アリの一言 

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「岩礁破砕差し止め訴訟」は有害無益。その4つの理由

2017年07月25日 | 沖縄・翁長・辺野古・...

     

 翁長雄志沖縄県知事は24日、安倍政権が強行する辺野古埋立工事に対し、「岩礁破砕差し止め訴訟」を那覇地裁に提訴しました。これは辺野古新基地阻止のたたかいの的から外れているばかりか、かえって有害となるものです。その主な理由は次の4点です。

 ① 新基地の是非を問い、埋立工事の差し止めを求める訴訟ではない

 翁長氏は提訴後の記者会見で、「手続き」「拙速」という言葉を何度も使い、「岩礁破砕許可はじめさまざまな行政手続きが必要」「政府の進め方の拙速さを訴えていきたい」(25日付琉球新報)と述べました。翁長氏が問題にしようとしているのは、「岩礁破砕」に対する政府の「手続き」の不備であり、「拙速さ」にすぎません。
 翁長氏自身記者会見でこう明言しています。
 「この訴訟は辺野古新基地建設の是非そのものを問うものではない」(25日付琉球新報)

 県紙もこう指摘しています。
 「今回、県が申し立てた訴訟は直接的に工事の差し止めを求めるものではない」(25日付琉球新報社説)
 「裁判の争点ははっきりしているが、本来問われるべき点は別のところにある。他府県では起こり得ないことがなぜ、沖縄で繰り返されるのか」(25日付沖縄タイムス社説)

 辺野古の現場でたたかいが精鋭化しているいま、新基地建設の是非を問わず、埋め立て工事の差し止めを求めないとは…。それは安倍政権と正面からたたう意思のない翁長氏の姿勢を象徴しています。

 ② 「勝訴」すれば工事を許可せざるを得ない

 翁長氏は記者会見で、「裁判で県が勝った場合、国が岩礁破砕申請を出せば許可するのか」と聞かれ、こう答えました。
 「行政手続きは厳正な審査をする。不法に止められる話ではない」(25日付琉球新報)

 「県は岩礁破砕許可は前回も認めた経緯があるため、今回も「審査に時間をかけることはできても、認めないという結論にはならない。最終的には認めざるを得ない」との見解が大勢だ」(25日付琉球新報「透視鏡」)

 岩礁破砕許可を認めることは、埋立工事にお墨付きを与えるようなものです。それが「撤回」の大きな障害になるのは必至です。「岩礁破砕許可」と「埋立承認撤回」が矛盾することは明らかだからです。「勝訴」の結果がこれです。こんな訴訟が有害でなくてなんでしょうか。

 ③ 工事が中断しないまま時間が経過し、工事が進行する恐れが大

 そもそも今回の訴訟は、「法律上の訴訟に当たらないとの最高裁判決(宝塚パチンコ事件)が出ており、県の請求が門前払いされる恐れも指摘される」(25日付琉球新報)ものです。
 県は工事を一時的に止める「仮処分命令」を同時に申し立てています。この点について記者会見で「仮に仮処分が認められなかった場合、工事は進むが対処策は」と聞かれ、県弁護団の宮國英男弁護士はこう答えました。
 「仮に通らなかい場合は通らない理由や決定が出る。それをみながら県と連携しながら考えたい」(25日付琉球新報「一問一答」)。打つ手はない、ということです。

 ④ 「撤回」棚上げのアリバイづくり

 記者会見で「仮処分が認められなかった場合、判決まで工事が進む。埋め立て承認撤回など工事を止める戦略は」と聞かれた翁長氏はこう答えました。
 「どういう結果になるかを前提に話はできない。撤回は行政法学者や弁護士と相談し、視野に入れながら議論している」(25日付琉球新報「一問一答」)

 何度(何年前から)同じセリフを聞かされていることでしょうか。翁長氏の「視野に入れながら議論」とは、「棚上げ」のことです。翁長氏は少なくとも今回の訴訟の判決が出るまでは「撤回」はしないと言っているのです。つまりこの訴訟は「撤回」棚上げのためのアリバイづくりにほかなりません。ここにこの訴訟の有害性が端的に表れています。

 繰り返し主張してきたように、埋立工事を直ちに止め、新基地建設を阻止するために安倍政権と正面からのたたかう手段は、直ちに「承認撤回」し、全国の世論を高める以外にありません。

 「仮に県が勝訴しても、埋め立て承認がなされている以上、国が岩礁破砕許可を申請すれば法的には最終的に許可せざるを得ず、新基地建設を阻止することは困難だろう。…新基地建設を止める決め手になるのは、むしろ知事による埋め立て承認の撤回である」(武田真一郎成蹊大教授、25日付沖縄タイムス)

 武田氏は「撤回が必要であることを明らかにするためには、沖縄県民が県民投票によって民意を示すことが不可欠」(同)としていますが、それは違います。

 翁長氏は知事選の政策発表記者会見で「撤回は…その(承認)後の新たな事象で撤回するということですが、知事の埋め立て承認に対して、県民がノーという意思を強く示すことが、新たな事象になると思います」(2014年10月22日付しんぶん「赤旗」)と明言し「撤回」を公約しました。

 さらに当選直後の県議会でも、「知事選で示された民意は埋め立て承認を撤回する事由になると思う」(2014年12月18日付琉球新報)と答弁しました。

 知事選とその後の各種選挙で示された民意で「撤回」はできる、というのは撤回問題法的検討会(新垣勉弁護士、仲地博沖縄大学長ら)が翁長氏に提出した「意見書」(2015年5月1日)でも強調されています。

 時間と手間のかかる(その間も工事は進行!)県民投票など必要ありません。「撤回」は今すぐできます。すべきです。安倍政権の支持率が急落し、政権が剣が峰に立っている今こそ「撤回」の好機です。

 なお、琉球新報と沖縄タイムスの25日の社説が、「撤回」についてともに一言も触れていないのは、両紙の見識を疑わせます。
 

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