思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

靖国神社の思想と近代民主主義の思想とは二律背反です。

2010-08-15 | 社会思想

いうまでもなく、主権在民を原理とし自由と平等の理念を掲げた『日本国憲法』と、『靖国神社』の掲げる宗教イデオロギーは、まったく相いれません。靖国神社(明治政府がつくった国家神道)の思想を認めるならば、日本はもう一度、天皇主権の『大日本帝国憲法』時代に戻る他なくなります。

靖国神社は、
天皇大権を当然のこととし、明治以降の日本の戦争はすべて「聖」なるものと主張し、
韓国・中国への植民地支配はなかった!と主張し、
敵と味方を峻別し、天皇陛下のために斃れた者だけを祀ると主張し、
個人の信教の自由を否定して、兵士は日本の軍神=集合神だと主張します。

このような靖国神社の掲げるイデオロギーは、現代の日本国家をつくっている基本理念=近代民主主義の原理とは二律背反ですが、同時に、多神教の『神道』を天皇神格化により疑似的な一神教へと変えた明治政府の所業(神道の国家神道化)は「古き日本」の伝統とも大きく異なりますので、日本の悠久の歴史を主張する人々もまた「靖国思想」には反対しなければならないはずなのです。

明治政府は、富国強兵政策を進めるために、古来の「神道」を「国家神道」へと変えましたが、その思想の下では、一人ひとりのかけがえのなさは否定され、公(おおやけ)とは滅私奉公のことだとされたのです。このような国家主義=靖国思想に縛りつけられたままでは、兵士たちの霊は永久に浮かばれません。
彼らは、戦争のない平和な日本を夢見、差別のない、一人ひとりが大切にされる社会を夢見たはずです。天皇を神として崇め、それに従う人生をよしとしたのではありません。天皇の官吏(官僚)が治める自由のない日本をよしとしたのではありません。軍人が威張る日本をよしとしたのではありません。互いの自由を認め合い、皆でつくる平等なルール社会を夢見たはずです。
死してなお、靖国思想に縛りつけるのは、戦死者への冒涜でしかないのです。政府の絶対の責任として千鳥ヶ淵の拡張整備を行わなければなりません。

65年間、その義務を怠ってきた政府に対して、わたしは激しい公共的な怒りと憤りを感じています。

------------------------------

以下は、『靖国神社』の遊就館で売られている宣伝パンフレットからの抜粋です。

小堀桂一郎(靖国神社の理論的柱、東京大学名誉教授)の談・1999年8月

「靖国神社の本殿はあくまで、当時の官軍、つまり政府側のために命を落とした人たちをおまつりするお社である、という考えで出発したのでして、それは非常に意味のあることだと思うのです。 そこには「忠義」という徳が国家経営の大本として捉えられているという日本特有の事情があるのです。 「私」というものを「公」のために捧げて、ついには命までも捧げて「公」を守るという精神、これが「忠」の意味です。

この「忠」という精神こそが、・・日本を立派に近代国家たらしめた精神的エネルギー、その原動力に当たるものだろうと思います。ですから・・命までも捧げて「公」を守る、この精神を大切にするということは少しも見当違いではない。その意味で、靖国神社の御祭神は、国家的な立場から考えますと、やはり天皇のために忠義を尽くして斃(たお)れた人々の霊であるということでよいと思います。

靖国神社の場合は、・・王政復古、「神武創業の昔に還る」という明治維新の精神に基づいて、お社を建立しようと考えた点に特徴があるといってよいかと思います。

あの社は天皇陛下も御親拝になるきわめて尊いお社である。微々たる庶民的な存在にすぎない自分が命を捨てて国の為に戦ったということだけで天皇陛下までお参りに来て下さる。つまり、非常な励みになったわけです。
国の為に一命を捧げるということが道徳的意味をもつのは万国共通です。言ってみれば、人間にとっての普遍的な道徳の一項目なのです。

実は総理大臣が何に遠慮して、参拝に二の足を踏んでいるのか不思議でならないんです。
中共が総理大臣の参拝に文句を言ってくるのは、何も彼の国民感情が傷つけられたなどという話ではまったくない。あの国の民衆の大部分は靖国神社の存在すら知りません。・・外に問題を設けて反対勢力の目をそちらに向けさせようという国内政治の力学が働いている程度のことであって、まともに相手にすべきことではないんですね。

だから私はこの問題でも総理が断固として参拝されるのがよいと思うんです。そうすると直ちに北京から文句を言ってくるでしょうが、適当にあしらうなり、知らぬ顔を決め込むなり、いくらでも対処の仕方がある。
総理が北京からの苦情を無視して何度でも繰り返し参拝すれば、そのうち向こうも諦めて黙るに決まっている。
総理の参拝が実現し、やがて天皇陛下の行幸もできたということになると、私は国民のモラルに非常によい影響を与えることができると思うのです。」

-------------------------------------------

コメント

解りやすさと説得力 (Cmoon)
2010-08-17 09:55:09

タケセンさんの文章を読んでいると、解りやすさと説得力からハートの中でジンジンこだまします。熱い想いがほとばしってきます。心の壁に刻印されます。
いつも覚醒する内容に心から感謝です。

少しまともに歴史を紐解けば、万世一系の系図とその権威がいかに意図的に作られたものか一目瞭然で、まったく根拠のない万世一系を元に天皇を現人神と神格化したことは、それこそ神をも怖れぬ所業だと思います。
神は人間の観念で創り上げるもの、観念の中で生きるもので、実態として在ってはならぬものだと思っています。実態として在るはずがないのです。
せっかく果たした封建制から近代国家への過程で、新しい国造りの骨格として天皇制――絶対君主制――としたのは、明治維新、明治政府が作った漆黒とも言えるような深い影だと思います。先の大戦での敗戦、平和憲法の発布で光が射し、奇跡的な経済復興の中で長い影は消えるはずだったのに、以降65年経った今も長い影が、政治、経済、社会、文化、思想、そして宗教に翳りを落し、民主主義の行く末を阻んでいます。

靖国神社はその最たるもの。タケセンさんの明晰な解説どおりだと思います。
日本の軍人だけではなく、国内外の軍人、民間人すべての戦死者への冒涜以外何物でもない存在です。
そんな靖国神社を自民党はこれまで、たしか6回だったと思います。国家管理とすべく靖国法案を成立させようとしました。いずれも参院で否決され大事に至りませんでしたが、国民を再び一神教の硬直した精神支配へ導こうとしていることに気づかねばなりませんね。その後に続くのは今も党内で審議継続中の徴兵制です。
そして国家管理が無理となると総理をはじめ、閣僚の公式参拝……
どこまで旧政権は、すべての戦死者と関係諸国を貶めるつもりなのか、耐えきれません。

こんな政権が、まともな政権交代もなく長らく続き、消えてなくなるはずだった明治政府が作った長い影をさらに伸ばそうとしてきました。そして野に下った今も継続させようとしています。
まるで再び王政復古を望んでいるかのように。

こんな政権の下では、国立戦没者墓苑はできるはずがありませんでしたね。
鳩山前首相は、宗教色のない国立戦没者墓苑を作ると明言しました。政権交代を果たした以上必ず実現しなければなりません。それも一刻も早く。

まだタケセンさんとは短いお付き合いですが、タケセンさんのブログやmixi日記を読ませていただき、“知ることの大切さ”“考えることの大切さ”“伝えることの大切さ”をしみじみと感じ、ささやかながらこれからも実践していこうと思っています。

これまでmixiに書いた政治的内容のものをブログ化しました。
http://blog.goo.ne.jp/rsmoon/
こちらもよろしくお願いいたします。
(内容は同じですが♪)


コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 5枚の写真に見る善美―34年... | トップ | 他者の自由を認めない思想の... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
解りやすさと説得力 (Cmoon)
2010-08-17 09:55:09

タケセンさんの文章を読んでいると、解りやすさと説得力からハートの中でジンジンこだまします。熱い想いがほとばしってきます。心の壁に刻印されます。
いつも覚醒する内容に心から感謝です。

少しまともに歴史を紐解けば、万世一系の系図とその権威がいかに意図的に作られたものか一目瞭然で、まったく根拠のない万世一系を元に天皇を現人神と神格化したことは、それこそ神をも怖れぬ所業だと思います。
神は人間の観念で創り上げるもの、観念の中で生きるもので、実態として在ってはならぬものだと思っています。実態として在るはずがないのです。
せっかく果たした封建制から近代国家への過程で、新しい国造りの骨格として天皇制――絶対君主制――としたのは、明治維新、明治政府が作った漆黒とも言えるような深い影だと思います。先の大戦での敗戦、平和憲法の発布で光が射し、奇跡的な経済復興の中で長い影は消えるはずだったのに、以降65年経った今も長い影が、政治、経済、社会、文化、思想、そして宗教に翳りを落し、民主主義の行く末を阻んでいます。

靖国神社はその最たるもの。タケセンさんの明晰な解説どおりだと思います。
日本の軍人だけではなく、国内外の軍人、民間人すべての戦死者への冒涜以外何物でもない存在です。
そんな靖国神社を自民党はこれまで、たしか6回だったと思います。国家管理とすべく靖国法案を成立させようとしました。いずれも参院で否決され大事に至りませんでしたが、国民を再び一神教の硬直した精神支配へ導こうとしていることに気づかねばなりませんね。その後に続くのは今も党内で審議継続中の徴兵制です。
そして国家管理が無理となると総理をはじめ、閣僚の公式参拝……
どこまで旧政権は、すべての戦死者と関係諸国を貶めるつもりなのか、耐えきれません。

こんな政権が、まともな政権交代もなく長らく続き、消えてなくなるはずだった明治政府が作った長い影をさらに伸ばそうとしてきました。そして野に下った今も継続させようとしています。
まるで再び王政復古を望んでいるかのように。

こんな政権の下では、国立戦没者墓苑はできるはずがありませんでしたね。
鳩山前首相は、宗教色のない国立戦没者墓苑を作ると明言しました。政権交代を果たした以上必ず実現しなければなりません。それも一刻も早く。

まだタケセンさんとは短いお付き合いですが、タケセンさんのブログやmixi日記を読ませていただき、“知ることの大切さ”“考えることの大切さ”“伝えることの大切さ”をしみじみと感じ、ささやかながらこれからも実践していこうと思っています。

これまでmixiに書いた政治的内容のものをブログ化しました。
http://blog.goo.ne.jp/rsmoon/
こちらもよろしくお願いいたします。
(内容は同じですが♪)

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

社会思想」カテゴリの最新記事