いつもいくスーパーの店先には6月に入った頃から
七夕飾りがおいてあって、短冊に願いごとを自由に
書けるようになっている。
通りがけに何気なく見ると、たどたどしい字で「ピ
アノがじょうずにひけるように」とか、「サッカーが
うまくなりたい」とか、「○○ちゃんと友だちになりた
い」とか、愛らしい願いごとが書かれている。
それにしても現代の子は行儀がいい。
たまに「お金がたまりますように」といったのがある
と、見てはいけないものを見てしまったようなバツの
悪さがある。
それに、お母さんが書いたらしい「××男がいい子に
なりますように」も、子ども本人の前で書いたのだろう
か、なんて考えさせられる。
これが大人だとこうはいかないだろう。
我々の年代になると、おそらく老後(充分に老後なのだ
が)、健康、痴呆症の心配、介護、お墓……といった
ものになるだろうから。
これはもう、素直なんてもんじゃない、グロテスクと
といった方がいいもので、とても読めるものではないか
もしれない。
私はというと、目下、来月に予定されている作家の森崎
和江さん(福岡在住)のインタビューを前に、先月来から
著書を読み込んでいる段階である。
さしずめ願いごとを書かされたら、インタビューの成功
を願うことであろうか。
森崎さんは昭和2年生まれの85歳。
かつて日本の植民地であった朝鮮で生まれ、17歳まで育
っているので、その人生も屈折の多いもので、
(だから谷川雁と炭鉱地帯に入ってサークル運動など
するのだが)
簡単には総括できるものでない。
数多い著書のなかには、私ごとき凡な頭では理解できな
いものも少なくなく、立ち往生することもしばしば。
しかしそうばかりもいっていられないので、くじけそう
になる怠け癖にムチ打って、格闘している。
写真はその著書の一部。
かくして、パソコンの前は資料が散乱し、頭の中はその
間にちらばったメモ用紙や、コピー用紙なみの錯乱状態
なのである。