毎年、師走になるとやってくるピアノ調律師のおじさん。
今年もやってきました。
「いやあ早いですね。1年がたつの」といって。
来るなり、ピアノの鍵盤の模様のついたエプロンを掛けて
仕事に取りかかる。
ちなみにこのエプロンは認定を受けた調律師しか掛けられ
ないそうだ。
おじさんは手を動かしながら
(同時に全身で音を聴いている様子)
口も動かす。
こちらは所在ないので、
その間、PCに向かったり本を読みたいのだが、
おじさんは放してくれない。
ピアノに何の知識もない私は仕方なく世間話をする。
Q 調律って、誰がやっても同じなのですか。
A 違います。
たとえば同じ曲でも、指揮者や弾く人によって違うでしょう。
Q なるほど、それは分かります。
クラシックでも、指揮者やピアニストによって、こんなに
異なるものかと……。
でも、調律となると、ある一定の基準があるのではないですか。
A もちろん、決められた音の高さ、みたいなものはあります。
Q 音の高さ、といっても幅があるということ?
A 音の高さは変えられないのですが、幅というより、
人の耳に心地よい音と、数字的に正しい音は、必ずしも一致
しないんですよ。
Q な~るほど。
正しい音で、なおかつ、
人に心地よい音をつくっていくというのが使命なのですね。
A 調律師は誰でも、計算上、正しい音がつくれるように訓練を
受けています。
でも、人の耳には数字的にぴったり合っても、少しずらした
方が心地よいというような感覚があるんです。
もちろん許される範囲の微妙なズレなのですが。
それからおじさんは、
「なかには、ぴったり合った音が好き、という人がいます。
とくにクラシックをやった人は、小さい時からきっちり合った
音で育っているので、合っていないと気持ち悪いようなんです」
といった話をされたが、
私はその分野ではないので、なるほど、なるほどと聞くだけ。
ピアノといっても奥が深いのですねえ、という感想でした。
おじさんは小1時間、手を休めずに仕事をして
忙しいサンタクロースのごとく、次の仕事場に去っていきました。
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