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歴史人口学的に中国は後退している

2017-05-24 00:41:35 | 国際情勢
エマニュエル・トッドは、そう指摘しています。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20140408/262573/?ST=smart

>私は中国については、非常に悲観的だ。ほとんどの歴史人口学者はそうだと思う。その人口が膨大であるのに対し、出生率が極端に低いという問題を抱えている。中国は全員が豊かになる前に高齢化社会に突入する。

 他方、社会保障制度が未整備で、男の子を選択するための偏った人工中絶が行われている結果、男女比率のバランスが取れていない。

 経済については、膨大な輸出能力を持っている。しかし、私はこの国が自分で運命を操れる怪物であるとは思わない。共産党のビートルズ(成功した世界的スター)ではなく、西側が経済成長を実現するための輸出基地と言える。利益率を上げるために中国の安い労働力を使うことは西側にとって自然な決定だった。

 現状の中国経済は設備投資比率がGDPの40%、50%に達している。それは経済バランスから見て異様であり、スターリン時代の旧ソ連がそうであったように、経済が非効率であることを示している。

社会はどうかというと、これも非常に不安定だ。中国社会で素晴らしかったのは、平等主義だ。特に兄弟間の平等性が重視されてきた。中国で共産主義革命が起きたのも、社会に平等主義の信念があったからだ。

 ところが、近年の経済成長にともなって、不平等、貧富の格差がすさまじい勢いで拡がっている。社会には依然として平等主義の考え方が根強いため、潜在的な政治的不安定度が高まっていくだろう。中国共産党が国民に対し、ナショナリズムや反日感情を強調する理由が分かる。

 最善のシナリオは、世界が発展して同時に中国も豊かになっていくことだ。他方で、世界危機やヨーロッパの崩壊などの最悪シナリオの可能性についても心に留めておかなければならない。

 同じ社会主義国家のロシアが社会主義から脱出できたので、中国もできるのではないかという見方もあるが、いくつもの問題を解決しないと共産主義から出られないし、経済も社会も恐らく安定しない。

 GDPでの日本と中国の比較は意味がない。なぜかと言えば、中国ではいろんな階層の人たちが何とか一緒に暮らしているのに対し、日本は人口の半分ほどが大学など高等教育を受けて卒業して働くという社会構造になっている。

 中国が経済指標で先進国にキャッチアップするということと、中国が世界をリードして将来をつくっていくということは別問題。中国が米国より効率的な社会となると考えるのはナンセンスであり、単独で支配的国家になると予想するのも馬鹿げている。

 中国は共産主義体制から抜け出し、前進していると自分で思っているはずだが、私の観点からは、逆に後退しているように思う。

(引用ここまで)

→エマニュエル・トッドに限りません。

現時点では飛ぶ鳥落とす勢いで発展中の中国ではありますが、欧米の識者の多くは

おそらくは中国の発展はこのまま続くのではなく、2020年頃に重大な危機を迎えるだろう

と見ています。

実は中国経済の成長率は2011年頃から徐々に低下しており、2015年の成長率は6.90、2016年には6.59となってきています。
http://ecodb.net/country/CN/imf_growth.html

もっとも経済成長率6%台というのは国際社会の水準からいえば、今なお驚異的ともいえる数字ではあるのですが、残念ながら、この成長率は国内で毎年生み出される膨大な数の「大卒者」を吸収できるだけの仕事を創り出すのは難しいんです。

本来、親たちが子供の教育に惜しみなく多額の資金を投入してきたのは、当の子供たちが社会に出たとき「高収入」と「社会的地位」が得られることを期待してのことだったはず。

ところが、現実にはすでに正規の職につくことができない大卒者が(この成長率にもかかわらず)出始めていますよね?

この状態のまま成長率の鈍化が続くと、多額の教育資金が回収できず、それなりの学歴を持つ「無給のインターン」が大量に発生するという事態を引き起こす可能性も出てくるでしょう。

もっとも、そうした若者には積極的に国外に出てもらい、移民先の国家(無論、我が国も含まれます)で、その実力を発揮してもらい、あわせて移民先の社会で影響力を発揮してほしい、という考え方も成り立つとは思います。

が、当の中国の「年金問題」が、これに待ったをかけそうな気もしますけど。

さて

中国の経済を語る上で無視され勝ちな国営企業の問題があります。

私自身の認識としていうなら、国営企業は赤字を出し続け、膨大な負債を累積しており、行き詰まりは既に明らかな状態です。

実際にも、例えば鉄鋼などでは国営企業の労働者が解雇される自体も起きています。

そのため、国営企業は政府からの資金援助を受け、無駄な仕事を作り出してでも雇用を維持して来ましたが、それはいつまで出来るのでしょうか?

中国はかつて、リーマンショックで世界経済が混乱していた当時に4兆元の大型景気刺激策を行い、結果として世界経済を救いました。

勿論、中国はこれからの世界経済に自らが影響力を行使するための方法としてそうした政策を行ったわけで、別にボランティアではありませんけど

そのおかげで日本やアメリカなどの輸出が救われたわけですから、効果は大きかったと見るべきでしょう。

とは言え、その時の4兆元は今なお中国財政にとり回収不可能に近い債務としてのしかかっているのも事実です。

また、これまで地方政府は企業に土地を与え、銀行から地方政府の信用を元にお金を借り、事業資金に当ててきました。

その結果、地方政府の負債は膨れ上がっているとも聞きます。

簡単にいうと

中央政府、あるいは地方政府が「国営企業にお金を出し、無駄な仕事を作り出してまで雇用を増やす」

というサイクルは、そろそろ維持できなくなるはずなんです。

中国の「雇用の安定」は、実は国営企業の「無駄な仕事」により、かなりの部分支えられてきました。

それが成長率の低下により、次第に支えられなくなってきつつあるんです。

これをどう乗り切るのかが、これから問われる時でしょう。

参考文献

エドワード・ルトワック『中国4.0 暴発する中華帝国』(文春新書)