アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

米兵集団女性暴行事件の裁判傍聴①-怒りの連続

2013年02月28日 | 日記・エッセイ・コラム

Saiban_2 米兵による集団女性暴行事件の裁判(2日目、27日、那覇地裁=写真)を傍聴しました。米兵犯罪も、性犯罪も、那覇地裁も傍聴はすべて初めて。延べ8時間、怒りの連続で、心身ともに疲れました。
 一人は暴行致傷罪で懲役10年、もう一人はそれに強盗罪が加わって懲役12年の求刑。凶悪な事件そのものへの怒りは言うまでもありません。ここではそれ以外の「怒り」について書きます。それは被告の弁護(日本人弁護士)についてです。
 二人の被告にはそれぞれ弁護人がついていますが、その弁護の基本姿勢は、双方の証言の矛盾を突く足の引っ張り合いです。どちらが主犯だとか、レイプに誘ったのはどの時点からだとか、強盗は単独犯ではないとか。聞いていてうんざりです。それだけならまだしも、信じられない言葉が弁護人の口から飛び出しました。いずれも最終弁論においてです。
 被害女性の証言と被告の証言の食い違いについて、一人の弁護人は言いました。「被害者の記憶は記憶として、事実を語っているかは別。失神寸前の状態で周囲の状況認識ができる方がおかしい」。被害者の証言は信用できないというのです。さらにはこうも。「被告(米兵)には奥さんもいる。いろんなものを失った(だから情状酌量を)」。多くのものを失った、いや奪われたのは被害者の方だ!
 もう一人の弁護人は言いました。「被告が米軍人だから処罰され厳しい罰が下されるなら、それは米兵に対する差別になりかねない」。ここで「差別」という言葉を聞くとは思いませんでした。犯した犯罪の内容によって処罰されるべきはその通り。しかし、この事件は被告が米軍人であることと切っても切れない関係にあります。「差別」というなら、被害者への差別、米軍基地下で常に米兵犯罪の恐怖におびえている沖縄県民への差別こそ問題にすべきでしょう。
 被告の利益を図るのが弁護人の任務であることは確かです。しかし、弁護人にはもっと大切な任務があるはずです。それは事件の背景、根本原因を明らかにし、二度と同種の犯罪が起こらないような社会の形成に寄与することです。それこそが被告にとっても真の利益になるのではないでしょうか。互いの足を引っ張り合い、被害者を揶揄するような言葉さえ吐き、事件の構造を逆転させるような「弁護」が続けられる限り、沖縄における米兵犯罪はなくならない。そう実感しました。

<今日の注目記事>「沖縄タイムス」(28日付社会面)から

 ☆「水筒落下 報告は『厚意』 米軍、宜野湾議会に」
 「宜野湾市議会(呉屋勉議長)は27日、北中城村にある米海兵隊太平洋司令部を訪ね、米軍普天間飛行場のMV22オスプレイからのプラスチック製水筒落下事故に抗議し、事故原因の究明や公表を求めた。議員らによると、トゥルー・アックス大佐は謝罪した上で『信号無視をした兵士が、警察に届け出たようなもの』として、事故の報告は兵士の厚意によるものとの認識を示した。依然、落下場所などは不明で、今後の詳細な調査についても明確にされず、呉屋議長は『航空機からの落下物は大きな事故につながりかねないが、米軍は重大事故としてとらえていない。真実を明らかにするべきだ』と不満を示した」
 「信号無視」を厚意で報告してやったようなもの。さらに調査・報告するつもりなどない。米軍にはオスプレイの危険性の認識、沖縄県民への配慮など微塵もありません。


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「天皇奉迎」利用される子どもたち

2013年02月27日 | 日記・エッセイ・コラム

Tennnou 昨年11月17日に来沖した天皇・皇后の「奉迎沖縄実行委員会」の解散式が今月24日にありました。式そのものはたんたんと進み、今後の新たな行動提起も特にありませんでした。ところが、たいへん異様な光景に出合いました。
 子どもたち(小学生と中学生)の登壇です。式次第にはなく、主催者が急きょ組み入れたものとみられます。登壇、降壇の際、「日の丸」に一礼する姿はたどたどしく、いかにも”言われた通り”の所作です。代表してあいさつした中学生は、天皇・皇后を迎えてどんなにうれしかったか、これからも喜んでもらえるように努力したい、という趣旨の文章を読み上げました。実はこの子たち、わらべ歌合唱団「若みんな」のメンバーで、11月18日県庁前広場で行われた「奉迎の集い」でも他のメンバー50人前後と一緒に約30分にわたって歌、踊りを披露したのです。同日の「ちょうちん行列」にも多くの子どもたちの姿がありました。
 それだけではありません。解散にあたって同会は「記録集」を発行しました。その中に「奉迎活動参加者の声」という章が9ページあり、30人の声が掲載されているのですが、なんとそのうち小学生が9人、中学生が11人、高校生2人、大学生が6人なのです(社会人は2人)。主催者がいかに若者を重視しているかが分かります。
 「若みんな」の子どもたちはもちろん純粋で、来客を歓迎したいというまごごろです。「集い」で披露した歌は沖縄語のものが多く、これからもうちなーぐちを大切にし普及させたいとも話していました。でも、「天皇奉迎」と「うちなーぐち普及」は矛盾するのです。この子たちは、かつておじーやおばーの親たちが天皇制下の皇民化政策で「方言札」という罰則まで加えられて、うちなーぐちが奪われた歴史を知っているのでしょうか。おそらく知らないのでしょう。教えられていないのではないでしょうか。
 天皇の戦争責任を不問にしたまま、天皇制を維持・強化しようとする勢力は明らかに若者、子どもに照準を合わせています。それに対して、平和・民主勢力はどうなのでしょうか・・・。暗い気持ちにならざるを得ません。

<今日の注目記事>「沖縄タイムス」(27日付社会面より)

 ☆「『埋め立て』名護で賛否 景気よくなる/次世代どうなる」
 「米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設で、海域の埋め立てに伴う同意申請が提出された名護漁業協同組合。”職場”の海が埋め立てられる漁師には『名護の景気がよくなる』と肯定する意見のほか、『次の世代はどうなるのか』などの戸惑いもある。・・・当日朝の競りに参加していた60代男性は『ウミンチュは補償がほしい。名護市長が反対しているので基地を造るのは無理でも、補償さえもらえれば、後はどうにでもなれと思う』と思いを語った。・・・環境問題に詳しい二見以北十区の会の浦島悦子共同代表は『漁業権はあるかもしれないが、海は漁師だけのものではなく、みんなの共有財産。一部の人間への補償で売り渡せるようなものではない。壊れると取り返しがつかず、次の世代に残すためにもつぶしてはいけない。宜野座の漁師たちも反対している。地域の人も含めもっと幅広く同意を得る必要がある』と訴えた」


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映画「ラブ沖縄」-恐怖・怒りの共有から

2013年02月26日 | 日記・エッセイ・コラム

Eigarabu 映画「ラブ沖縄@辺野古・高江・普天間」(藤本幸久・影山あさ子監督)を見ました。米軍普天間飛行場移設に伴う新基地建設、オスプレイ配備に反対する沖縄住民の8年間のたたかいを記録したものです。フィクションを超える現実の姿に圧倒され、重いものが胃袋に残りました(写真はチラシから)。
 粘り強く抵抗してきた人々の怒りは昨年の9・9県民大集会でピークに。にもかかわらず県民の意思が一顧だにされず直後にオスプレイが配備されることで爆発。普天間基地ゲート前の座り込みへ。それを実力で排除する県警との攻防。怒声、無言のスクラム、叫び声、涙・・・。
 排除する県警の警官も、工事現場へ向かおうとする作業員も、反対住民と同じウチナンチュウです。沖縄人同士が”対立”させられている悲しい現実がここにあります。不屈にたたかう人々の姿はもちろんですが、高江のヘリパッド建設に向かおうとする作業員の「俺だって基地がないほうがいい。だけど養わなければならない家族、社員がいるんだ」という悲痛な声も忘れられません。普天間ゲート前での住民と警官の攻防をフェンス越しに並んで静観する米軍の姿は象徴的でしたが、見えないところでこの”対立”をほくそえんで見ている連中、いや、見ようとさえしない”奴ら”がいるのです。
 藤本監督は新聞インタビューで訴えています。「中央の沖縄へのまなざしは冷ややかだ。本来、基地は国民全体の問題だ。この姿を見よと、向き合うべきだと投げ掛けたい。全国に突き刺したい」。「オスプレイがいつ墜ちてくるかと思うと不安で不安で」と顔をこわばらせる若い母親の恐怖を、おだやかな沖縄の人たちがやむにやまれず座り込みという行動に出ざるを得なかった怒りを、少しでも共有したい。その共有、共感からしか、共闘は生まれないのではないか。それが私の重い思いでした。
 東京では上映修了。沖縄では3月7日まで。さらに横浜や大阪で上映。一人でも多くのヤマトンチュウに見てほしいです。

<今日の注目記事>

 ☆「宜野座漁協反対へ 辺野古移設 来月、大会で決議 漁場環境悪化を懸念」(「琉球新報」26日付から)
 「日米政府が米軍普天間飛行場の移設先としている名護市辺野古の南方で漁を営む宜野座漁業協同組合(城間盛春組合長)は25日、埋め立て工事や完成後の訓練によって漁場環境の悪化が強く懸念されるとして、3月中に移設反対を決議する漁民大会を開催する方針を決めた。同漁協が反対に決議や大会を開くのは初めて」

 ☆「故郷思い十六日祭」(「沖縄タイムス」26日付から)
 「25日は旧暦1月16日にあたる『ジュウルクニチー(十六日祭)』で、後生(グソー)の正月といわれる。宮古、八重山地域を中心に県内各地で祖先を供養する家族の姿が見られた。那覇市西の三重城では、離島出身らがごちそうや線香を供えてウチカビ(紙銭)を焼き、故郷の方向に向けて手を合わせていた」
 後生の正月、つまり死者のための正月です。こうした祖先崇拝信仰が、「命どぅ宝」という沖縄の風土につながっているような気がします。


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安室奈美恵が救世主?

2013年02月25日 | 日記・エッセイ・コラム

Kouryuukai 比嘉光龍先生の全6回におよぶ「うちなーぐち(おきなわ語)講座」は終了したのですが、「このまま別れるのは残念」という受講者13人が20日交流会を開きました。うちなーぐちに対するそれぞれの熱い思いを聞くことができました。
 60歳前後の女性は中学生時代、雑誌を通じて本土の人と文通をしたことがありますが、「沖縄の人は日本語が話せるの?」「ハダシで生活しているんじゃないの?」と言われてあ然としたといいます。他の同世代の女性も本土の大学に通っていた時は、うちなーぐちを聞かれるのがイヤでなるべく日本語を使うようにしたとか。私とほぼ同世代の人がそんな思いをしてきたとは、驚きでした。そんな沖縄・うちなーぐちへの「コンプレックス」から脱却するきっかけになったのが、安室奈美恵の登場だといいます。沖縄出身アーティストの活躍がウチナンチュウの誇りを呼び覚ましました。音楽・芸能の力はすごいですね。ここでひとしきり沖縄出身芸能人の話題。30代と思われる人たちが南沙織を知らないのにはビックリ。「仲宗根美樹は?」と言うと1人の年配女性を除いてみんなキョトンでした。
 そんな楽しい会話の一方、私と同じもう一人のヤマトンチュウが「沖縄の人が自分たちの言葉を失ってから・・・」と話し始めると、即座にウチナンチュウが「失ったのではない。(同化政策で)奪われたんだ」と指摘。一瞬空気が変わる場面も。「沖縄独立論」についてもひとしきり。最後に比嘉先生が「言葉は思想の基本。おきなわの言葉を取り戻すことからおきなわ独自の思想が生まれ、自立が可能になる」と言われ、納得しました。
 講座ではみられなかった沖縄・うちなーぐちへの皆さんのそれぞれの思いが、硬軟とりまぜて伝わってきて、とても有意義でした。この仲間たちとこれからもなんとかつながっていたい、そしてうちなーぐちをもっと習いたい。そんな思いを強くしました。

<今日の注目記事>「琉球新報」(25日付、桜井国俊・沖縄大教授の「時評」から)

☆「思考停止する日本社会」
 「沖縄について日本社会は、原発同様に思考停止している。暮れの総選挙で選出された衆議院議員の実に8割以上が選挙前アンケートで普天間の辺野古『移設』を主張していた。『移設』については県民の9割が反対し、全市町村の首長も議会も、そして県知事も県議会も反対している。民主主義社会であれば、この民意を無視することはあり得ない。そのあり得ないことが進行しているのが現在の日本だ。・・・百歩譲って日本の安全のために米海兵隊の配備が必要だとしても、なぜそれが沖縄でなければならないのか。国土面積の0・6%を占めるに過ぎない沖縄に米軍基地の74%を配備するのは不正義ではないのか。・・・本土マスコミは、沖縄は2013年度予算で要求を満額実現しながら、アメのしゃぶり逃げをするのは許さないと世論操作し、辺野古『移設』に向け沖縄包囲網を形成しつつある。・・・思考停止については、沖縄の我々も自ら省みる必要がある。那覇空港第2滑走路は県民の永年の悲願とされ、その是非を問う議論が皆無だが、果たしてそれで良いのだろうか。(第2滑走路は)貴重なサンゴの海の大嶺海岸を喪失することにとどまらない。那覇空港は軍民共用であり、第2滑走路の建設は空自那覇基地の機能強化を意味する。与那国や宮古への自衛隊配備構想と一体となって南西諸島の軍備強化となる恐れが強い・・・」
 「安倍内閣支持率72%」は「思考停止」の結果でしょう。桜井論文はほかにも貴重な指摘が満載です。ここでは紹介しきれないので、ぜひ原文をお読みください。


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「沖縄はアジアの地中海」・・・重鎮経済学者の示唆

2013年02月24日 | 日記・エッセイ・コラム

Boaie 安倍首相がオバマ大統領に会いにアメリカへ行っていた22日、沖縄では「米-中-日関係の中の沖縄」という講演会が行われました。講師は欧州経済学の重鎮でミッテラン仏大統領の政策顧問を務めたこともある「レギュラシオン」理論の騎手・ロベール・ボアイエさん(写真)。マルクスの歴史認識、ケインズの制度感覚など各種の理論を継承・調整して経済、政治、社会の各方面から現代の課題を明らかにするという同理論。沖縄がどう分析されるのか興味津々でした。
 ボアイエさんが沖縄を訪れるのは初めて。訪日にあたり「ぜひ自分の目で沖縄を見、自分の足で沖縄の地に立ちたい」という強い希望で急きょ訪沖が実現したとか。さっそく首里城を訪れたボアイエさんは琉球王国時代の大交易地図を見てつぶやきました。「これはアジアの地中海ではないか」。地中海は欧州とアジアを結び地域経済・文化を発展させた舞台で、欧州の人々にとっては特別の存在だといいます。講演でボアイエさんは「沖縄は日米関係と日中関係の問題・矛盾の象徴となっている。しかし、いい場所にある。”アジアの地中海”になる可能性がある」と、東アジア共同体形成の必要性と可能性、そこにおける沖縄の役割の重要性を強調しました。
 質疑応答で私は「沖縄独立論」についての見解をたずねました。ボアイエさんは欧州の実例を挙げながら、EUという共同体の存在が小国独立のバックボーンになっていることを詳細に答えてくれました。私はあらためて、沖縄の未来は、中国や朝鮮との対立を共存共栄に転換する東アジア共同体の形成にかかっていると確信しました。
 講演が終わって、見ず知らずのお二人から、「独立の可能性」と「共同体形成」について話し掛けられました。「仲間」と学び合うのは楽しいものです。

<今日の注目記事>(24日付)

 ☆「沖縄へ配慮なし 際立つ米追従姿勢 首相、『信頼回復』へ焦り」(「琉球新報」2面解説)
 「安倍晋三首相は、米ワシントンでオバマ大統領との初の日米首脳会談に臨み、『安全保障環境が厳しさを増していることを踏まえ、米国と責任を果たしていく決意と認識を完全に共有した』と強調した。米軍基地の過重負担にあえぐ沖縄に配慮する言葉はなく、過重負担の象徴になっている普天間飛行場移設問題では沖縄側の意向に反し、時期は明記しなかったものの『早期に進める』と約束。米側との”信頼回復”のアピールに焦る姿勢が際立った」

 ☆「京都に高性能米軍レーダー 日米方針 北朝鮮想定」(「沖縄タイムス」1面)
 「日米両政府は23日、発射された弾道ミサイルを遠方から精緻に追尾できる米軍の高性能レーダー「X(エックス)バンドレーダー」を京都府京丹後市の航空自衛隊経ケ岬分屯基地に配備する方針を固めた。北朝鮮による米領グアム、ハワイへの弾道ミサイル攻撃を想定すると、近畿地方や周辺の上空を通過する可能性が高く、その中心に近い京都が配備先として最適と判断した」
 「集団的自衛権波及も レーダー配備 米向けミサイル迎撃で」(同3面)
 「自衛隊がレーダー情報を基に米国向けの弾道ミサイルを迎撃すれば、政府が憲法解釈で禁じている集団的自衛権の行使につながる可能性は否めず、配備方針は議論を呼びそうだ」


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「基地と女性たち」・・・知らなかった事実

2013年02月23日 | 日記・エッセイ・コラム

Nhkterebi 22日午後7時半からNHK沖縄テレビで「基地と女性たち」が放送されました。同じNHKで先月14日、米兵と結婚して取り残された女性たちがいかに苦労しながら独りで子どもを育てなければならないかを報じた「基地の街 女性たちは今」(この「日記」にも書きました)の続編です。またしても衝撃を受けました。
 先月の放送のあと視聴者から多くの反応があったそうです。「知らなかった」「女性にも責任があるのでは」。一番多かったのは「どうすれば解決できるの?」だったとか。同感です。その疑問に答えようとしたのが今回の番組です。
 まず相談窓口です。前回はNPOが紹介されましたが、ほかにも県の国際相談窓口(専門家は月1日のみ)、米軍基地内の窓口(米兵本人が否定すればお手上げ)、弁護士(費用多大)など。いずれも欠点があるうえ、横の連携がなく、力になっていません。
 そこで決定的な問題が明らかになります。18年間に300件の相談を受けているというアネット弁護士(写真=NHKテレビから)は「(日米間には)国家間の取り決めがない。だから逃げられる」と強調。そして、国際的にはすでに「国際扶養回収条約」というものがあり、養育費が未払いの場合は男女それぞれの政府が協力して男性に養育費を払わせ扶養義務を果たさせることができるというのです。強制的にDNA鑑定も行え、従わなければ罰則が科せられるとか。これがあれば米兵も逃げることはできません。ところが、日本政府はこの条約に加盟していないというのです。沖縄県は日米政府に加盟を要請したことがあるが両政府とも「必要ない」と一蹴したとか。県も及び腰で強くは求めていないとか。知りませんでした。なんということでしょう。強力な味方となる条約が目の前にあるのです。それに加盟するだけでどんなに多くの母子が救われることか。なのに日本政府は「必要ない」と、ここでも被害の実態に背を向け、責任を放棄しているのです。専門家はこの事実を知っていたはずです。もっと知らせてください。そしてみんなで声を大にして叫びましょう。「政府は『国際扶養回収条約』に加盟せよ」!
 今回のNHK報道には感謝します。でも、前回が全国放送だったのに、なぜ今回の放送は沖縄だけだったのでしょうか。こんな大事なことは全国に知らせなければ、いついまでたっても「沖縄と本土の温度差」はなくなりません。

<今日の注目記事>「沖縄タイムス」(23日付)から

☆「県民大会実行委が解散 オスプレイ配備撤回へ 取り組み継続確認」(1面)
 「オスプレイの配備撤回を求める9・9県民大会実行委員会は22日の全体会合で、本来任務の県民大会や東京行動を通じて『一定の役割を終えた』として解散を決めた。一方、配備撤回が実現していない現状を踏まえ、継続的な取り組みの必要性を確認。新たな行動の枠組みは、県議会の各派代表者会議で話し合われる方向となった」
 実行委員会の解散は仕方がないとしても、次の継続的な組織が決まらないままの解散には、風向きの変化を感じざるをえません。
☆「在京メディアは報道を」(2面)
 「(実行委員会メンバー・照屋義実氏=県商工会連合会会長の話)53年前の宮森小学校の墜落事故で失われた人命、遺族の苦しみ、その後もおびただしい事故があった。これを日本国民が全体の問題として共有するために、提起をする必要がある。在京メディアがもっと県民の課題、国政との関わり、日米の矛盾を幅広く報道すれば、国民の視野が広がる。メディアが役割を果たしてほしい」


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たくましい辺野古の人々

2013年02月22日 | 日記・エッセイ・コラム

Asitomisan 辺野古の海は青く美しく、それを守ろうと命をかけている人々はたくましかった--沖縄に来て真っ先に行かねばならなかった辺野古のテント村(名護市)に21日やっと行ってきた、その第一印象です。
 辺野古の海を破壊してヘリ基地を建設しようとする日米政府に体を張って抗議している人々の座り込み(テント村)はすでに3000日を超えています。その中心になっているのが安次富浩(あしとみ・ひろし)さん(写真)。ヘリ基地反対協共同代表であり、違法アセス訴訟の原告団長です。この日も安次富さんの姿はテントの中にありました。訪れる人にはだれにでも気軽に話し掛けます。アセス訴訟を門前払いした20日の那覇地裁判決に対して、「日本は三権分立の国じゃない。司法は行政に従属している」と怒りを新たにしながら、「しかしわれわれの運動を否定することもできず、逃げたんですよ(違憲判断回避)」と笑みを浮かべました。安倍首相が訪米後に埋め立て申請書を県に提出しようとしていることについても、「稲嶺(名護)市長が絶対反対なんですから、仲井真知事もうんとは言えないですよ」。その言葉には運動を積み重ねてきた者の自信と決意があふれていました。来年初頭の名護市長選挙の重みがあらため伝わってきました。
 実は県内外の「右翼」が19日にテント村に押し掛けるという情報がありました。それを聞いた支援者たち約100人が結集し、襲来そのものを阻止しました。「怖くて近づけなかったんじゃないですか」と一緒に話していた女性が言いました。「安倍内閣で日本の環境はズタズタにされようとしている。それを許すか許さないかは、辺野古の、沖縄のたたかいにかかっている」。安次富さんの日焼けした顔がまた闘志で光りました。
 私が訪れた時は安次富さんのほかに女性が3人、日本語の巧みな外国人が2人。初対面同士が気軽に話せるのもこのテントの不思議な力です。記帳ノートには毎日全国各地から訪れる人々の名前と住所が並んでいます。フェンスに貼られた寄せ書きの横断幕も愛知から、東京から、高知から・・・。安次富さんたちと一緒にたたかう全国の仲間の声が、まなざしが、今日も辺野古に注がれています。

<今日の注目記事>「沖縄タイムス」(22日付)から

☆「北部首相らと意見交換 自民川口氏ら」(「沖縄タイムス」22日付)
 「自民党沖縄振興調査会会長の川口順子参院議員、美ら島議員連盟幹事長の宮腰光寛衆院議員らは21日、沖縄入りし、北部首長や若手経営者らと意見交換した。・・・意見交換は同日夕、名護市内の飲食店で約2時間にわたって行われ、恩納村を除く11市町村長(代理4町村)のほか、県選出の衆院議員らが同席した」
☆「辺野古移設を決議 北部振興協が促進大会」
 
 「容認派内に温度差も 欠席の市議ら」(「琉球新報」22日付)
 「本島北部の経済関係者らでつくる北部地域振興協議会(荻堂盛秀会長)は21日、名護市のホテルで『危険な普天間飛行場の辺野古地先移設促進名護市民大会』を開催した。市内外から約千人(主催者発表)が参加」「政府が3月にも埋め立て申請を検討する中、市内に辺野古推進の声があることを必死にアピールした。一方、移設を容認する市議らは私用や姿勢の違いなどを理由にほとんどが欠席。容認・推進派が一枚岩ではないことも浮き彫りになった」
 辺野古移転推進派の大会と歩調を合わせた川口議員(元外相)らの来沖と水面下の会談。「経済」をエサにした政府・自民党の懐柔がじわじわ広がっています。一方、反対世論を考慮した内部矛盾も根強い。せめぎあいです。


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対馬丸記念館のもう一つの違和感

2013年02月21日 | 日記・エッセイ・コラム

Uminarinozou きのうは対馬丸記念館の「未来志向」について疑問を書きましたが、同記念館についてはもう一つ違和感がありました。
 対馬丸記念館のすぐ裏の公園に文字通り隣り合わせで、ひっそり建っている像があります「海鳴りの像」です(写真)。先の戦争で遭難した船舶は26隻、犠牲者は3415人にのぼります。対馬丸はその一つ(犠牲者1482人)です。海鳴りの像は対馬丸以外の25隻(赤城丸、湖南丸など、1927人)の霊をまつったものです。犠牲になった人の中には女子挺身隊員や少年航空兵など子どもたちも含まれています。
 私はどうしても対馬丸記念館と比べてしまいました。同じ戦時遭難船でありながらなんという扱いの違いでしょう。他の25隻も対馬丸と一緒に記念館に入れることはできなかったのでしょうか。少なくとも記念館の中に海鳴りの像についてのコーナーを設けることはできないものでしょうか。私が見た範囲では記念館には「犠牲になった船舶は26隻」という記述が1個所あっただけで、「海鳴りの像」の言葉も、犠牲になった25隻の船舶の名前も、見当たりませんでした。きのう紹介した”裏資料”にもありませんでした。係の人は対馬丸の犠牲者をまつる小桜の塔には行ってみるように勧めても、同じ公園内にある海鳴りの像については一言もふれませんでした。政府は来年度予算で「対馬丸平和祈念事業経費」として1500万円計上していますが、海鳴りの像への予算はいくらかでもあるのでしょうか?
 対馬丸事件が象徴的であることにもちろん異議はありません。でも、言うまでもなく、戦争の犠牲、悲惨さに区別・差別はありません。それは「3・11」でも同じです。10万人の犠牲者も1人の犠牲者も大切な命が理不尽に奪われたことに変わりはありません。そう思うと、なんとも言えない違和感が残るのです。

<今日の注目記事>「沖縄タイムス」(21日付1面、社会面)から

 「アセスやり直し認めず 辺野古移設で那覇地裁判決 違法性は判断回避」
 「『最悪アセス』追認 住民意見門前払い 『裁判所は逃げた』 原告、判決にがくぜん」
 「米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部の環境影響評価(アセスメント)をめぐり、県内外の市民ら621人がアセスのやり直し義務の確認などを国に求めた『辺野古違法アセス訴訟』の判決で、那覇地裁は20日、やり直し義務の訴えを不適法として却下し、損害賠償請求については棄却した。争点となった方法書などの違法性については判断しなかった。原告側は控訴を検討する」「司法も『史上最悪』とされるアセスの歯止めにはならなかった。訴えはことごとく形式論で退けられ、原告側は『裁判所は逃げた』『これでは国のやりたい放題だ』と、がくぜんとした表情を見せた」


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対馬丸記念館の”裏資料”

2013年02月20日 | 日記・エッセイ・コラム

Tusimamarunai 行きたいと思いながら行けなかった対馬丸記念館(那覇市若狭)に先日やっと行きました。1944年8月21日九州へ疎開に向かう学童らを乗せた船(貨物船)が那覇港を出港。翌日米軍の潜水艦に撃沈され、1482人(うち15歳以下の学童780人)が犠牲になりました。これが対馬丸事件です。記念館自体が対馬丸を模した構造になっており、犠牲になった子供たちの遺影や遺品(写真)は胸を打ちました。
 それは確かなのですが、私にはなにかしっくりしないものがありました。入場すると正面に「いま『対馬丸』を語ること」という文章が大きく掲げられています。そこには「憎しみが報復の連鎖をよぶ・・・この連鎖を断ち切る努力をすることが私たちの課題」だと結んでいます。さらに展示の最後に再び「今を生きているきみへ」として犠牲になった子どもの言葉を模して「今、ぼくらに約束してほしいんだ、平和に生きるって」で終わっています。よく言えば未来志向。でも私にはできるだけ「憎しみ」の感情を与えないようにしている気がしてなりませんでした。何に対する憎しみなのか。それは米軍に対するというよりも日本軍に対する憎しみなのではないでしょうか。
 展示に、親たちは疎開に出すのに不安があったと一言ありました。その内容をもっと知りたくて聞こうとしたら、係の人が引き出しから「対馬丸記念館と対馬丸事件」というA4判8枚綴りの資料を取り出してくれました(「見学用資料」とあり一般には置いてありません)。そこには「戦力にならない老人・子ども・女性たちの疎開を閣議決定した」「日本軍兵士の食料を確保するための口べらしという目的もあった」「(疎開は)沖縄県民からの申込は遅々として進まず・・・国策という名目のもとに、県庁や警察の職員とその家族に率先して疎開させ、それによって一般住民を啓蒙していく作戦がとられた」「『疎開奨励の努力が足りない。つまりは戦争協力への意識が欠けている』と市長が校長たちを激しく非難する場面もあった」など、学童疎開が日本軍の「国策」として強引に遂行されたことが細かく記されていました。学童たちは直接的には米軍に撃沈されましが、日本軍によって死に追いやられたも同然なのです。
 記念館は、戦後遺族たちが対馬丸の引き揚げを切望したにもかかわらず日本政府がこれを拒否し、その代わりに全額国庫補助で建設され運営されているものです。私の違和感はそんな記念館のいきさつ、性格と無縁ではないような気がします。

<今日の注目記事>「琉球新報」(20日付)から

 「身元確認広がる要望 西原町幸地・戦没者遺骨 DNA鑑定に35遺族  『県内も広く参加を』ガマフヤー具志堅代表」
 「ボランティアの遺骨収集団体ガマフヤーの具志堅隆松代表は19日、県庁で会見し、西原町幸地で昨年新たに見つかった沖縄戦戦没者とみられる遺骨13柱と、北海道や愛媛県を含む県内外から名乗りを上げた、少なくとも35遺族のDNA鑑定を厚労省に求めることを明らかにした。同団体はこれまでも同省に遺骨や遺族のDNA鑑定を要請してきたが、県外の多くの遺族が加わった要請は初めて。具志堅代表は、DNA鑑定を希望する県内の戦没者遺族にも、広く参加を呼び掛けている。・・・具志堅代表は『遺骨収集は沖縄だけの戦後処理ではない。沖縄戦には本土各地出身の戦没者がおり、全国的な問題だと認識してほしい』と話した」  
 収集された遺骨の身元を特定するのは至難で、DNA鑑定がほとんど唯一の手段です。具志堅さんには直接お会いしたことがありますが、遺骨を遺族のもとに返したい、戦争の悲惨さを多くの人に知ってほしいとの一念で、上京費用などもすべて自費、文字通り手弁当で遺骨収集活動を続けています。ほんとうに頭が下がります。


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平和学習と大手旅行業者の闇

2013年02月19日 | 日記・エッセイ・コラム

Okituri 「ホテルサンワ閉館」。16日の琉球新報に小さく出ていました。地元企業サンエーが経営するホテルが来月いっぱいで営業終了。老朽化とともに「近隣にホテルが乱立していること」が要因とか。この記事が気になったのは、前日の平和教育講座第2回「平和学習の作り方」(講師は元神奈川県立高校教諭柴田健さん)で、沖縄の地元観光業者が本土の大手業者に浸食され後退を余儀なくされているという話を聴いたばかりだったからです。
 「平和学習」と「観光業者」。一見無関係なようですが、この二つを結ぶものが「修学旅行」です。本土の中・高校生の平和教育にとって沖縄への修学旅行は大切な機会・教材です。その数は2011年度で2686校45万1550人に上ったそうです。沖縄への修学旅行は地元の旅行産業も潤すはずです。
 ところが現実はそうなっていません。地元最大の旅行業者沖縄ツーリスト(本社那覇市=写真)も一時修学旅行を扱っていましたが、すでに撤退しています。その大きな理由は、大手旅行業者、航空業者による独占、カルテルともいえる”闇”があるからです。
 例えば航空運賃。修学旅行は日程が早くから確定し大量な顧客が見込めるツアーですから、当然割引率は高くていいはずです。ところが実際は個人の「早割」などよりも割引率は低くなっています。また大手旅行業者はかつて手数料を7~10%もとっていました。それが10年ほど前にあるところで市民オンブズマンが入った途端に1~2%になりました。その算定基準は闇に包まれています。さらに生徒が宿泊するホテルを大手業者が事前に大量に押さえて地元業者を締め出したうえで、土壇場でキャンセルするというあくどうやり方まで行われていた(今でも?)といいます。こうした結果、地元業者が打撃を受けるだけでなく、修学旅行代金も高止まりしてしまいます。
 生徒にとって貴重な平和学習となる沖縄修学旅行。その足を引っ張り、地元産業を衰退させる本土大手企業の横暴は許せません。

<今日の注目記事>「琉球新報」(19日付)から

 「米兵住居侵入 住宅街 屋上伝い逃走 白昼の事件に住民動揺 機能不全の防止策」
 「米兵による事件が後を絶たない中、宜野湾市伊佐の閑静な住宅街で18日に発生した米海兵隊員による住居侵入事件。米軍の再発防止策が機能していないことがあらためて浮き彫りになった。家の敷地内で『ガラス越しに赤い人影が歩いているのが見えた』。通報者の男性は驚きを隠さなかった。白昼に起きた事件に、周辺住民は一様に不安な表情をのぞかせた。米兵による事件が相次いでいることにも、口々に、米軍に対する強い憤りを表した」
 


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