には出来ません。
本作を監督したのは昨年末『ウルトラ銀河伝説』で、子どもの頃よりウルトラマンを愛する大人達を感動の涙に溺れさせた坂本浩一監督。
坂本監督はアクションだけではなく、ヒーロー映画に一番何が大切なのかをハリウッドでしっかりと修得されて来たようです。
(警告:以下ネタバレ炸裂!)
さて、オープニングは戦隊モノの『天装戦隊ゴウセイジャー:エピック・オン・ザ・ムービー』。
自ら“エピック”とタイトルに掲げているが、コレは…本当に酷かった。
戦隊モノ・シリーズ史上、「最弱」と言われるレッドを含めて魅力に欠けるキャラクターと俳優陣。
全く面白味に欠けた脚本と演出、もう壊滅的なまでに退屈で中盤から寝てしまったので結末がどうなった知りません(苦笑)。
磯山さやか嬢。
グラビア・アイドルとしても、タレントとしても大好きです。
ただ、本作の異星のお姫様役は…正直ミス・キャストだったと思う。
逆に悪の美女幹部としてのゲスト出演なら、きっともっと魅力的(演技が上手かっただけに残念)だったのでは?!
昨年の映画版シンケンジャーは適度に遊びが効いていて、観ていて面白かったが…。
色んな意味で残念な駄作でした。
続いて、待ってましたの『仮面ライダーW FOREVER A to Z 運命のガイアメモリ』。
先に正直に告白すると、僕は『仮面ライダーW』のTVシリーズを観ていません(爆)。
だから、TVシリーズと比較して云々は言えません。
ただ観て判ったのは、TVシリーズの「パラレル・ワールド」的なものではなく、その延長上にある独自の物語というのは判りました。
結果的にはコレが良かったのだと思います。
平成仮面ライダー・シリーズは、作品ごとに「一見さんお断り」的な特異で難解な世界観と設定、それに伴う専門用語が飛び交います。
この『仮面ライダーW』でも例によって難解な世界観と設定やそれまでの物語の積み重ねの上に、この『FOREVER A to Z 運命のガイアメモリ』という物語は展開します。
この「一見さんお断り」的な問題は、登場人物や映画版の新キャラの親切丁寧な解説的セリフによりクリアーされます。
コレをわざとらしくやると失敗するのですが、さり気無く時間軸をズラしながら嫌味なく展開するので作品に入っていきやすいです。
コレは脚本の巧さが光っていると言えます。
本作の主人公たちの敵となるのは、松岡充(SOPHIA)扮する大道克己/仮面ライダー・エターナル率いる不死身の極悪傭兵軍団“NEVER”。
この“NEVER”の各キャラクター達が、セリフや登場シーンこそ少ないものの、各々の過去や特技が判る位に見事にキャラ立ちしていて秀逸。
「史上、最悪最凶の仮面ライダー」と言われた、大道/仮面ライダー・エターナルも非常に良い。
大道のその美貌(ちょっとV系!でも同じ歳!!:涙)と裏腹に、極悪非道な仮面ライダー・エターナルというキャラは良い。
そもそも、大道という男の背景にあるものが、実は非常に悲劇的で残酷であるのも「仮面ライダー」的と言うか、実に石ノ森的なキャラクターだと思う。
作品の鍵を握る、杉本彩扮する美女・マリア。
彼女の存在が、実はこの悲劇の発端となっている。
そこにある「母性の暴走(狂気と言っても良い)」は、一方的に“悪”として責める事が出来ないのも泣ける。
そんな悲劇的な要因とは別に、杉本彩はコレ以上無いってくらいにエロさ爆裂(笑)。
主人公の1人であるフィリップ(マリアに母の面影を見る)を「坊や」と呼び、ホテルに呼び出してネグリジェ(←死語か?)で迎える展開。
そして実は「母と息子」であった大道との関係も、何となく近親相姦的で淫靡な雰囲気が漂うのもエロい。
もう、そこにあるのは『花と蛇』的な禁断の香りであり、作品に非常に大きな影響と影を落としている。
しかし、そんな2人の強力かつ熱演を凌駕するのが、“NEVER”の泉京水を演じた元格闘家・須藤元気による怪演の前では霞んでしまう(爆笑)。
冷酷非情なテロリスト集団でもある“NEVER”の一員であり、そして元格闘家という須藤元気の強面を逆手にとって、ある意味反則的な爆裂オカマ・キャラというのはあまりに衝撃的過ぎる。
本作のゲストとして、クライマックスに登場して華々しくデビューを飾った「仮面ライダー000」。
何とも気の毒だが本来なら鮮烈なデビューも、京水に扮した須藤の前に完全に喰われてしまっている(苦笑)。
個人的にはコインを使う「000」だが、何かガチャポンみたいな面倒臭いヒーローという印象を持った…。
京水/ルナ・ドーパンドのインパクトが強過ぎて、今一つカッコ良いとは思えなかった(苦笑)。
あと本来の主人公でもある「探偵物語(松田優作!)」に憧れる気障なジャニーズ系みたいな章太郎。
そして、正に人間コンピューターとも言えるフィリップ。
まだ少年臭さがある2人だが、本作では互いの心の葛藤やアイデンティティの衝突によって、互いに「相棒」と呼び合うコンビに危機が訪れる。
互いの葛藤やアイデンティティの衝突。
それを互いに尊重して受け入れる事により、本当の意味で互いを理解し信頼し合える仲になるという展開は少年マンガの王道的な展開だ。
フィリップとの決別の後、「ジョーカー」のメモリーにより孤軍奮闘する章太郎の姿。
ライダー・パンチやライダー・キックを必殺技とする展開には、往年の昭和仮面ライダーを彷彿とさせる。
この辺りの描写は燃える!!
終盤からの展開は、正に怒濤。
観る者を圧倒しつつもエターナルの猛攻に窮地に陥りながらも、風都の人々からの「頑張れ!仮面ライダー!!」という歓声が、それが風となりベルト(サイクロン)で受けながら最終形態へと進化して戦う仮面ライダーWの姿は観る者の感動を呼ぶ。
コレこそが『仮面ライダー』の在るべき姿なのだと…。
その後に訪れる静かな結末。
お子様映画、ヒーロー物云々を抜きにして、娯楽映画としてコレ以上のエンディングは無いだろうって結末を迎えます。
素晴らしいです!
坂本監督は今日本映画でこの類のヒーロー映画を撮れば、今一番最高に面白い映画を撮れる監督だとも言えます。
評判のアクションですが、どうやって撮ればカッコ良いかってのを知り尽くしています。
個人的にはバイク・アクション、より実戦的なエターナルやNEVERの面々の射撃・格闘アクションが印象的でした。
しかし、アクションだけではなく、説教臭く熱過ぎない丁寧なドラマの演出も坂本監督のもう一つの「売り」かと思います。
今後、このジャンルにおいて素晴らしい傑作を作り続け、やがて再びハリウッドにヒーロー映画を撮らせば最高の逸材として、再び進出して欲しい。
素晴らしい映画です。
久々に観た後、心の底からスッキリして面白かった!!…と言える映画を観ました。
「強くてイケメン、嫌いじゃないわ!!」