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ナイ教授「トランプの北朝鮮政策、言ったことをそのままやるとは限らない」

2017-05-27 06:26:27 | 国際情勢
ダイヤモンド・オンライン 5/25(木) 6:00配信

以下はYahoo!ニュースより
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170525-00129316-diamond-int

>ジョセフ・ナイ教授は、カーター政権、クリントン政権で要職を歴任したアメリカを代表する国際政治学者だ。彼が提唱した「ソフト・パワー」という概念は、アメリカの外交政策に大きな影響を与えてきた。ナイ教授は今、トランプ大統領の外交政策をどのように見ているのか。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵、インタビューは2017年4月17日、於ハーバードケネディスクール)

 佐藤 トランプ大統領の就任から3ヵ月が経ちました。ナイ教授はハーバードケネディスクールで「アメリカの外交政策におけるリーダーシップと倫理」という授業を教えていますが、今日までのトランプ大統領の外交政策をどのように評価しますか。

 ナイ まだ1期目が始まったばかりですから、政策そのものを評価するには早すぎると思います。ただ過去3ヵ月の政策については失望することばかりです。アメリカは「ハード・パワー」(他国へ影響を及ぼす軍事力や経済力)と「ソフト・パワー」(文化、政治的価値観、外交政策などを通じて他国からの共感を得る力)の両方を生かすことによって世界のリーダー国となってきたわけですが、トランプ大統領が「ソフト・パワー」についてきちんと理解しているとは思えません。

 トランプ大統領は、大統領に就任してまもなく、イスラム教徒が大多数を占める中東・アフリカ6ヵ国からの入国を一時禁止する大統領令に署名しました。これは、この6ヵ国の人々だけではなく、すべてのイスラム教徒を敵にまわす行為です。この入国禁止令は世界におけるアメリカのリーダーシップを揺るがすばかりか、アメリカ人としての倫理にも反するものです。アメリカは伝統的に信仰や宗教によって人を差別しないことを国是としてきた国だからです。

 これまでの90日間を見る限り、トランプ大統領の外交政策はうまくいっていないというのが私の印象です。ただ、公平を期すために申し上げておきたいのですが、どの大統領も最初の100日間は非常に苦労します。例えば、ジョン・F・ケネディは、大統領に就任して100日も経たないとき、キューバへの侵攻作戦を実行して失敗しています(ピッグス湾事件=1961年4月、米国がカストロ政権の転覆を狙ってキューバに侵攻した事件)。ところがケネディはこの失敗から多くを学び、その後、様々な外交政策を成功させていきました。トランプ大統領が、これまでの失策から学び、それを今後生かしていってくれるのかはまだわかりません。

● 実はオバマ政権と大きく違わない トランプ政権の対北朝鮮政策

 佐藤 トランプ大統領の外交・軍事政策を見ていると、「オバマ前大統領とは違うことをやってみせる」ということを内外にアピールするために、あえて強硬路線をとっているような印象をうけます。これまでの北朝鮮に対する政策をどのように評価しますか。

 ナイ トランプ大統領の対北朝鮮政策は、オバマ前大統領の政策と比べてもそれほど違いがないように思います。トランプ大統領は「中国を通じて北朝鮮に圧力をかける」と繰り返し述べていますが、これはオバマ政権の戦略を踏襲しているものです。またニューヨークタイムズ紙によれば、「トランプ大統領は、オバマ政権のときに始まったミサイル発射妨害工作(サイバー攻撃によって発射前に妨害すること)をそのまま受け継いだ」そうです。

 トランプ大統領は、口先では北朝鮮に対して攻撃的な姿勢を見せていますが、その強硬路線がそのまま政策に反映されるとは言い切れないと思います。

 佐藤 オバマ前大統領が北朝鮮に対して強硬な外交政策をとったのはどんなときでしょうか

 ナイ 2010年に韓国哨戒艦沈没事件(韓国海軍哨戒艦「天安(チョナン)」号が北朝鮮の小型潜水艇から発射された魚雷によって黄海で沈没した事件)が起きた際、オバマ前大統領は北朝鮮に対して非常に強硬な態度をとりました。北朝鮮からどれだけ抗議されようが、米韓合同軍事演習を実施し続けたのです。

 佐藤 トランプ大統領の就任後、北朝鮮はミサイルの発射実験を何度も強行しています。アメリカは今、北朝鮮に対してどのような戦略で臨むべきだと思いますか。

 ナイ 今はとにかく事態を静観すべきときだと思います。トランプ大統領は中国に圧力をかけ続けています。この政策が成果を上げられるかどうか、まずは見守ることでしょう。

 佐藤 北朝鮮情勢を受けて、韓国では核武装論が高まっているそうですが、日本でも「核抑止力を持つべき」と唱える人が出てきています。ナイ教授は日本の核武装についてどのように考えていますか。

 ナイ 日本が核武装したからといって、日本の安全がより保障されるとは限りません。少なくとも北朝鮮に対する抑止力にはならないと思います。逆に近隣諸国、特に中国を脅かすこととなり、そうなると日本の安全性は今よりも揺らぐこととなるでしょう。北朝鮮に対する最善の抑止策は、アメリカと日本、米軍と自衛隊が緊密に連携しあうことです。米日同盟に勝る抑止力はないと思います

 佐藤 大統領選挙の期間中、ナイ教授は「ドナルド・トランプ氏が大統領になれば、アメリカは孤立主義に陥る危険性がある」と懸念されていました。今も同じような懸念をお持ちでしょうか。

 ナイ トランプ大統領の実際の政策を見ていると、彼は孤立主義者でも、単独行動主義者でもないなと感じています。孤立主義というのは「世界のどの国とも同盟を結ばない」という意味ですから。確かにトランプ大統領は就任演説で「アメリカ・ファースト」を強調しました。ところが就任後、彼は立場を変え「米日同盟、米韓同盟を強化するべきだ」と言っています。選挙演説で彼は「NATOは時代遅れだ」と批判していましたが、4月12日には「NATOはもはや時代遅れではない」と考えを変えています。つまり、口先で言っていることと実際にやっていることが違うのです。「獰猛に吠える犬ほど、かみつかない」のと同じではないでしょうか。

 佐藤 つまり選挙に当選するために言っていた過激な公約を、少しずつ「調整」しつつあるということですね。

 ナイ そうだと思います。選挙中にはかなり過激なことを言っていましたが、この90日間を見ていると、言っていたことをそのまま政策としては実行しているわけではないことがよくわかります。

(引用ここまで)

→ジョセフ・ナイ教授といえばアメリカ合衆国の国際政治学者として知られ、アメリカ民主党政権でしばしば政府高官を務め、「日米同盟」の堅持を主張する、知日派としても知られる人物です。

個人的にはナイ教授の発言の妥当性よりも、自身の思惑、政治的立ち位置などによる「トランプ政権に対する否定的な評価」の方が気になりましたが、ここでは発言の内容を見てもらうことで閲覧者の皆様のご判断を仰ごうと思いました。