アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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注目の「与那国住民投票」。翁長知事はなぜ沈黙?

2015年02月21日 | 沖縄と差別

         

 自衛隊配備の是非を問う注目の与那国町住民投票が、あす22日行われます。

 争われているのは、陸上自衛隊沿岸監視部隊(約150人)の駐屯、監視用レーダーや隊舎などの建設の是非です。
 一昨年8月の町長選挙で政府・防衛省の支援を受けた誘致推進派の外間守吉町長が当選したため、工事はすでに昨年5月に着工していますが、今回の住民投票で「反対」が上回った場合、外間町長は、「配備は止められないが、町として国に非協力的な立場を取らざるを得ない」(15日付琉球新報)と明言しています。
 「反対」の意思表示によって、陸自配備に事実上のストップをかけられるかどうか、たいへん注目されます。

 与那国島への陸自配備には、少なくとも5つの重大な問題があります。

 ①「自衛隊票」が有権者の20%!与那国は軍隊(自衛隊)の意のままに

 与那国の人口は約1500人。有権者(成人)は1187人です。自衛隊誘致などに対する島民の意見はほぼ2分されており、一昨年の町長選での外間氏と反対派の崎原正吉氏との票差はわずか47票にすぎませんでした。
 そこに150人の自衛官が家族とともに「移住」してきたらどうなるか。「2人家族」だとしても約300票が「自衛隊票」となります。これは実に有権者の約20%です。キャスチングボートどころか、自衛隊(国家権力)の意向が与那国町の重要事項を決めてしまうことになりかねません。

 沖縄防衛局の井上一徳局長は、今回の配備は「艦船や航空機を監視することが主な役割」(18日付沖縄タイムス)だとして「安心感」を振りまいていますが、いったん配備してしまえば、その後何をしようが自衛隊のやりたい放題になる危険性がきわめて大きいのです。

 ②レーダー・電磁波のへの不安消えず

 今回の監視レーダーの設置自体も島民にとって重大です。それは電磁波による健康破壊の不安が消えないからです。レーダーはもっとも近い所では人家からわずか180㍍の場所に造られます。
 住民の不安に対し、外間町長は今年1月、防衛省主催の「説明会」を開催して「安全」を強調しました。しかしその講師が防衛省から資金援助を受けているセンターの代表というお手盛りぶりで、不安はいっそう強まっています。

 ③軍事基地依存の経済・財政へ転落

 誘致推進派の最大の理由は、「人口増加」とともに、「何十、何百億という国のお金が入ってくる」(「自衛隊に賛成する会」金城信浩会長、20日付沖縄タイムス)という「交付金」頼みです。
 しかしこうした基地依存の経済・財政は、「バブル的な金で施設を造っても将来的に財政を圧迫する先例はいくつもある。活性化より財政規律を破壊する原因になる可能性の方が高い」(島袋純琉大教授、18日付沖縄タイムス)のです。

 ④破壊される自然

 与那国はかつて人気ドラマ「Dr.コトーの診療所」(吉岡秀隆主演)の舞台になった島です。あの広大で青々とした牧場に、自衛隊のレーダーなどが建てられようとしているのです。
 軍事施設が沖縄の貴重な自然を破壊する。海と陸の違いはあっても、その点では辺野古とまったく同じです。観光にも大きな障害となります。

 ⑤沖縄を前線基地化する安倍戦略の一環

 もっとも重大なのは、与那国への陸自配備が「島しょ防衛」を口実にして対中国、北朝鮮との緊張を強め、沖縄全体を前線基地にしようとする安倍戦略の一環だということです。
 辺野古をはじめ、宮古島の下地空港の自衛隊使用、第2那覇空港の自衛隊増強など、与那国と同時並行的に、安倍・防衛省が狙う重大事態が進行しています。

 2007年6月24日、アメリカの掃海艇が突然与那国に入港・上陸しようとしたことがあります。これに対し、島のおじい、おばあら100人以上が座り込みで抗議し、しばらく上陸を阻止し、米軍を驚かせました。その年です、与那国に突然「防衛協会」がつくられたのは。これが陸自誘致運動の発端です。

 いまも誘致反対の先頭にたっている「イソバの会」(イソバとは、昔与那国島を守ったという伝説の女酋長の名前)の女性が、ある集会でこう訴えたのを思い出します。
 「『武器のない所に鉄砲玉は来ない』。これが島のおじい、おばあの教えです」

 見過ごせないのは、こうした重大な与那国情勢に対し、翁長知事が沈黙を決め込んでいることです。
 翁長氏は13日の記者会見で、与那国への陸自配備についての見解を問われ、こう答えました。
 「近く住民投票が実施されるので私としてのコメントは差し控えたい。県としては今後に注視して議論するなかで、県としての対応を考えたい」(14日付沖縄タイムス)

 町財政(金)のために自衛隊を誘致しようとしている「賛成派」に対し、翁長氏はなぜ持論(のはず)の「基地は沖縄経済の最大の阻害要因だ」と言えないのでしょうか。
 辺野古新基地に本気で反対しているのなら、それと一体の与那国陸自配備にも「反対」だとなぜ言えないのでしょうか。

 沖縄が直面している重大事態は辺野古だけではありません。
 「辺野古新基地反対」と「与那国陸自配備反対」の一体化が求められています。

 そのことは逆に「賛成派」の方がよく知っています。「賛成する会」の金城会長はこう言っています。「本島で辺野古の新基地建設への反対が盛り上がっているので、その影響だけが唯一の気掛かりだ」(20日付沖縄タイムス)

 住民投票が行われるあす22日には、偶然にも辺野古で新基地に反対する県民大会が行われます。大会で、「辺野古新基地反対」とともに、「与那国陸自配備反対」のコールが起こることを切望します。
 

 

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