いつも寝不足 (blog版)

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『河内山宗俊』

2006年03月10日 | 映画・ドラマ
山中貞雄の現存する3本のうちの1本。

河内山宗俊

日活

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何せ、3本しか残っていないので、残っている作品はどれも有名。ただ、『人情紙風船』が、遺作ということもあって、最も有名だろう。題名も良いし。

人情紙風船

東宝

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なお、もう1本は『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』。
丹下左膳餘話 百萬兩の壺

日活

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さて、『河内山宗俊』。河内山宗俊と言えば、『天保六花撰』や『天衣粉上野初花くもにまごううえののはつはな』などで有名な実在の人物。『天保六花撰』では、他に片岡直次郎、金子市之丞、森田屋清蔵、丑松、三千歳みちとせが出てくるが、本作では河内山宗俊と金子市之丞がメイン。森田屋と丑松は敵役で、片岡直次郎はヒロインお浪の弟広太郎ひろたろう(偽名は直太郎)になっていて、三千歳はほとんど出てこない。

ヒロインお浪は当時16歳の原節子。現存するもののうち、最も若い頃の姿だとか。確かに、「可憐な」という言葉がこんなにピッタリ来るものも滅多にないと思うが、まぁ、そんだけと言えないこともない。少なくとも、この作品では立ってるだけ座ってるだけに近いような気がする。もっとも、俳優にとって一番大切なものは姿形だろうから、立ってるだけ座ってるだけでも、これだけバチーンと見る者の印象に残るんだから、スターにならん方がおかしいよね。

まぁ、原節子のことはこれくらいにしておく。

まず驚くのが、音の悪さ(※)。30本近く作って3本しか残っていない体たらくなんだから、仕方ないかという気もするが、字幕なしでは所々何を言っているのか1回では聞き取れない部分もある。しかし、それでも気っぷのいい江戸弁が印象的。もちろん、みんながみんなそういう話し方をするわけではないが、特に端役で出てくる人たちの話し方が印象的。
※終盤の立ち回りのバックで流れる音楽も、有名なクラシックの曲なのに旋律に変な強弱がついちゃって、最初分からなかった。

話の筋も時代劇や時代小説が好きな人であればおおよその察しがつくタイプのもので、特に人を驚かすような仕掛けがあるわけでもない。話も比較的淡々と進んでいく。見る人によっては物足りなさを感じるかもしれないくらい淡泊な演出。でも、これくらいでいいのかなという気がする。

話の筋はベタと言えるほどの紋切り型なので、これでもかこれでもかと盛り上げる演出と演技を盛り込んで却って白けるだろうし、そもそも、河内山宗俊や金子市之丞が主役の段階で事前に了解される事項が大量にあり、そういう前提で作られている作品なので、くどくどしい展開は興を削ぐだろう。

全体として、非常に真っ当な時代劇だと言える。